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百合生活  作者: 和菓子屋枯葉
閑章・年末
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閑話十一「祭りの後の私と彼女・中編」



 姉と二人で朝食を済ませてから、私は朝のシャワータイムへと突入していた。

 というのも、ゆりちゃんが起きるまでまだまだ時間がかかりそうだったのと、ここで姉との約束を果たしてしまえば、夜入るときに邪魔をされないんじゃないかというささやかな期待を込めての行為だった。

「比奈ー、入るよー」

 私がちょうど髪を洗い終えたときに姉が入ってくる。

「やっぱりちょうど身体洗う前だったね。良かった」

 狙って入ってくるあたり、いかに私が姉と一緒にお風呂に入っているかを物語ってしまっている。こんなところゆりちゃんには見せられないな。

「では、お姉ちゃんが比奈の全身をくまなく洗ってあげよう」

「くまなくは勘弁してほしいです」

 それって大事なところも洗うってことでしょ? そんなことを許可した覚えはない。

「お姉ちゃんの柔らかいおっぱいで洗ってあげようと思ったのに」

「いやごめんその行為自体はとても興奮するし、ぜひやってほしいんだけれど、初めてはお姉ちゃんではなくゆりちゃんがいいので」

 早速今日の夜にでもゆりちゃんにおねだりしよう。私が強気で押せばゆりちゃんも嫌とは言えまい。ふふ、これで私の勝利はゆるぎないものになったな。

「駄目だよ。比奈の初めては全部お姉ちゃんのものなんだから」

「いやいやいや、それはないから。ありえないから」

 何言ってるのでしょうかこの姉は。自分の発言がおかしいことに気付いているのかな?

「まぁ初エッチとかは誰かに取られたみたいだけれど」

「姉が初めての相手とかそんな人いないと思うんですが」

 いても嫌だしそんな人とはとてもじゃないが友人知人にはなりたくないです。

「ま、お姉ちゃんはいつでも万全だから、寂しくなったら抱いてもいいよ?」

「一生機会がないと思うので待ってなくてもいいですよ」

「ふふっ、そんなこと言ってもお姉ちゃんのことは大好きな比奈のことだから、いつか来てくれると期待して待っているね」

「いやだから待ってなくていいって」

「待つ待つ。全然待ってるのは苦じゃないから、一生待ってるね」

 重い。愛が重すぎる。これがもう少し改善されればいいお姉ちゃんなんだけれどね。例えば恋人が出来るとかしてくれればこういうこともなくなると思うの。

「とりあえず今は身体洗いましょうね」

「自分でできるからいいです。ちょ、ほんとやめて無理いやだめ」

「ひなちゃん、お風呂入ってるの?」

 と、そんな頭の悪いやり取りをしている私たちのもとへ、目を覚ましたゆりちゃんがやってきてしまっていた。

 まずいな。こんなところ見られたらきっとゆりちゃんのことだ、一日中拗ねていちゃいちゃどころじゃなくなってしまう。

 どうにかしてこの場をしのがなければ。

「あ、ゆりちゃん起きたんだ」

「うん」

「ダイニングに朝ご飯用意してあるから」

「ありがとう」

 このままゆりちゃんがダイニングへと向かってくれたらいいのだけれど。そう簡単にはいかないのがゆりちゃんという子である。

「私も一緒に入っていい?」

「え?」

 それはまずい。非常にまずい。今は姉が空気を読んで黙ってくれているが、そんな刺激をするようなことを言ってしまうと、何を仕出かすか分かったもんじゃない。

「ダメ?」

「え、えっと……」

 なんて言おうか。なんて言ったらゆりちゃんの機嫌を損ねないだろうか。とか思っている間にも脱衣所からは布が擦れる音が聞こえてくる。ゆりちゃんは私の返事にかかわらず、すでに浴室に入る気まんまんだったらしい。

 だめだ、終わった。

「ひなちゃん、入るね」

 何も知らないゆりちゃんが浴室の扉を開ける。

 私はどんな顔をしてゆりちゃんを見ればいいのか分からなかったので、つい反射的にドアとは反対側に視線を逸らす。

「…………」

 無言。

 それはそうだろう。朝っぱらから自分の恋人が実の姉とシャワー浴びてて、しかもゆりちゃんが入ってくる瞬間姉が私の背中からぎゅっと抱き着いてくるという実に余計なことをしてくれたので、余計怒ってそう。というか私なら怒る。

「……おはよう、ひなちゃん」

 怖い。普通の声なのになんだかすごい怖いですよゆりちゃん。

「お、おはよう」

「おはようございます、お姉さん」

「うん、おはようゆりちゃん」

 どこまでも楽観的に構えている姉の声は、この場においてはどこか場違い感が否めない。でもちょっと頼もしい。

「朝から一緒になんて、ずいぶんと仲がいいんですね」

「そうだよ。パンツを交換したりトイレにも一緒に行くぐらい仲がいいんだよ」

「まぁ、聞いてはいましたが……」

 そういえば前に話したことあったんだっけか。ならそんな簡単には怒らないよね。

「私も一緒にいいですか?」

「もちろん! 大歓迎だよ」

「…………」

 しかし、ゆりちゃんの声には未だに私を射抜くような鋭さが残っていた。

 たぶん、いや確実に怒ってるよな、これ。

「あとでお話ね?」

 入ってきたゆりちゃんが私の耳元でそんなことを言ってきた。

 ああ、お説教コースかな、これは。



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