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思い出のミートソース


 ぐつぐつ

 ぐつぐつ


 何度目かのミートソース作り。ぽんちゃんとまるちゃんは台所でやいのやいの。今日は次の材料で作ってみます。


- [ ] 牛ひき肉 200g

- [ ] 牛脂

- [ ] トマト缶 1缶

- [ ] にんにく1かけ

- [ ] タマネギ 1個

- [ ] ニンジン 1/2本

- [ ] 生シイタケ 3個

- [ ] 鷹の爪 1/2本

- [ ] ローレル 1枚



 圧力鍋を弱火にかけて、牛脂を溶かし、にんにくのみじん切りを竹べらで炒めていきます。

 香りが出たら、ニンジンとタマネギと生シイタケのみじん切り、牛ひき肉を炒めていく。ある程度火が通ってきたら、トマトホール缶を入れて竹べらで潰していこう。



 「少し水を足したほうがいいかな?」


 「いや、今日はお酒をコップ半分くらい入れてみよう。牛肉だけだから、脂っこい。」



 「ブイヨンは2個でいいかな」


 「そうだね、よく溶かして、ローレルの葉を入れてと」


 台所にさわやかな香りが漂います。圧力鍋の蓋をして、煮ていきます。


 「何分くらい?」


 「うーん、20分くらいにしてみようか」


 「そんなに??」


 焦げると良くないので、弱火と中火の間でシューっと煮詰めていく。


 ずっと前に、まるちゃんが作ったミートソース。偶然できた味をもう一度作りたいけど上手くいかない。


 「ほんと、どうやったんだっけ。料理はどうもぼんやり。麺類とか煮ればいいんだけどさ。微妙な味付けとかどうもね、、、」


 「食材は?」


 「あんまりとんちゃくしてない。そもそも本格的な洋食とか中華とか馴染みないしね。和洋折衷があたりまえになってる。」


 「確かに、、、でもインターネットで検索してみたけど、シイタケなんて入れてるのないよ」


 「うーん、でも外せないと思う、、、」


 「イタリアンで日本酒、、、?」


 「ぷぷ、言われてみればおかしいね。牛丼みたい」


 「オリーブとか赤ワインとかは?」


 「常備してないし、使ってないはず。」


 しゅんしゅん

 しゅんしゅん


 圧力調整のおもりがリズムカルに音をたてて揺れています。懐かしい音楽。もうこんな圧力鍋は見なくなってきた。


 「もういいかな、火を止めよう」

 ぽんちゃんは火を止めて、濡れぶきんをかぶせると、ゆらゆらと湯気がたちのぼります。


 圧力が下がってから蓋を開けると真っ赤なミートソースがぐらぐらしてる。タマネギは跡形もない。シイタケとニンジンは残っている。味見してみよう。


 「どう?」


 「さすがビーフ。どっしりと味がある。ちょっと重い」


 「どれどれ、ほんとだ。こんな時、まるちゃんはどうしてる?」


 「酸味を加える。ソースを入れてみよう。」


 まるちゃんはソースを大さじ2ぐらいの量をふりかけ。少し煮たら小皿に少し取ってぽんちゃんに渡します。


 「どう?前の時と近いと思うけど、、、」


 「うん。おいしいよ。なんかハンバーグを煮崩したみたい。でももう一味足りない気がする」


 「ケチャップを少し入れてみよう。これでどう?」


 「うん、、、」



 なんかこんなやり取りを小さい時にもした気がする。味見係をよくしていたのだけれども、ただお腹空いててペロペロしたかっただけで良く考えてなかった。でも忘れてた味と台所の風景の記憶が少しづつ戻ってくる。


 「バターを入れてみよう。ソースもあと少し」


 コトコト

 コトコト



 「この辺にして、そろそろスパゲッティを炒めよう。」


 あらかじめ湯掻いてあったスパゲッティを植物油で炒めます。量があるから中華鍋でジャッジャッ。パリっとなんだか焼きそばみたい。


 「なんかハンバーグとかボル七とかとつながるものがあるね」

 カピちゃんがいつの間にか、小皿をとって味見しています。目で笑うと、トコトコ食卓へ行ってしまいました。

 他にもよく分からない料理の再現にチャレンジしてるけど、根本は同じなのかもしれない。カピちゃんはそのことを言ってるのかな。



 炒めたスパゲッティを皿に分けて、ミートソースをかけていきます。粉チーズをかけて、タバスコお好みで。



 「さあできた。みんな食べよう」


 「いただきまーす!!」



 はぐはぐ

 はぐはぐ



 皆、無言で食べています。フォークにぐるぐるスパゲッティを巻いて、かぶりつきます。炒めたスパゲッティの植物油がおいしい。ミートソースの酸味とよく合う。


 あと何か足らない気もする。でもここまで出来てれば、いつかなんとなくたどり着くと思う。昔の味のスパゲッティを食べていると、すっかり忘れていた日常の記憶がポツポツと頭に浮かんできます。その時の皿の色、テーブルの色、台所の風景、誰かの声。



 「ぽんちゃん、おかわりいい?」


 「いいよいいよ、たくさんあるから食べて」



 「茹でたスパゲッティもうないの?」


 「冷蔵庫のタッパーにあと2人分あるから炒めて温めて。」



 前にも全く同じやりとりをした気がする。

 

 失われた味と共に、いろんな記憶が蘇ってくる。



 時間を巻き戻すことはできない。けれども無くした大事な何かを見つけることが出来たんじゃないかな。



 ぽんちゃんは涙をポロリ。



 「ありがとう」






おしまい

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