お父さんはみそっかす。2
ものすごく久々過ぎてビックリしました。
「むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。」
煤だらけの部屋できちんと正座したスミレがきっぱりと言い切った。
その前に立つのは黒を基調とした執事服に身を包んだ青年。
人外美形のゼノンと並べば『普通の人ね』といわれるが街に出れば『キャッ!ステキお近づきになりたいわ』と魅了される女性が出るほどには端正な顔をしている。
今はその顔は引き釣っているが。
「理由を…」
若い執事だが優秀な執事は、スミレがびーえるという男同士の恋愛モノが好物なのも猫かぶって人見知りキャラしてるのも知っていた。
そして無意味な破壊行動をしないことも。
「…口に出すのも憚りたいけど思いきってクロには
言うわ…」
鳥肌をたたせながらスミレが説明をした。
「…なんと言いますか、糞ですね。」
「そーでしょう、そーでしょう。」
そこへ姉であるユリが近付いてきた。
まだ寝巻き姿である。父と母のいいとこ取りの美少女で、一見清純系なのだがそのボディはぼんきゅぼんなセクシーダイナマイト!である。
そんな姉が薄手の寝巻きをきている。ものすごくエロい。
スミレのキャラ的に姉ちゃんエロいね、とも言えず内心突っ込むに留めた。
「朝からどうしたの?
私が目覚ましもなく誰かに起こしに来てもらう以外に起きるなんてリンクに関わらなければはじめてよ?」
こてん、と首をかしげる姿すら美しく可愛らしい。
スミレはぐっと口をつぐんだ。
うっかりすると『萌えっ。ペロペロしたいくらい可愛い!』と叫びそうなのだ。スミレはクール系美少女で通しているのである。本性隠していても姉は大好きなので、引かれたら立ち直れないかもしれない。
ちょっと悲しくなってうつむくと、執事もといいクロが説明をした。
「お父様にも困ったものよねぇ~。」
憂いを帯びた瞳を伏せてユリはスミレに対し同情してくれる。
「私も仕掛けられたことあるわ。」
まさかの衝撃発言に、スミレもクロも固まる。
変態糞父は麗しの姉にも変質行為を働いたようだ。
おのれ、どうしてくれようかと内心怒りに震えるスミレだが、その表情は無表情に近い。
「あの…失礼ですがユリ様はお怒りにならなかったのですか?」
クロが尋ねるとユリは微笑んで言った。
「そんな…クロード気色悪いに決まっているじゃないの。
それに…見られたり聞かれたりしていたのよ。恥ずかしくて、その…」
そこでうつむく。
泣き出したらどうしよう…とスミレとクロが不安になったが、それは杞憂に終わった。
「色々吹っ切れちゃった☆」
「「はっ…?」」
「チャンスじゃない!丸聞こえおそらく丸見えなのよ!
リンクに対する私の思いを余すことなく伝えて認めてもらおうと思ったのよ!」
キラキラとユリの瞳は輝くいている。
恋する乙女の目だ。
「そう思ったからね、まず始めに日記朗読をしたの。」
「日記…の朗読…?」
「そうよ、スミレ。リンク観察日記いえ、私達の愛の記録をね!」
ポカンとするスミレに構わずユリは続ける。
「ちなみに、全13巻なの。産まれたその日から私がつけているの。そこに私の妄想計画を加え喋り続けたわ。お父様なんだかやつれたみたいになって、ほどほどにというか一般的な節度を頼むから持ってくれってお願いされて盗聴行為はなくなったわ。」
ちなみにどんなことを…とうっかりクロが聞いてしまいユリは喋り始めたがすぐにスミレもの耳は塞がれ、聞くことは叶わなかった。
藪をつついて蛇が出てしまったらしい。
「日記読むうちにリンクが男性として機能するようになったらどんなことしたいか妄想炸裂してね、嫌がるリンクを…」
クロードはこらえた。
のろけというかこれは犯罪計画だ。
彼女らの父のゼノンも相当であるが、ユリの方がひどい。
とりあえずリンクとユリの性別と年齢差が逆転しなくて本当に良かったと思うクロードであった。
☆☆☆
クロ(クロード)
かつてゼノン暗殺に来た人。
ものすごくぼこぼこにされ死にかけたが普メン(父と比べればだが。)の黒髪が懐かしかったスミレに庇われ使用人に。
じいやに厳しくも暖かく鍛えられ可愛がられ、執事の一人となった。
目標はじいやのような人。
最近の悩みはスミレにカップリングのネタにされること。