災厄の双子 討伐軍を滅す
その場は、凄惨で無茶苦茶だった。
鎧を着た兵隊達は、多種多様な・・・焼かれ、溺れ、凍り付き、切り刻まれ、ひねりつぶされて死んでいた。
多くの死者達の中、生者は3人。
目を見開き、神への許しを口にのせ、印がついた杖を前に掲げる禿頭の聖職者。
揃いのつば広帽子とローブを着た2人の女性。
「「ふふふっ、司教様、残念ですわ。たかが女の私達如きに、これだけの殿方で押し掛けられたのに、細腕一つ手にとれないとは」」
2人の女は声を合わせて、司教をあざ笑う。司教は目に力をこめ、女をにらむ。
「主は、貴様等魔女を許されることはない! 主の御力によって滅せよ、魔女め!!」
司教のかかげる杖が白く輝く。それと共に、天から音よりも早くいくつもの光が魔女2人へと降り注ぐ。
司教は、輝く杖を地面へ突き刺し。周りの死者を見渡し、息を整え、手で聖印を描き、死者への鎮魂と安寧を祈る。
司教は近くの、身を盾にし数十の鉄杭で体を打たれた若い騎士の、血で汚れた顔を清めようと手に取った。
そして、騎士の手が司教をつかんだ。
「「ほほほほっ。たかが光とは、我ら双子もみくびられたもの」」
光の中より、2人の魔女は傷一つなく歩み出てくる。
「「主の御光とて、我ら双子の雲を貫くことはできず」」
双子の魔女が両手を高くあげれば、空に黒く厚い雲が広がってゆく。光は雲を貫くが、徐々に細く、そして消えた。
「「冥府へ行く死者達よ、戻ってこい。その身を起こし、その坊主を担ぎ上げ都へと行け」」
双子が地面をけって、命じる声に、周囲の死者達はゆっくりと顔を上げ、司教の元へと、手や足・・・無ければ肘や頭を動かして近づき、暴れる司教を捕まえる。
「「それでは司教様、ごきげんよう。あまり良い土産とは言えませぬが、どうぞお仲間達と楽しんでくださいな」」
鈴のような笑い声をあげながら、双子は手をとり合い、ゆっくりと宙に浮かぶ。死者達の行進とは逆方向の深い森へと飛んでいった。