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最強の魔術師、ついに職を得る

脱無職?

「家を出てきたはいいものの。暑い。ねむいだるい帰りたーい!」


 ご主人様はわがままだ。

 彼が外出するのは、食材を撮るときのみ。

 それにしか興味がないからこその話なのだが、それゆえに全く関係ない用事で外出すると子供のように駄々をこね始める。

 だからと言って、雑な扱いをしてしまうと、世界最強の魔術師だ。

 それこそ全面戦争が始まってしまう。


 正直ご主人様が本気を出したところなんて見たことないし、見たいとも思わない。割と真面目この星ごとどこかへ吹っ飛んでいきそうだから。

 それを見たということはそれすなわち世界の終わりを意味すると言って過言ではないと思っている。


 まあもちろん、ガチギレ状態のご主人様を止めるなど、国、世界単位で考えても無理なんだろう。

 ついこの間はステーキサラマンダーの群れを寝起きであくびしながら一瞬で亡骸の集団に変えてしまったのだから、国全体を産業廃棄物に変えることなどご主人様にとっては造作もないことだろう。


 だからこそ、こうなったご主人様は面倒なのだ。


「何言ってるんですか。まだ家出て数分ですよ?協会にもまだたどり着いていないっていうのに」


「何言ってるんですかじゃないよ。全く。弟子が嫌がる師匠連れ回して……。なんて悪い助手なんだ」


 頬を膨らませたご主人様は抵抗を続ける。

 体は大人だが、中身は子供のようだ。


「そうやってわがまま言いつづけたから今の状態になったんじゃないですか!言えなくなりますよ?」


「……それはなんていうか。うん。じゃあ君一人で行ってこいよ」


 僕がなんとかつかんでいた腕を振って俺の手から逃れると、ご主人様は走り出した。

 が、その方向は家のある方向ではない。

 まさしく、協会のある方面へとご主人様は走って行った。


「何やってるんだ……」


 ご主人様。別に方向音痴というわけではない。

 むしろ物覚えが良く、一度見つけた穴場の狩場は絶対に忘れない。


 だが、ご主人様はこの街のことを知らな過ぎた。

 自分の家の位置さえも全くわかっていないのだ。さっきまで駄々をこねて周りなんて全然見ていなかったから、どこから今ここまで来たのかさえ分かってなかったのだろう。


 僕は走って逃げるご主人様を追いかける。

 なんとか追いつくと、ちょうど協会の目の前だった。


「ほらもうついたじゃないですか」


「え?うぇえ!?」


 ご主人様は自分のすぐそばにある建物の看板を見て、しまった。という顔をしている。


「ほら。入りますよ。まずは登録とかいろいろしなきゃダメなんですから」


 嫌がるご主人様の手を引き、無理やり建物の中に連れて行く。

 建物の中に入ると、さすがに覚悟を決めたのか、ご主人様は静かになった。


 全く。家に対して最寄りの教会に行くだけでこんななのに、依頼を受けて無事達成なんてできるんだろうか?


 そう思いながらも、協会の受付の方に行く。


「どうも」


 たまたま空いていた受付のところに入り、受付嬢さんに挨拶をする。


「こんにちは。新規の方ですね?」


「はい。今日は登録をさせていただきたくて」


 僕の顔を見るなり、新規の人だとわかるのは。すごいことだ。星の数ほどハンターだっているだろうに。


「そうですか。グルメハンターとしての登録でよろしいですか?」


「はい。あ、この人含めて二人分お願いします」


 僕は俺の横でほぼ放心状態のご主人様を指差す。


「了解しました。お二人とも文字は読み書きできますか?」


「問題ありません。普通に読み書きできますよ」


 そう言うと、「でしたら」と、受付嬢さんは小声で呟きながら、カウンターの奥の方へと消えた。


 ちなみに世界全体でみると、識字率はそう高くない。ある程度お金がないと教育が受けられないのが基本だからだ。

 まあそうはいっても、識字がないからといって、生活に困るなんてことはそう多くもなく、時を覚えるという需要自体がそこまで大きくないというのもまた事実ではあるのだが。


 そのまま1分もしないで受付嬢さんは紙を持って戻ってきた。

 その紙を僕たちに渡し、


「必要な項目を全て埋めてください。何かありましたら読んでいただければ結構ですので。それではあちら側の方で記入お願いします」


 といってまたカウンターの奥へと消えてしまった。とりあえず渡されたペンと紙を手に、机のあるところへ。


 記入する内容は、登録名だとか、職業(魔術師なのか、戦士なのか、はたまた、前衛系なのか後衛系なのか。割りと大雑把だ)、住所、年齢といった基本的な情報と、あとは何があっても責任取らないよ。みたいな規約が書かれたところにサインするだけ。


 簡単な手続きだ。

 自分の分をパパッと書き、紙を見つめてなかなか書かずに、ただ見つめて「これは食えるだろうか」と言っている頭がおかしなご主人様の分も代わりに書く。

 特に難しいこともなく、本当に数分で書き終えてしまった。


 そのまま同じように受付に並び、自分達の順番が来たら受付嬢さんに渡す。


「……。わかりました。それでは今日からあなたはハンターとして正式に登録したことになります。まあもちろん、規約の方に書いてあった通り、何らかの依頼で何らかのトラブルが発生した場合も、当方では責任を負いかねますので、ご注意ください」


「わかりました。では......早速依頼を受けたいのですが」


 僕は、別にご主人様のことだ。トラブルなんて起きようが起きまいが変わりない。と、軽くそこらへんの話はスルーして、さっさと依頼についての説明を受ける。


「あちらの掲示板に貼ってある紙に書かれた依頼ならどんなものでも自由に受けられます。特に実績などで依頼をうけられる受けられないといった決まりはありませんが、自身の実力に適した依頼のみを受けるようにしてください。また、依頼以外のグルマを討伐した際の食材に関しては、あちらの方の取引所の方で換金ができるようになっているので、ぜひご利用ください」


 もう一つ、こことは違う方のカウンターを指差して受付嬢は言った。

 ひとまず依頼を取りに行くか。と、ご主人様を引きずって掲示板に向かう。


 掲示板にはそれぞれ異なる依頼内容が記された紙がいくつも貼ってあった。


 それぞれの依頼には、討伐対象となるグルマの絵も描いてあり、何を狩ってくればいいのかがわかりやすい。


「これはまずい。これもまずい。あれもまずい。あーこれもダメ」


 さっきまで帰りたいと連呼していたご主人様はどこへ行ったのか、掲示板のところまで来た途端に、それらの絵を見て大興奮だ。

 どれを狩りに行こうか(食べに行こうか)よく吟味しているようだ。

 が、なかなか昨日のようなステーキサラマンダーを超える大物の依頼は少ない。

 

 というかあるかどうか怪しい。

 僕もチラチラと依頼を見ていくが、どれも下級のグルマばかり。

 一体どれがいいのやら。

 と、考えていると、すぐ隣でご主人様が大きな声をあげた。


「これだっ!」


 その依頼内容はこうだった。


ーーー恵玉の収集






 


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