最悪な出会いと再会
「あんたねぇ! 王子だか勇者だか知らないけど! 仲間にそんな扱いするなんて、人としてどうかと思うわ!」
「全くでござる! 王子で勇者であるなら、もう少し慈しむということを覚えるでござるよ!」
「ボフォ⁉」
あ、あの声は⁉
驚いて人をかき分ける。と、
「あ……リラ……」
「あ、ザゼル……! ど、どういう状況?」
角を魔術で隠したアザゼルが困惑顔で此方を見つめる。ちらりと横目で声のした方を向けば、
(ああー⁉ よ、予想通りだし……!)
そこには勇者兼王子のあいつとその仲間(と思しき魔術師や女神官達)と、向かい合う形で直立不動するビキニアーマー姿のメーブと忍び装束のザザンの姿!
「や、やっぱもめてたし……!」
予想はしていたけどね⁉
うわあ……と顔が引きつる私に、横に居るアザゼルが耳打ちする。
「村の入り口であの勇者……らしき人が仲間に悪態を吐いていたのを二人が見つけて……あまりのいいように我慢できなかったのか、注意したけども激昂されて……」
「うう……予想通りだわ」
甘やかされて育った坊ちゃん王子だしなあ。
「……あの人……勇者……で王子……ですよね?」
「い、一応ね……」
嫌そうな表情のアザゼルに同じく嫌そうな顔で頷く私。すまん、あいつ勇者なんだ……。
「……調べた情報の十倍は酷そうですね……」
「それはもう矯正頑張って、としか」
「アアン? リラじゃないか」
びくり、と身体が震える。
振り返ると、別れた時よりも面構えが凶悪になった勇者がこちらをねめつけていた。
「なんだい? こいつらとパーティを組んでいるのかい?」
「え、ええ……ま、まあ……」
視線を逸らす私。ど、どうしよう……今此処で勇者と会いたくないし、おまけにビキニアーマー着た奴と仲間と知られるのが今さらながらこっぱずかしい!
しかし私の魂の叫びは聞き届けられることは無かった。
「っは! 神官である君がこんな特異な風俗嬢と旅とはな。堕ちたものだ!」
「ちょっと! 誰が風俗嬢よ!」
いや、否定出来んだろ。
抗議するメーブに心中でツッコム私。すまん、メーブ。この件に関しては少なくとも擁護は出来んぞ。
「全くでござる! 誰がどんな服を着ようと自由でござろう!」
限度があるわ、限度が。素っ裸でその辺歩いていたら公然わいせつ罪で捕まるぞ。
ザザンの抗議にも勇者を擁護。あれ、私ってどっちの仲間だっけ?(絶賛混乱中)
「ちょ、ちょっと皆さん落ち着いて……!」
慌てたアザゼルが仲介の為に間に割って入る(魔王のくせにめっちゃ善人)。が、
「は……はくち!」
可愛らしいくしゃみを一発。と、
ボフン
「あ」「え?」「ん?」「へ?」
間抜けな音と共に、アザゼルの頭に生えている角を隠す魔術が解けた。って、
「ノォオオオオオオオオオオオオ⁉」
思わず頭を抱える私。や、やばい!
「っ⁉ つ、角……⁉」
勇者の仲間の女魔術師(私の後で仲間に入ったようで名前知らない)が顔色を変える。
「お、前……人間ではないな!」
腰の剣に手をかける勇者。ま、まずい!
「ちょ、ちょっと……!」
慌てて止めようとする私、が話しを聞くはずもなく剣を抜く勇者。ぐ、いかん!
「神官でありながら人外の魔物と手を組むとは……裁きを受けろ!」
正論!
「聖剣……抜刀!」
「っ!」
勇者が剣――つまりは聖剣を抜く! それに対し、メーブが前に出る。おい、何を?
「ふ、来なさい」
ドン、と背中に亀の甲羅のように背負っていた巨大な盾を構えるメーブ。ま、まさか⁉
「光に飲まれろ!」
勇者が唱えると共にすらりとした白亜の刃が金色の輝きを帯びる。
「……こい!」
それに逃げることなく迎え撃つメーブ。って、おおい⁉
「いけない……! 防御します!」
アザゼルが咄嗟に防御魔術を展開するのが見え、咄嗟に同じく防御魔術を行使する。
「〝クレイドル・シールド〟!」「【全てを無にする、虚無の鎧を……】!」
そして――裂光が爆発した。
同時に、轟音。
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