人身事故
『夏のホラー2023』参加作品です。
俺はイラついていた。なぜなら、会社の帰り道に人身事故が起こったからだ。後輩と一緒に帰っていたが、彼は心なしか非日常にソワソワしている様子。
まだ梅雨と夏の真ん中の季節。俺は汗だくになりながら娘に電話を掛けた。
嫁は居ない。いわゆる俺はシングルファーザーだ。
「パパ……遅い」
「ごめんなアキ。今電車で人身事故が起こってるんだ」
「パパはいつ帰ってくるのかな?」
「わからない。数時間はかかるかも」
「寂しいよぅ」
「ごめんな」
「パパー」
俺はまだ幼い娘の声を聴いて、電車と接触した奴を恨んだ。なんてことしてくれる。俺と娘のコミュニケーションの時間を奪いやがって。
しばらくして、俺のスマホにニュースが流れる。
≪〇〇線で突き飛ばし。サラリーマンの男性が死亡≫
それはまさに、俺の今立っているホームだった。やっと電車が動き出して、おしくらまんじゅう状態で身動きが取れなくなる。つまずいた俺は、手前に居た会社の後輩を前へ押し出してしまった。
「うわぁああ!」
後輩はホームから転落する。
その際。後輩は俺を指さして言った。
「俺が殺したはずなのにっ!」
ホラーは特に苦手なのですが、読んでくれた上に「いいね」などを押してくれて嬉しいです!もしまた企画ホラーを書くときは、テーマの『帰り道』を活かした短編を創りますね!
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