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はい。私、なめていました(後悔)

 さてさて勇者を追いかけ旅する羽目になった私女神官リラ。巷では聖女と呼ばれたりして、結構有名だったのだけど、仕える勇者から「大国から新しい聖女が来るから、用済み」と切り捨てられちゃったけど、このあんぽんたんな押しかけて来た三人を押し付ける為に、何の因果か勇者をおっかけ始めたのは良いものの……。


 はい。私なめていました。この三人と旅するということが、どういうことなのかを。




「へっへっへ。よう姉ちゃん? いい尻してるなあ? いくらぐらいでいけるかい?」


 下品な笑みを浮かべて話しかけて来るおっさん。それに、

 プツン! 


「風俗ちゃうわああああああああああああああああ⁉」


 私のいい加減堪忍袋の緒が切れ、渾身の回し蹴りが炸裂する。


「げふう⁉ な、なにしやがる⁉」


 案の定ぶっ飛ぶおっさん! しかし謝罪はせんぞ!


「私達は冒険者よ! 風俗営業なんかしてないわ!」

「な、何言ってやがる……!」


 よろよろ立ち上がりながらおっさんは痛恨の一言。


「そんなビキニアーマー来て冒険者やっている奴なんかいるもんか!」

「やかましいわ! 私は来てないわよ!」


 私の抗議の声。対し、


「やーねえ。ビキニアーマーというだけで、差別される偏見に満ちた世界って」


 ふっと、わざとらしく溜息を吐くメーブ!

 く、こいつの恰好のせいで、私まで風俗に間違われる……! こいつで何回目よ⁉


「あんたその恰好やめなさいよ⁉」

「い、いやよ。私はこの呪われたビキニアーマーで天下取るって決めたんだから!」


 前にも言ったけど天下取るなよ、呪われたビキニアーマーで。


「そして文句があるなら私を殴りなさいよ!」

「ええい、黙れマゾ!」


 くそう、こいつと会話すると、大体終始「殴れ」で終わるんだよな⁉

 私はメーブとの何度目かの言い合いを始めたのだった。




   ◇   ◇   ◇





 また別のある日。


「リラ殿~。盗賊共の場所を見つけましたぞ~」


 とある村に滞在した際、村長から頼まれた近くの盗賊団撲滅の依頼。もののついでと依頼を引き受けたのだ、が……。


「敵は十数人程度。何、拙者が独りで夜中にのど元を掻き切ればことは済みますぞ」

「恐いわ⁉」


 こいつ、敵に容赦しないな⁉

 ザザンのおおよそ軽い言動とは似つかわしくない話の内容に慌てて止めに入る。


「いい? 盗賊でも一応人間なの。人権ってのがあるの。取り敢えず、捕まえないといけないの。分かる?」

「そうでござるかー? 盗賊ギルドだと敵対する者=死は常識でしたが」

「倫理感バグってるな、盗賊ギルド⁉」


 このぶっ壊れた倫理感とが合わさり、暗殺対象に予告状を送りつけるようなトンチンカンを産みだしたのか!


「取り敢えず盗賊団に悔い改めねば首を掻っ切ると予告状を出しておいたでござるよ♪(親指グッ

)」

「そりゃ〝予告状〟じゃなくて〝脅迫状〟でしょうがああああああああああああ⁉」


 私の幾度目かの怒鳴り声が木霊した。

 尚、この後盗賊団はアザゼルが範囲魔法で全員眠らせて官憲に送ったのであった。




   ◇   ◇   ◇





 また別の日。

「【堕ちろ、天空の光……】!」


 アザゼルの短い詠唱。それが終わると共に、

 ズシィイイイイイイイイン

 と、天空に魔法陣が浮かび上がったかと思えばその魔法陣から無数の黒い光が地表へと降り注ぎ、押し寄せて来たゴブリンの群れが一瞬で消え失せた。


「終わりました」


 さらっと言ってのけるアザゼル。それに、


「………………うん」


 しょんぼりと頷く私、リラ。


「出番なかったでござるなー……」

「今回もねー……」


 ザザンとメーブもしょんぼりと声を上げる。


「まあまあ。雑魚ですし」


 と、一応仲間のはずのゴブリンを雑魚扱いする魔王アザゼル。


「ほら。早く依頼完了したことを報告しましょう。急がないと勇者パーティに更に距離を開けられますよ」


 パンパンと手を叩いてメーブとザザンを先導するアザゼル。

 ふぉ、フォローも完璧……なんでこいつ魔王やっているんだろう?

 疑問に思う私。そのまま依頼の報酬を受け取り、村を出て今日は野宿となったのだ、が……。


「はい、リラさん。この前の服、縫っておきましたよ」

「え、あ……ありが、とう……」


 手渡されたのは、着ていたお気に入りの衣服。旅の合間にスパッと切れ目が出来ていたのだが……


「き、綺麗に縫ってあるし……!」

「こういうの得意なんですよ。はい、今日は特製のお肉の炊き込みご飯ですよー」


 そう言っていそいそと自身が作った炊き込みご飯を茶碗に盛るアザゼル。それを呆然と見つめる私。


「……やべぇ。




 あの魔王、女子力たっけぇ……!」


 やだ……私の女子力、低過ぎ……?

 がっくりと、その場に膝から崩れ落ちるのであった。


(てか〝魔王〟のくせに一番まともってどういうこと⁉)



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