片割れの魔女 家、炎上! 唸れ筋肉! とどけ金ダライ!! 野郎、ぶちのめしてやる
左の扉から出た魔女は、片割れが住む家の前へと姿を現した。
遠くまで見渡せる高原にあり、包み込む日の光は心地よい暖かさで、ときおり吹く風も良い。
白い漆喰で塗られた平屋の前、赤毛の屈強な若者が居た。
粗末な服の上からでもわかるほど筋骨たくましい姿。きびきびとした動作で、次々と洗濯物を干していく。
少し前まで小さな子だったのにと、ほほえましく思いながら、若者の前へと行き
「ただいま。洗濯をするのには良いお天気ね」と挨拶をした。
魔女は顔にひときわ強い風を感じ、横にすっ飛んだ。
パァーンっと言う音を聞きながら、地面に倒れたとき、ホホに熱い痛みを感じた。
若者が魔女にビンタをしたのだ。
「貴様!どこの者だ!!師匠の姿を真似て出てくるとは不届きな奴」
「なぇっ・・・なにを」
「何をではない。いくら師匠の姿を真似ても、臭いが違う。動きが違う。正直に言わねば、力づくでも喋ってもらう」
若者は、魔女を捕まえようと大きく一歩を踏み出してくる。
魔女は激怒する若者を恐れてか、目くらましと牽制に火炎の魔法を若者の周囲へと展開し、空へと駆け上がる。
逃がすまいとする若者は、高い温度を示す青色の火柱へと突っ込み、服以外は傷一つなく、炎から出てくるが、魔女は手のとどかない中空へと逃げていた。それなら、少しでもと、近くにあった金ダライを魔女へと投げつけ、頭に当たった。