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第23話
第二十三話:私の記憶 十九
大学の卒業式の話をしようと思う。私の周りで袴姿の人はあまり見かけず、私もスーツで参加した。写真は使い捨てカメラが主流であったが、私はキャノンのAPSフィルムのイクシーを使っていた。そのカメラを使って仲間と記念撮影を楽しんだ。卒業式では女の子の多くは振袖を着ていた。私は最後のチャンスだと意を決して、花さんの元へ行き一緒に写真を撮ってくれるように頼んだのである。花さんは笑顔で承諾してくれた。夢に見たツーショット写真である。その勢いのまま、電話番号とEメールアドレスを交換してもらって、私はにんまりとして帰宅したのであった。舞い上がっていたので、その後に行われた卒業祝賀会の記憶はほとんど残っていない。ただ覚えているのは、酔っ払ってずっと北の国からの五郎さんのモノマネをしていたということである。
その後、私は日をあけて花さんに電話を何度かしている。Eメールもやり取りした。しかし、花さんとは付き合うことは出来なかった。何回目かの電話で、公務員試験に向けて勉強に集中したいと言われた。これも優しい嘘だったと思う。私はその優しい嘘を受け入れて連絡することを辞めにした。
花さんは幸せに暮らしているだろうか。素敵な年の取り方をしていれば何よりである。




