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大事なパーコレーター


ある日、ぽんちゃんは商店街の金物屋さんで、不思議なヤカンを見つけました。


蓋のツマミの部分がガラスで、それ以外はアルミで黒々と塗られカチッとしたデザインです。なんだろう?


こんにちは、これ何ですか?


ぽんちゃん、いらっしゃっい。

これはパーコレーターといって、コーヒーを淹れる西洋のヤカンだよ。中にコーヒーの粉と水を入れて火にかければ、お湯が循環してコーヒーができるよ。



仕組みを見せてもらいます。


中は二重になっていて、上下二段になっているよ。下の段の熱湯が真ん中の管を通して、上に吹き出して上の段のコーヒーにかかる仕組みでね。また下に落ちて、また温められて上に噴き出してぐるぐるとまわって濃くなっていくんだよ。


おもしろい!!



その後、何度かお店のショーガラスで見ているうちに、その不思議な形とデザインが頭から離れられなくなりました。


この製品をつくる会社は既になく、在庫限りだといいます。とうとう貯金箱を開けて買ってしまいました。


ほくほく

わくわく


少し古びた素敵な箱に入れられたパーコレーターを大事に抱えて持って帰ります。久しぶりに楽しい買い物ができてぽんちゃんは大喜び。



帰ったら早速、箱をあけます。

部品一つ一つに包みがなされているのを開けていきます。わくわく。


一通り、部品を洗って組み立てます。

ヤカンに逆さのロートみたいのを入れて、上に円筒状の物を乗せて中フタをして、最後に上フタをします。上フタは真ん中をくり抜くようにガラスのツマミが嵌め込まれいて外せるようになっています。

これだけで、もう面白い。説明書も読むのも面白い。


早速やってみよう。


ヤカンに水を入れて上の段にコーヒーの粉を入れ、フタをします。弱火にかけてしばらくするとコトッコトッと、上フタのガラスに噴き出してきます。


みんなが集まってきました。


ぽんちゃん、いい香りだねえ。

何コレ?おもしろい!!理科の実験みたい!

懐かしいもん買ってきたのう、、、弱火でも火が強いから少しずらすのじゃ、とお爺さん。


コトッ、、

コトッ、、


静かにゆっくりのリズムで音が鳴ります。

なんだか生き物みたい。

みんな興味しんしん。

じーっとみています。

だんだんと色が濃くなってきました。


コトッ、、

コトッ、、


言葉だけでは、音、香り、色、熱気の移り変わりは伝えきれません。なんとも不思議なあじわいがあります。


こんなもんじゃろう。

お爺さんが頃合いを教えてくれました。ヘタにすると香りもなくなり濁ってしまいそうです。


火を止めてテーブルの鍋敷きにそっと置きます。


さあ、できた。

みんなのコップをテーブルに並べます。

パーコレーターの口から、細い湯気が高くたちのぼります。

お供のクッキーを出してと。


みんな、お茶の時間にしよう。

ガサガサ


席についたら、あつあつのコーヒーをそっと注いでいきます。黒く透明で黒曜石みたい。


くんくん

くんくん


いただきまーす。



それぞれ好みの甘さでミルクコーヒーにして飲みました。香ばしい香りと独特の焼けたような味がしっくりきます。

みんなすっかり気に入ったようで、ぽんちゃんはとてもうれしそうです。



その日から台所の棚に澄まし顔で置かれています。

大事に長く使おうね。



おしまい





〜閑話〜

ぽんちゃんメモ


*****

最初のうちは、上手に淹れることが出来なかった。


濁って苦いコーヒーばかり。粉を少なくすると味気なかったり。難しい。


でも、ある時から、とても美味しくできるようになった。


お爺さんがよく言う、材料の声が聞くのじゃ!が少しできるようになったからかもしれない。



これは楽器のような生き物。



コーヒーの分量、粒度、加熱時間とかナンセンス。


やかんにかける熱エネルギーの量、コトッコトッと沸騰して循環するリズムの強弱、速さ、その時の香り、窓からみえるコーヒーの色を理解し、加減する。なんだかちょっと職人的。



パーコレーターを弱火にかけて、コトッコトッとお湯が循環し音が鳴り始めたら、コンロの位置をずらして調整する。



ゆっくりのリズムで優しく

コトッ、、コトッ、、


静かに上の段のコーヒー粉にお湯をかけるイメージ


そうすると、コーヒーの粉に層ができて、フィルターがなくてもクリアなコーヒーにできる。


「見えなくても、内部の様子をイメージするのじゃ」


メモおわり

*****


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