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百合生活  作者: 和菓子屋枯葉
夏の章
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第四話「憂鬱な朝の時間・前編」


 私は朝が嫌いだ。

 特に理由らしい理由はないが、とにかく朝は嫌い。

 カーテンの隙間から入ってくる朝日に、目を細める。

 ああ、また一日が始まってしまった。

 そう思いながらベッドから起き上がり、部屋を出る。

 洗面所へ行き、諸々を済ませてからリビングへ向かうと、我が家の愛猫であるヒステリリアンが足元に擦り寄ってきた。ご飯をご所望のようだ。

「はいはい、今すぐ用意するから待っててね」

 私は頭を撫でながら猫のご飯の支度をする。まぁ、支度といっても缶を開けるだけだけど。缶の中身をお皿に出し、ヒステリリアンがふんぞり返って寝転んでいるソファの横に置いておく。用意したのにすぐに食べてくれないのはこの子だけだろうか。それとも全国の猫がそうなのだろうか。一度調べてみようかな。

 私は自分の朝食をとるため、リビングからダイニングへ移動する。ダイニングにある大きなテーブルの上には一人分の食事が用意されていた。私一人分しか残っていないということは、どうやら母と姉は先に家を出たらしい。

 席につき朝食を食べようと箸を取ったその瞬間、ポケットに入れておいた携帯電話が振動する。その衝撃で箸を落としてしまった。

「誰だ、こんな朝早くに」

 落とした箸を箸置きに戻し、携帯電話を取り出すと画面を確認する。

 長内百合子。

 その名前を目にした私は、一気に目が覚める。

『おはよう、比奈ちゃん。

 もう起きてる? 私は今起きたよ。今日は遅刻しないで来てね。ご飯もちゃんと食べるんだよ。あと、寝癖は直して来ないとダメだからね

 それじゃあ、また後でね』

 まるでお母さんみたいなメールの内容だったけれど、それでも私は自分で自分の顔が緩んでいるのが分かるくらい嬉しかった。

 今日はいい朝だ。

 朝って最高。

「……さて、いい加減ご飯を食べないと遅刻する」

 私は再び箸を取り、手を合わせてからご飯をいただく。

「いただきます」





 朝食を食べ終え、お皿を片付けた後、自室に戻った私は、パジャマから制服に着替える途中であることに気付く。

「まずいな」

 制服のスカートのファスナーが壊れてしまい、とても着ていける状態ではなかった。

「どうしようかな……」

 予備のスカートを持ってはいるが、あれは違う意味で着ていけない。

 けれど、それを着ていくしかもう選択肢がない。

「私が気にしなければ大丈夫かな」

 そう思い、目を閉じ深呼吸をして覚悟を決めてから、私は予備のスカートを取り出して着る。

 鏡の前で回転し、どこかおかしい箇所がないか確認する。

「……」

 色々とおかしい箇所しかないけれど、それは今日は見なかったことにする。

「よし、スカート以外は完璧だな」

 最後にネクタイを結び、鞄を肩にかけて部屋を出る。

 少し早足で階段を下りて、玄関で靴を履いていると。

「あれ、まだ出てなかったの比奈」

 後ろから声をかけられて振り向くと、姉の日和がいかにも大学生な格好で立っていた。

「それは私の台詞なんだけど」

「いやさ、朝早く起きたのは良かったんだけど、今日授業昼からなの忘れててさ、今どう暇を潰そうか考えてる最中」

 姉は考え事をしているときに家の中を徘徊するのが癖で、よく全裸で徘徊しているから、あんまり友人知人を家に呼びたくない理由の一つになってる。

「あれ、あれれ? そのスカート、ようやく着る気になったようだね。お姉ちゃんは嬉しいよ」

「いつも着てるのが着れなくなっちゃったから、仕方なく今日だけ着ていくだけだよ」

 そう言ってるにも関わらず、姉はニヤニヤと笑いながら私に近づいてくる。

「いいじゃない、可愛いよ比奈。それ、ちゃんと比奈用にカスタムし直してるから、私が着てたときより若干派手だよ」

 私は聞かなかったことにする。

 いくら学校公認で制服をカスタム出来るといっても、やりすぎたら怒られるのを知らないわけじゃないだろう。本当に姉は自由人だ。

「もう行かないと遅刻するから、行くね」

「はいはい、いってらっしゃい」

 笑顔で手を振る姉を背にし、玄関を開ける。

 外に出ると途端に暑さが襲ってきて、再び憂鬱な気分になってくる。

 こんな日は早く百合子に会って癒されたい。

 そう思って、私は急ぎ足で駅に向かう。




今回少し短めです。すみません。

明日あたりに後編を上げますので、よろしくお願いしますん。

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