第30話
第三十話:私の自慢の生徒 二
東美奈子の話をしようと思う。彼女は現在看護師として働いている。気づいた人もいるだろうが、彼女は坂下からネックレスをプレゼントされた美奈子である。
彼女は一年生の頃からずっと、介護士になりたいと言っていた。いつも笑顔で周りに気を配ることができる、とても優しい女の子だった。性格的にも介護士を志しても問題ないと思われた。三年生になって個人面談をした時に、私は気づいてしまった。美奈子は自分の学力を卑下して介護士を志しているのではないかということに。率直に聞いてみたら、どうしてわかるの?と聞かれた次第である。美奈子は努力家だったが、イマイチ成績が伸びなかったのである。私は三年間、国語を教えてきたが、真っ直ぐに私を見つめる美奈子の眼差しは素晴らしいものだった。「まだ時間は残されているよ。」と私は言った。
数日後、美奈子は私に告げた。湿原にある専門学校に行きたい。盆地にある病院の院長推薦を受けて入学できる制度があることを調べてきたのである。それから何度となく面接の練習をした。日に日に受け答えが自然になってきた頃、面接の日を迎えた。病院まで私が送って行って、面接が終わるのを車の中で待っていた。一時間しないうちに美奈子は笑顔で戻ってきた。「手応えあります。」面接練習した甲斐もあって質問に困惑することもなかったようである。
面接から三日後、院長推薦の結果が電話で知らされることになっていた。昼前に職員室の電話が鳴った。担任の先生に代わってほしいときた。電話に出ると、合格しましたよときたもんだ。私は自分のことのように喜んだ。昼休みになってすぐ、校内放送で美奈子を呼んだ。三年一組の東さん、職員室に来てください。もう気持ちを抑えることが出来なくて明るい口調になっていた。職員室に来た美奈子に合格の旨を伝えた。美奈子は泣きながら喜んだ。夢は諦めちゃ駄目だ。
後日談、美奈子がこう言った。「兄さんは、日本の看護士を一人増やした人なんだから誇りを持って生きてください」美奈子、ありがとう、お前は最高の教え子だ。




