第4話 狐姫との夜
家に帰宅した甲斐としえは、ソファーに座って一息つく。
「今日は充実した1日でした。ありがとうございます」
「こちらこそ。色々買っていただいてありがとうございました」
しえが頭を下げる。
「しえさんも疲れてますよね。お風呂先に入りますか?」
「お風呂……」
「えっと……お風呂っていうのは……」
「それは分かります。狐里にもありましたから。ただ……」
しえが甲斐の顔をじっと見つめる。
「一人で入ってもよろしいのですか?私が甲斐さんの背中を洗った方が……」
「だ、大丈夫です!」
「そう……ですか……甲斐さんがよろしければ先に入らせていただきます」
再び頭を下げると、バスルームに向かって行った。
(あんな美人な人に背中を洗ってもらうなんてできるわけないだろ!)
バスルームに入ったしえは、キョロキョロと辺りを見渡す。
(狐里より狭い……人間界はこんな感じなんだ……)
そして沸かせた湯舟を見て、手を入れた。
(温かい……でも人間って温かいだけで疲れを整えることができるのかしら?)
手を抜くと、後ろの方を見る。
そこにはシャンプー、ボディーソープ、トリートメントがある。
(これは何かしら?)
両目を光らせると、それぞれに含まれている成分がモニターのように表示される。
(汚れを落としたり、綺麗に保つことができるのね。こんなものが人間界にあるなんて……)
その凄さに驚きつつ、シャワーの蛇口をひねった。温水で髪と体全体を流す。
そして、シャンプーで髪を洗う。
(いい匂い……それに泡立ってきた……)
初めてのシャンプーに驚きつつ、ある程度洗うとシャワーで流す。
(このトリートメント……?っていうのはオイルかしら?)
髪に使うと、コーティングされて乾燥がなくなるような気がした。
(人間って凄いなぁ……)
体も洗い終わり、湯舟に手を入れる。
(私はこれでもいいけど……甲斐さん疲れてそうだったな……)
家に帰って、疲れが顔に出ていた甲斐を思い出す。
(少しでも疲れをなくしてあげたい……)
その思いを胸に、手を発光させた。
「素湯錬成」
―――10分ぐらい経つと、パジャマを着たしえが出てきた。
「上がりました」
「パジャマのサイズ合いましたか?」
「はい」
「それはよかったです。ご飯作っておいたので先に食べておいてください」
「……ありがとうございます」
甲斐が脱ぎ終わると、バスルームに入る。
(うん?何かいい匂いが……)
湯舟を見ると、お湯が桃色に変色していて、アロマの香りが出ていた。
(えっ……何これ……)
入浴剤は家にないし……もしかしてしえさんが……?
とりあえず先に髪と体を洗うことにする。
洗い終わると、少し期待しながら湯舟に浸かる。
(暖かい……それに体がいつもよりリラックスしてるような気がする……)
入り続けたら思わず眠ってしまうような……
(はぁ……気持ちいい……)
お風呂から上がると、しえがご飯を食べずに座って待っていた。
「あれ?食べていなかったのですか?」
「……一緒に食べたいと思ったので」
「そう……ですか……でもお腹が空いてたんじゃ……」
「……先に食べた方がよかったですか?」
そう言うしえの顔が少し落ち込んでいて、慌てて否定する。
「ち、違います!そういうわけじゃ……」
「フフッ……ならよかったです」
しえのクスッと笑った笑顔を見て、また胸がドキッとする。
「あの……お風呂……」
「はい。私の力で様々な成分を湯舟に入れました。疲れはなくなりましたか?」
「凄かったです。肩の疲れがびっくりするぐらいなくなっていて……」
「それはよかったです」
「じゃあ……お腹が空いたので食べましょうか」
「はい」
二人分の料理が机に並ぶと、お互い手を合わせる。
「こう……ですか?」
「そうです。じゃあいきますよ」
甲斐のタイミングに合わせて、二人は口を開く。
「「いただきます」」
二人の時間はまだ始まったばかりだ。




