七つの草を探せ
二月の新月の日。旧暦のお正月。
それから1週間後の半月の今日。七草粥をつくります。
「なんで、1月7日じゃないの?」
「だって真冬に七草なんてないんだもの。田んぼや畑に草花が充実してくるのは、2月の節分頃だよ。」
「それはそうだ。1月じゃ早すぎる。」
「近所の草を探してホントの七草粥を作ってみようよ。」
せり
なずな
すずしろ(大根)
すずな(カブ)
ほとけのざ
はこべら
おぎょう
「このあたりで七草ってあるのかな」
「草のことは難しくて」
「あちこち探してみようよ」
昨日は一足早い、春一番。
空気が入れ替わったように、ポカポカ暖かい。ぽんちゃんたちは枯れ草の田んぼの中を歩きます。
すずしろ、すずなは畑にある。
ペンペン草のなずなは田んぼの畔で日向ぼっこしてる。
あと四つ。
ほとけのざはザブトンみたいに葉っぱが放射状に広がっているみたい。畑の縁でそれらしいのを見かける。
「これかな?」
「むらさきの花が咲いてるのは違うよ。」
よく見ると似たような葉っぱの草がいっぱいあるけど、どれもギザギザの形が違う。同じキクの仲間らしい。
図鑑と比べて、それらしいのを採ります。
スペードのかたち。たぶんこれだ。
「セリはどこだろう?」
ハコベラは?ゴギョウもない。あるんだろうけど、うまくみつけられない。
おじいさんに聞いてみようか。
「セリとかゴギョウってどこにあるの?」
「日陰の涼しい場所が好きじゃと思うよ。沢とか小川とかの近くじゃないかな。」
「そうなんだ。草も色々なんだね。そうだ!」
近所の薄暗い、森の沢に行きます。水がちょろちょろ湧く水源地です。
あそこなら。
森の小道をぽんちゃんたちは進みます。
トコトコ
トコトコ
小川沿いに、ふわふわした草のじゅうたんがある。葉は対生で毛で覆われてる。ハコベラだ。
セリも小川に生えているのを見つけた。
2本だけ分けてもらいます。
でもゴギョウは見当たらない。
とりあえず、これでよしとしよう。
さあ、帰ろう。
帰り道、小川に油の膜が浮いているのをみつけて、ぽんちゃんたちは暗い気持ちになります。足取りが重くなり、ぽんちゃんはとうとう立ち止まってしまいました。
三年前までホタルがいたけど、今はいなくなってしまった。水が悪くなってカワニナが住めなくなるとホタルもエサがなくなってしまう。生態系が崩れるともう元には戻らない。
あの頃から川や茂みにもゴミが目立つようになった。みんなの無関心さも年々ひどくなっていく。鳥たちが悲しそうにたたずんでいます。
どうしてこうなってしまうんだろう。
みんなスマホばかりみて。自分以外は無関心。
こんなものいらない!
ホタルのいた以前の森を返して!
「、、、ぽんちゃん、帰ろう」
「うん、、、」
とぼとぼ
とぼとぼ
家に帰ると、カピちゃんが待っていました。手にはふわふわした草を持っています。
ゴギョウです。
「あっ、それ!」
「きゅー。お腹すいたよー。」
わかったわかった。これで全部そろったね。
さあ作ろう!
お米一合をきれいに洗って、土鍋にいれます。
コトコト弱火で30分くらい。芯が柔らかくなるまで煮ます。
煮えたら、刻んだ七草を入れて火を通します。最後に塩をふって味付け。
まるちゃんがフライパンに油を多めにいれて、おもちも揚げるように焼いてくれました。キツネ色になったら醤油をしゅわっと滴らして、香ばしい香りがぱっと広がります。みんなの気を晴らそうとしてくれたのかもしれません。
鮮やかな七草の粥をどんぶりについで、キツネ色の揚げ餅をチョンとのせて。
おいしそう、いただきまーす。
あつあつ
はむはむ
「おいしい、お餅もおいしい」
「なんか、春って感じして楽しいね」
「七草探しも楽しかったよ!」
「色んな葉っぱの形が入っていておもしろいね」
あっという間に、土鍋の中は空っぽになってしまいました。
「ところで、あのゴギョウ、どこにあったの?」
シマちゃんが尋ねます。
「玄関の脇のアスファルトの割れ目に生えてたよ」
「そんなところに?」
「全然気づかなかった、、、」
「関心なければ、そんなもんだよ」
カピちゃんは相変わらずそっけない。
多くの情報より、目にうつりにくい、小さくても大事なものを見落とさないようにしたい。もっと、みちばたの草花の色や空気の香りの変化に気づくことができる知識と澄んだ心を持てるようになりたい。
いつのまにか、ぽんちゃんたちも、大人の入口にさしかかってきました。
皆それぞれ、自分の路を少しづつ歩み始めているのかもしれません。
おしまい




