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失われたスパゲッティ


今日の夕ごはん当番はぽんちゃんではありません。

ゆっくりしていよう。


ゴロゴロ

ウトウト


まどろみの中で、昔よく食べたミートソーススパゲッティを思い出しました。



なんでかな、前の晩に大量にゆでて余った、冷蔵庫で固まってほぐれない白くふやけたスパゲッティ。それをサラダ油でムリクリ炒めて温めて、昨日の煮詰まったミートソースで食べるとなぜ美味しい?

サラダ油の旨みとヤキソバのようなパリパリ感のスパゲッティの味。

それに絡む一晩置いたミートソース。

朝なのに、かき込むように頬張って食べてた。

もう一度食べれないかな。



圧力鍋でしゅんしゅん凄い蒸気をだしながら煮詰めて、蓋をあけると真っ赤な油の浮いたミートソース。

どうやってつくるのかな。

ぽんちゃんにはイメージ出来ない。

何度か作ってみたことあるけど、何か違ってた。


多分、和風の味が混じっているのだと思う。

豚肉なのか牛肉なのか両方なのかよくわからない。

何かの葉っぱが入って爽やかな香りだった。

トマトの缶詰をゴロゴロいれてた。

セロリとかハーブは常備していなかった。


赤ワインとか見た記憶はない。

にんじんはあったかもしれない。

みじん切りだし圧力鍋で形が残ってなくて、思い出してもよくわからない。


アイデアマンのぽんちゃんは理路整然と何かをするのが苦手。自由な発想だけでは解決できない。


ポロポロポロポロ


いつも自分のアイデアばかり。

もっと色んな話を聞いておけば良かった。

ほかの料理もわからないことがたくさんある。




ぽんちゃん、ぽんちゃん、

ご飯できたよ。

どうしたの?


何でもない、すぐ行くね。

目をごしごしして台所に向かいます。

あれ?


今日はスパゲッティだよ。



なんだかとても懐かしい匂いがします。

ぼてっとした麺とミートソース。



ぽんちゃん食べよう。

いただきまーす。


なんかうまくできなくて、色々手を加え過ぎてこんなんになっちゃった。

もたもたしてたら、麺も冷えて伸びちゃって。油で炒めてあつあつにしてあるけど。

ごめんなさい。


でもおいしいよ。これはこれでいいんじゃないかな。ねえ、ぽんちゃん。


もくもくもくもく

ぽんちゃんは涙を浮かべながら静かに食べています。


どうしたの?大丈夫?


これ、どうやったの?

色んな味がするけどわからない。


ぐふふ、よくわかんない。

なんか味が足りないので、色々入れてみたらこうなった。


何いれたの?!

教えて!


えー、冷蔵庫にあるやつとか。引き出しの乾物とか、、

無理だよ。再現性ゼロ。


じゃあ明日一緒に作って!


ええー、明日もスパゲッティ??

まあいいけど、、



もぐもぐ

もぐもぐ



みんなは口いっぱい頬張って夢中で食べています。

少し違うけど、あの時食べてた味に似ている。

もしかしたら再現できるかもしれない。


その時の色んな材料をその場で調整して新しい味をつくる。最初に完成のイメージを固めて一気に作ろうとするぽんちゃんには自信がありません。


少しづつやってみよう。

自分の世界だけでなく、知らない世界を広げていくことをしよう。


ぽんちゃんは目を潤ませて、もくもくと食べながらそんなことを思っていました。



みんなのお皿はすっかり空っぽです。




おしまい


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