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世界で一番ラブコメからかけ離れた男子高校生  作者: azakura
3章 結びついた彼女らは三角関係じみたラブコメへ、そして彼は彼女らの知り合い
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3-4

 正式なジャンルが『総合ショッピングモール』なだけあって、ショッピングコーナーが充実している建物内。南館三階、昼食待ち合わせ場所近くのグッズコーナーへと赴いた佐久間、雫玖、燐は、各々がぶらぶらと商品を眺める。

 そんな中、佐久間は五歳になるいとこ希望の星型マスコットグッズを探していると、


「佐久間くん、佐久間くんっ」


 背後からの、明らかに作りましたと言わんばかりのキャラクター声に振り返れば、


「佐久間くんが探しているのは僕かな?」


 パペット型の『ほっしーくん』ぬいぐるみ、雫玖がその口をパクパクと動かしていた。


「それだね。この辺にあるのかな? えっと、ホシノくんって名前だっけ?」

「そんな苗字みたいなマスコットなんて聞いたことないからっ」


 思わず演技をやめて素のツッコミを入れた雫玖、


「いとこちゃんはこの子が好きなんだよね? 向こうの棚にコーナーがあったよ」


 こうして雫玖と佐久間は一緒にマスコットグッズを眺めていく。


「さっき眺めてたらね、ほっしーくんとペアの女の子マスコットがあったんだ」

「ホシ子ってマスコット?」

「さっきからネーミングセンス、ヤバいって。あ、これこれ」


 雫玖が手にしたのは、リボンなどの可憐な装飾を頭に施した『スターナ』のキーホルダー。


「へー、このスターナちゃん、ほっしーくんのガールフレンドだって。ほっしーくんに密かに想いを寄せる……。ちょっと萌えるかも」

「まるで小清水くんと出雲さんの関係だね」

「えー、ガールフレンドですらないって。でもこのスターナちゃんの気持ち、何となくわかるかも」


 佐久間は細長い身体を上下させて多様なグッズを見ていると、


「他にもキラリンなんてマスコットもあるみたいだね。ほっしーくんの幼馴染でスターナのライバルだって」

「うわ、マスコットのクセしてドロドロ設定……」

「設定をつくることでファンの心情を煽る作戦かな。これがマーケティングなら、洛桜祭でもマネしてみれば? 上手くいくと話題になってくれるかもしれないし」

「投げやりに言ってない? 考えるならもっとマジメに考えてよね」


 苦言を呈しつつ、スターナとキラリンのぬいぐるみを手に取った雫玖。すると彼女は、両者とじっくり睨めっこで、


「この子たちの関係、他人事じゃないかも」

「…………」


 雫玖の手の内のそれらを寡黙に見る佐久間。


「ん、どした? ひょっとしてこのぬいぐるみ、気に入っちゃった?」

「いや、どちらかと言えばほっしーくんのほうが好み」

「ほー、そっか。いとこちゃんもほっしーくん欲しいもんね。そんじゃ、ほっしーくんグッズ探そうか」


 進んで佐久間のためにグッズを探してくれる雫玖。その親切な姿を目にしながら、佐久間はともにグッズを選んでいく。


「…………」


 ただ、そこには佐久間じぶんがいないと思い做しただけだ。

 もっとも、それだけを考えただけのこと。

 膝を折って最下の棚を物色する雫玖、目ぼしい商品でも見つけたのか、


「見て見て、このマグカップどう……、……って……あれ?」


 彼を見上げるとほぼ同時に、雫玖はキョトンと首を傾げた。

 なぜなら、佐久間は自分から視線を外していたから。彼がすでに標準を合わせていたのは、その真正面に位置する一人の女。おそらく女子高生だろう。


「おっ、こんなトコで会うなんて奇遇だねー。おっひさー」


 顔に掌をかざして、ウインクを決める短めの茶色いツインテール。雰囲気はどことなく雫玖にも似ている。


「相変わらず長い髪してんね~。ちゃんと毎日整えてる?」


 クスッと微笑んで見せる彼女の名は、八坂奏那やさかかんな。たしかその存在は、――――佐久間導寿が自ずと『脇役』を自覚するきっかけとなる相手だった。

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