第22話
第二十二話:私の記憶 十八
佳純との付き合いは長く続いた。よく映画を観に行ったし、佳純の部屋でDVDを観ることもあった。佳純は夏休みや冬休みになるとラーメンの美味しい街に帰省した。私は駅のホームまで行って、見送ることにしていた。そして、必ず佳純は私に手紙をくれた。「離れていても二人なら大丈夫。笑顔のなおが好きだよ」
私は寂しかったが、離れていても平気だった。佳純のくれた綺麗な字で綴られた文章を何度も読み返した。会えない時間が愛を育てるなんて言うけれど、そんな気がしていた。その頃はLINEなんて便利なアプリがなかったので、Eメールでやりとりをしていた。声が聞きたくなれば電話をした。離れていても大丈夫。そして、二年の月日が流れた。
私は大学四年生になった。回転寿司のアルバイトは辞めることにした。理由は教員採用試験に向けて勉強を本格化させるためであった。大学三年の時には母校である霞西高校へ教育実習に行った。短い期間であったが、ますます教員になりたいと思える貴重な経験をさせてもらった。色紙と花束までもらえて幸せだった。
別れは突然やってきた。いつもどおり佳純の部屋で音楽を聴いていた時に、ふいに言われた。「別れよう」と。確かエブリリトルシングのバラードが流れていたと思う。私は慌ててしまった。何故?と。佳純は「なおの勉強の邪魔になるから。私も本気で勉強して教員を目指すから。」と言った。何故別れなければならないのか、理解がまだ出来なかった。佳純がいるから頑張れるんだよと言ったが、駄目であった。不甲斐なく泣いた。佳純の部屋を出た私は、付き合いだして辞めた煙草とライターをコンビニで買った。すぐに火をつけて吸った。二年ぐらい辞めていた煙草の煙が肺に入ってきて、私の肺は驚いた様子だった。私はバスも地下鉄も使わずに大きな駅まで完歩した。煙草を吸い終わったら、すぐに火をまた次の一本に付けて、を繰り返した。泣きながら歩いた。
それから数ヶ月後、佳純が他の人と付き合っている様子だと友達が教えてくれた。人は傷つけたくない相手には優しい嘘をつくものだと知った。




