第4話
第四話:父と母 三
父と母の新婚生活が始まった。二人が暮らした町は坂の上にあった。二人で選んだアパートからは海が一望出来た。海が見渡せる素敵な景色を眺めて日々を過ごした。
そんな日常が続いて一年が過ぎた頃、美弥子のお腹に新しい命が宿った。二人の愛の結晶である。妊娠がわかった時二人は手を取り合って喜んだ。念願の子供だった。
坂上田村麻呂。これは歴史で習った。今は関係ないがとても言いたくなった。征夷大将軍を二回も務めた立派なお方である。
私が今書こうとしたのは次の文章である。坂の上にあるアパートで暮らしていたため、美弥子のお腹が大きくなるにつれて、買い物が大変になった。額に汗して買い物をして帰って来るのである。坂のせいもあったのだろう、美弥子のお腹に宿った命は超未熟児として二月一日に誕生した。
二人はその子に竜一と名付けた。男の子だった。二人は大切に大切にその子を育てた。超未熟児として生まれた竜一だったが、二人の愛のお陰で問題なく大きくなっていった。
竜一が五歳の時に雪が産まれた。竜一は雪をとても可愛がった。雪はとびきり可愛い赤ちゃんだった。優吾は女の子が欲しかった。もちろん竜一のことも可愛がったが、女の子は男親にとっては特別な存在だ。優吾も美弥子も幸せだった。
雪はお喋りが上手な子供だった。兄がまだ小さい頃、ウンコを漏らしたことがあった。すると雪は歌を作って歌った。「お兄ちゃんのパンツにみそくっついたー♪」兄は恥ずかしくて「やめてやめて」と言ったが、雪は歌い続けた。兄は泣いた。雪の方が断然強かったのである。これは父と母が子供が出来た後に購入した、録音機能付きのラジカセで、カセットテープに鮮明に記録されている。今聞いても笑ってしまう代物の一つだ。