犯罪者の娘
刑務所についた。
やけに小さな敷地の中に、無理やり押し込んだような設計だった。この街全体の犯罪者がどれほどいるかは分からないが、それにしても狭すぎた。
それに対し釈放・保釈の受付場所は綺麗に作られていた。悪人に人権を与える必要はない、この街の人間の考えが透けて見える、差別主義の人間らしい。
「……お人形さん。私、受付のやり方……」
「大丈夫ですよ、もとよりそのつもりで貴方に付いてきたので」
リザは震えていた。私に金貨が入った袋を渡す時でさえ、周りを落ち着きなく見渡している。……当然だ、刑務所とは人間の悪意と狂気の巣窟だ。善悪の判断もままならないリザにとっては、限りなく恐ろしい空間だろう。
「……手、繋ぎましょうか」
私がしっかりしなくては。震えるリザの手を掴むと、小さな手がしっかりと握り返してきた。冷たくて鉄臭い、柔らかみも温かみも無い手で申し訳ないと思った。
受付の男はとても威圧感があった。刑務所で働いているのだから気迫があってもおかしくはないが、リザのような小さな子供には、あまり関わってほしくない人種の類だ。
「すみません」
「あぁ?」
ふかしていた煙草を地面に捨て、足裏で潰す。刑務所の奥の牢屋に人影が見えるが、どちらが囚人なのか分からなかった。
「釈放金を持ってきました。この子の父親を出してください」
「……あー。お前、あいつのガキか」
私の背に隠れるリザ、男はポケットに手を突っ込みながらリザの目の前に立った。
「健気なもんだなぁ。何年もここに立ってるが、実際に釈放の手続きをしたのは久しぶりだ。……大変だなぁ、犯罪者の娘っていうレッテルは」
リザが私の手を強く掴んだ。
「……いいから、早く手続きを」
へいへい。男は受付の小屋から紙とペンを取り出し、手のひらを見せて来た。私は、金貨を男の手の平に叩きつけた。男は不満そうな顔をした後、私に鍵を渡してきた。
鍵の番号は「6番」、この番号の牢屋の錠が開けられるのだろう。
「行きましょう」
私はリザの手を引っ張り、刑務所の奥に進んだ。