第四十五話「夜のゲーム大会・前編」
夜になってしまった。
ついに、待ち焦がれたという者もいるだろうし、少しだけうんざりしている者もいるだろうが、それでも夜である。
修学旅行それ自体が特殊な学校行事であり、その中でも夜という時間はまた最たる特殊な時間と言えるだろう。
星々が煌き、月が笑ったように欠ける。窓から見えるネオンの灯りが空と対になって、まるで鏡合わせのようだと、少しばかり思ってしまった。
「ほら比奈理、そんなところで物思いに耽ってないで、こっちで遊びましょう!」
やけにテンションが高い遥さん。なんなの、食事の時の飲み物にアルコールでも入ってたのってくらいテンション高いから、正直相手するのが面倒。
私たちは今夕食が終わり、部屋へと戻ってきていた。
元々夜は消灯時間まで私とゆりちゃんの部屋でゲームをする予定だったので、遥たちは自分たちの部屋に戻ることなくこちらへと来ていた。私も最初の二、三回ほどは一緒にやっていたのだが、いかんせん勝てない。こういう勝負事になるとどうしてか遥がいつも勝ってしまう。
「いつも思うけれど、こういうゲームってなんでか遥が強いのよね。なんでだろう」
「あれだろ、何も考えてないからだろ」
ゲームに精通しているような人たちとか、頭の回転がずば抜けて速い人とかがいるとそういう人がカモになるのだけれど、こうして素人というか、遊びでやっているようなゲームだと考えている方がむしろ墓穴を掘って負ける回数が増えたりする。
私もそういう類であり、トランプでの勝負、主に大貧民やらポーカーやらでプレイヤー側に回るとどうしてか勝てないし、逆に何も考えずにディーラー役とかやっていると勝ってしまうことが多い。大きな声では言えないが、昔トランプゲームで友人同士が少額を賭けて勝負をしていたりした時、なんにも考えずに参加したらぽんぽんと勝ってしまい、お昼ご飯代一週間分くらいを儲けてしまったことがある。
「やっぱり無欲な人は強いって事かな」
遥ほど我欲の強い子には出会ったとこ無いですけれど、そういうのは言わない方がいいんですかね。
「普通にやるのも飽きたし、今度は負けた人が一枚ずつ脱ぐってのはどう?」
脱衣麻雀かよ。でも確かに面白そうだ。金銭を賭けたりするよりかはいくらか健全だし。…………健全か?
「いいんじゃない? ここにいるの女子だけだし、なによりリスクが無いと緊張感がないしね」
「緊張感とかいる? この場合楽しむのを優先した方が」
「だから、普通にやるより脱衣の方が楽しいじゃん!」
そういうものなの?
「まぁ確かに、みんなが洋服着てるのに一人だけ下着姿とか面白そう」
なんで誰か一人が一方的に負ける前提で話してるんだよ。こういうのって意外と勝敗がバラバラになって、最後はみんな半裸状態とかが一般的だと思うのだが。いや一般的ってほど詳しくは知らないけれど。
「そうだね、ちょっとやってみたいかも」
ゆりちゃんまでそんなことを言うなんて……。まぁいい、どうせ私一人がこうして反抗して抗議していても、最終的にはやらされることになるのだろうし、無駄な労力を費やすことはしたくはない。
「ささ、早くこっち来て」
しかし、遥のテンションには付いて行きたくないし、無駄に体力費やすからどうにかしてほしい。
それでもまぁ、いいか。今は修学旅行。特別な時間なのだから。
つつがなく行われたゲーム大会の結果は、言ってしまえば引き分け。勝敗数で言えばダントツで遥がトップを独走、上一枚だけしか脱がなかった。他は団子状態。半裸一歩手前の私やゆりちゃんに、既に上半身に何も着ていない繭染さん。そして一番負けが多かったえりさは、遥の悪ノリも相まって、下半身から脱がされて、今えりさの大事な部分を守っているのはスカート一枚、脱ぎたての下着が隣のベッドへと放り出されていた。上半身もしかり、ブラから外されて、今上はTシャツ一枚でちょっとエロい。
遥はそれは上機嫌にえりさの下着を剥ぎ取っていた。それはもう一部始終を見ていた私たちが憐れに思ってしまうくらいには酷い所業。あまつさえそのスカートさえもはぎ取ろうと画策した遥を、私たち三人が全力で阻止した結果が、遥の一敗というわけだ。
そのえりさは顔を紅潮させ、スカートをこれでもかというくらい全力でガードしている。誰もスカート取ろうとなんてしてないから安心してほしい。まぁ一人監視してないとやりそうな奴がいるけれど。
「それで、ゲーム続ける?」
「続けたらやばい子がいるから、脱衣なしなら続けてもいいよ」
というか、これいつまで服着ちゃいけないの? もう着ていいと思うんだけれど。
「じゃあ今度は何を賭ける?」
賭けるのは決定なのか。
「うーん、それじゃ王様ゲームを混ぜてみよっか。予め一から五のトランプカードを引いておいて、勝った人が命令できるって感じで」
まぁそれならば、危険なことはない……か?
「どこまでの命令まで許可する?」
「セックス以外ならいいんじゃない?」
なんで命令が下限定なんだよ。もっと色々あるだろ。考えたても出てこないけれど。
「キスは?」
「あり」
「ベロチューは?」
「あり」
ありなのかよ。というかその二つ分けるのか。いや分けるか普通。
「おっぱい揉むのは?」
「ありでしょ」
「じゃあ下の口にキスは?」
「ありで」
いや無しだろ。それありにしたら大惨事だ。
というか、もうホントなんでもありになるぞ、このままいくと。
「剃るとかは?」
ついでに言っておくと、さっきからアイデアを出しているのはえりさと繭染さん。それの可否を判定しているのが遥だった。繭染さんは分かる、でもえりささん忘れていませんか? 今の君の無残な姿はそこにいる遥さんのせいですよ。それなのにこんなに際どい事をやろうだなんて、勇者かよ。
「ありで。しかし相手が同意すればという注釈付きかな」
もうホント何でもありじゃないか。
「他に言いたいことがある人は? ないならゲーム再開したいんだけれど」
遥の言葉にみんな無言でうなずく。同意の合図である。私としては下を禁止してほしいと思っているのだが、さっきと同様私一人が反論したところで潰されてしまう。それならばもう黙ってゲームに参加するしかないじゃないか。
それにだ。
それに、王様ゲーム形式であれば自分が命令を受ける可能性は少なくなるし、私が勝ち続ければみんなのあんな姿やこんな姿を見れるチャンスでもある。
ここは気合を入れて勝負しますか!




