ーー意識覚醒ーー プロローグ
──第一幕 意識覚醒 プロローグ──
白を基調とした部屋は、光を反射して硬質な冷たさを帯びていた。床に敷かれたマットの上に整列する六人の子どもたち。年齢は6歳から12歳まで、黒髪黒目。表情はなく、呼吸は規則正しい。体の動きだけが、教育された正確さを物語る。感情はすでに抹消され、存在は教育プログラムの延長線上にあるかのようだった。
子どもたちの前に立つ教官は、単調な声で指示を繰り返す。文字をなぞり、動きを模倣し、無意識に反応する。微細な誤差は記録され、即座に修正される。部屋には感情の波はなく、空気は機械的に流れる。
隠し窓の向こうには、帝国の軍服を着た大人たちが数人立つ。白い光に照らされる顔は冷酷で、観察する視線は計算尽くされていた。
「この子たちは、あとどれくらいで現場に投入可能か?」
「早ければ半年ほどで十分です」
「前回の投入は想定以上に損耗し、実稼働可能なのはかなり減った。次をなるべく早く投入する必要がある」
窓の向こうの声は部屋の中で微かにこだまする。しかし、子どもたちは反応しない。言葉を耳にしても、意味を理解することはない。ただ、指示を遂行する体と脳があるのみだ。感情の余白は完全に削ぎ落とされ、存在の全てが教育に捧げられている。
教官は微動だにせず、指示を与え続ける。文字をなぞる手の動き、体の傾き、呼吸の間隔、全てが正確に制御され、観察される。失敗は許されず、感情の揺らぎは取り除かれる。無機質な空気の中、子どもたちはただ命令を忠実にこなす。
「準備が整えば、暗殺、爆破、諜報――全ての任務に投入可能だ」
「帝国の意志を反映させるための道具としての価値を最大化せよ」
隠し窓の向こうの大人たちの言葉が、冷たい空気の中で重く響く。子どもたちにはまだ理解できない。自分たちが何のために存在しているのか、何をさせられるのか――理解も予測も不要であり、与えられた教育を遂行するだけで十分なのだ。
床に敷かれたマットの上、六人の子どもたちは規則正しく文字をなぞり、体を動かす。感情は存在せず、意志は教育の命令にのみ従う。教官の指示と窓の向こうの計算された視線が、子どもたちの全てを支配する。
やがて、時間は淡々と流れ、部屋は無機質な機械のような静寂に包まれる。教育は進み、子どもたちは、世界の影に潜む帝国の道具として形を整えていく。
冷たい光の中で、命令を遂行するだけの存在――それが、彼らの現実であり、帝国の策略の一部である。




