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ご主人様に勝てぬグルマはいない

新連載です。

異世界転生ではないです。

どうかよろしくお願いします

「ちょっと待ってくださいよぉ」


「ダメだ。早くしないといなくなってしまうぞ?」


 とある山の崖を登っていく二人の人影。

 彼らはある「食材」を求めて旅に出るグルメハンターである。


 世界は美味しいもので満ち溢れている。

 すぐそこに生えている雑草も、ものによってはうまい。

 そこを歩いている動物も、肉が非常に美味しい。


 この世界は存在自体がグルメだ。

 グルマと呼ばれる生き物が、世界中い当たるところに生息している。

 植物や動物、どんなものでも、『グルマであればうまい』は、世界の共通認識だ。

 ただの野菜とは違った甘みやみずみずしさを持った植物たち。普通の豚や牛とは比べ物にならない上質な肉。


 グルマは、人にとって最高のご馳走なのだ。


 だがそれと同時に、グルマは危険な存在でもある。

 美しいものにはトゲがあるように、グルマにもまた、人間に食べられないようにトゲを持っている。

 自我と、高い戦闘能力だ。


 植物系のグルマでは、自我を持たない存在も少なくはないが、中には植物系グルマでも高い知能を有し、食虫ならぬ食人行為を行う恐ろしい植物系グルマがいる。

 だが、植物系などかわいいものである。

 最も恐ろしいのは動物系グルマ。

 戦闘能力が非常に高いものも中にはいる。

 生身の人間が何十人で対抗しても勝てないくらいの大物もいる。


 だが、どんなグルマにも共通して言えることがあった。


ーーーーー強いグルマほどうまい。


 どんなに危険を冒してでも、皆は強いグルマを狩ろうとする理由は、ここにある。

 強いグルマであればあるほどに、その身は美味しくなっていく。

 弱いグルマもまずくはないが、やはり美味しいに越したことはないのだ。


 そんな強くて美味しいグルマを狩るため、人は魔術という新たな武器を開発した。

 人は魔術や剣術、武術などを駆使して、グルマを狩り、そして食すのだ。


 グルメハンターは、そんなグルマを専門に狩りをしていく一種の狩人だ。

 彼らの目的はさまざま。

 狩ったグルマを売りさばいて生活に当てるもの。

 狩ったグルマを用いて料理店を営むもの。

 自分が食べるためだけにグルマを狩るもの。


 そしてまた、この二人も、自分のためだけにグルマを狩っていくグルメハンターだった。


 魔術師アルカディオと、その助手クリストフ。


 これは彼ら二人の物語。



ーーーーーーーーーー



 あれから何時間経っただろう。 

 いきなりフォスト山に行って『あれ』狩りに行くぞ。

 なんてご主人様が言い出したものだから、急いで支度して出てきたというのに、気がついたら崖を登っているではないか。

 いつもは道無き道を歩いてきていたというのに、ご主人様ときたら、もっとショートッカットできる道を見つけたの一点張りだ。


 いや。崖って明らかに道じゃないでしょ。 

 俺はご主人様に抗議したが、ご主人様にその意見は聞き入れてもらうことはなかった。

 なんだってこんなところまで足を踏み入れなくてはならないんだ。


 面倒臭いし、危ないし、怖いし……本当になんでこんなことを……。


 だがしかし、僕はご主人様の助手。

 ついていかないわけにもいかないのだ。


 と、しぶしぶここまで付いてきたものの、そろそろ帰りたくなってきた。


 僕はなんとか崖を登りきる。

 ご主人様はその数分前にはもう登り終えていたのだから、ご主人様のその腕の筋肉は異常である。

 だいたい、魔術師のくせにムッキムキなのがおかしいのだ。まあムッキムキとは言っても、実際は割とすっきりとした体形なのだが。


 そんなことはどうでもいい。

 崖を登り切った後。

 ふと前方を見ると、1キロほど先に.......)赤い竜が見えた。

 ステーキサラマンダーだ。

 あの竜に近づくとどんな生き物も瞬時に炎のブレスによってステーキのようにしっかり焼かれてしまう。ということと、その本体の肉がステーキにすると美味しいことからその名前がついている。


 あのサイズのステーキサラマンダーなら、|熟練の魔術師が数十人は本来必要..………….だろう。

 皆で協力して倒すのが一番無難な攻略法だ。


 それだけあって、僕も何度か討伐したことがあるけれど、なかなか苦戦を強いられた。

 とにかく強い。


 だが、ご主人様にそんな理屈は通用しない。

 ご主人様はこの距離から魔術の呪文を詠唱し始める。


 もう見慣れた光景だ。本来ならばこの距離から魔術をステーキサラマンダーまで到達させるなど、ほぼ不可能に限りなく近いが、ご主人様にとってはこんなの目と鼻の先である。


 ご主人様の呪文の詠唱が終わる。それと同時に、青く大きい波動のような火の玉が飛び出した。そのサイズはステーキサラマンダーよりも大きい。

 その火の玉はサラマンダードラゴンに向かって勢いよく飛んでいく。

 ステーキサラマンダーが気がついた時にはもう遅い。

 ステーキサラマンダーは炎に包まれ、すぐに息絶えた。


 それとほぼ同時に炎も消える。 


「よかったよかった。今日は肉が食いたい気分だったから、ちょうどそこにサラマンダーがいてくれて助かった」


 ご主人様はそのままステーキサラマンダーの亡骸の方へと移動する。

 ご主人様は、今自分がやったことが、どれだけ恐ろしいことなのかわかっていない。


 そう。ご主人様は世界最強の魔術師なのだ。熟練の魔術師が何十人という単位で挑むようなグルマをたった一人で、たかが数秒の間で狩ってしまう、最強の魔術師なのだ。

 だがしかし、ご主人様の名前は世界に轟かない。


 なぜならご主人様がグルマを狩るのは、「ご主人様自身が食すため」でしかないからだ。

 誰もご主人様がそれを狩ったとは知らない。僕以外は。


 過去にステーキサラマンダーよりも何倍も強いような最強クラスのグルマを討伐した時もそうだった。

 彼は、世界的な地位に興味はない。


 彼が興味を持っているのは、『うまいものを食すこと』それだけ。

 


 

感想バシバシください。

これは本当に新たな試みですので。

その他の作品も、時間があったらぜひ読んでいただけるとありがたいです。

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