第12話
第十二話:私の記憶 八
高校時代は勉強ばかりしていたのかというとそんなことはない。バレーボール部に入りたくさん練習をした。同学年の入部者は私とエースの二人だけだった。エースは橋本靖という小学生の時に一時期私の通っていた学校に転校してきた男であった。中学時代はあっ、あいつは橋本だな。ぐらいに思っているだけで、話をしなかった。高校へ入学したその年、私達は同じクラスになった。「バレー部に入るしょ?」と話しかけてきたのは橋本の方だったはずである。入部して早々に橋本はバレー部を辞めた。先輩と喧嘩をして。私は困った。どげんかせんといかん。そう考えた私は新入部員を集めようと奔走した。まず最初に、中学時代の後半に仲良くなった澤ぺろんちょに声をかけた。ぺろんちょはすぐに入部してくれた。次に身長の高いカジに声をかけた。考えてみるとみんな卓球部だったんだなと気づいた。カジが釣れた時、アリがカジができるならオレも入るわと言ってくれた。こうしてバレー部の同期が私を含めて四人になった。同期には私自ら指導にあたった。リキヤから教わったことを頭の中に反駁しながら教えた。一番伸びたのはぺろんちょであった。なんせ、ぺろんちょは休まなかった。二人きりで練習することも度々あったが、ぺろは文句一つ言わずに練習をこなした。全く凄い奴だ。
「お前は話の本題に入る前置きが、クソ長い。」これはぺろんちょに言われたことである。確かにその通りである。ここまで読んできた読者ならば、この言葉の真意をご理解いただけると思う。さて本題に入ろう。
夏を過ぎ、秋頃に橋本がバレー部に戻りたいと言ってきた。私にはどうすることもできないので、顧問の瀬戸内先生に相談しろと告げた。瀬戸内先生は毎日は練習に顔を出すわけではないが、バレーボールの指導ができる尊敬できる先生であった。橋本は瀬戸内先生から戻ることはできないと告げられたと私に報告してきた。私はエースである橋本が戻ってくることを期待していただけにがっかりした。私は瀬戸内先生のところに行った。アイツはバレーが好きだから、どうか戻してあげて欲しい。お願いしますと何故か私が頭を下げていた。瀬戸内先生は渋ったが、先輩のほうにしっかりと謝ることができるなら、という条件をつけて戻ることを許してくれた。橋本はきちんと先輩に謝った。こうして同期は五人になったのである。




