3 二人の少年 (1)
久々の投稿です!よろしくお願いします!
____数刻前
「雪矢様。御食事のお時間になりましたら、またお呼びいたします」
マガギはそう言うと、幽霊の様に寒い中を立ち去っていった。
「はぁ……緊張したぁぁぁぁぁーー!!!」
真っ白な布団に突撃してみたものの、ギシっと言う効果音さえなかった。
「母上様はいいとして、マガギは気付いてるかな……」
自分の見た目によることである。
ベットの上で寝返りを打つと二つの段ボールが目に入った。
「うーーーん」
ベットから遠のき段ボールに手を当てた。数日前に宅配便で荷物を送っておいたのだ。
「写真立てとアルバムとパーカーと歯ブラシと……」
寝巻きは全て此処で用意された浴衣があるらしく、縁側には専用の下駄も用意してくれていた。
扱き使われるって思ってたけど、案外待遇されてるなぁ。
本棚には漢文系の物が多くあったが、母上様がわざわざ用意してくださったのだろう。児童向けの本なども多数あり、机の上には『これからよろしくね』と封筒の表に書かれた母上様の文字が目に入った。
「こんなことまで……」
手紙はお風呂上がりにでも読むとしよう。
よし、と言って大きく背伸びをした。
いつか、この天井に手が届くくらい背が伸びたらいいなぁ。
「クスクスっ……!」
自分でも、完全にわかっていた。浮かれ過ぎて、頭と体と心がごちゃごちゃになっていることぐらい。だかそれと同時に誇らしくもあり、嬉しかった。
「すぅ……」
大きく息を吸い込むと、それと同じくして障子が大きく音を立てた。
「よし、散歩するか!!」
子供ながらの探索心が湧き起こり、手足が痺れるように感情にあふれていた。
けれど、それが過ちだった。
そして、現在。
「んだてめぇ、その嫌そうな顔は」
目の前には自分よりも背が高く、白っぽい銀髪のロン毛に派手な着物を着た同年代辺りの男子がいた。
気付いてるなら、近寄らないで欲しい。とういうのが最もなところだった。
「元からこういう顔」
心から返す言葉が何も無いことに少々驚いたが、世間とはこういうものだと何故か納得していた。
「あぁん?」
それに、典型的なヤンキーだった。
「つーか、てめぇが新しく来た奴かよ」
酔っ払いのようだ。それに口調が悪い。
ここに来て初めて会う同年代らしき人物が、こんなヤンキーとはだいぶ嫌だった。
「手違いでなければ」
喋る気が失せる。とは、まさにこういうことだった。
「はぁ?何が手違いだ。ここに来た時、おふくろと会ってただろ」
「なら、なんでわざわざ聞いて……おふくろ?」
思考回路が数秒停止した。
「おふくろって、誰……?」
「はぁあ?てめぇ、最初に来た時に客間で出迎えた奴のことすら覚えてねぇのか?」
客間で出迎えてくれた人物など一人しか覚えていない。現には、あの場にマガギと自分、そして母上様こと奥方様しかいなかったのだ。
「まさか、奥方様……?」
「てめぇ、覚えてんじゃねぇかよ。何しらばくれてんだよ」
お前の言い方が悪いんだろ。と、心の中で悪態をついておいた。
「おい、聞いてんのか?!」
耳にズキズキと言葉が一つのしかかっていく。
「う……」
一つ一つが重い。だが、それは過去の代物には敵わない。
自分はやはり、短気な性格なのだろう。
「あぁ?」
我慢など、幼いながらに捨てていた。
「うるせぇなぁ!!!黙れ!!!」
沈む夕陽に落ちる枯葉。風が冷たくなびく時、より大きく声が響いた。
「いちいち、反応がねちっこいんや!!あんた、それでも男か!!」
頭がぐるぐると回り、嫌気が募る。
「こちとら、あんたと喋るためにここにおるんやない!!」
風が地を舞う。もう夕陽の姿は見えずあどけない月がそこにあった。
「わかったら、もう近付かんといてや」
そう一言残して、自室に戻った。
「……あいつ、関西弁?」
雪矢の怒りは相手には殆ど届いておらず、そこにあったのは新しい野心も何もない冒険家の目だった。
一様、雪矢の切れた時に発したであろう方言は京都弁となっています。ほとんどは、京都の友人にチェックはしてもらったのですがその友人は今大阪に住んでいるので合っているかどうか不安なところですが、もし間違っていればご指摘願います。
次話は出来る限り早めに出そうと思います。
これからもどうぞ、間の神門をよろしくお願い致します!




