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カシスの頑張り所

試運転中。



キシャァァ


「オラァ!絶の型!スーパーサンチン!!」

「よっしゃ!!フロストフォール!!」


ゲゲェェッ


「いっちょあがり!」


「セレナオルオ索敵お願いー。」

「オケ。」


僕は攻撃魔法使いのカシス。

今は、いつものメンツでダンジョンを攻略している。

この階層は少し防御力の硬い、ファイアシザー。

通称火カニ。

カニなのに炎属性の技を使ってくる、ヘンテコな

モンスターだ。普段は、マグマの中を歩き回って

いるらしい。


「釣ったよー。」

セレナオルオは弓士。索敵、釣り、他、色々なことを

こなす。


「オッケー!セレナオルオ。」



キシャァァ!!


「こっち向けカニ野郎!視線独占!!」

トーザは聖騎士。モンスターの注意をひきつける

盾役だ。


「くぉぉぉ!だっせい!!」

レレオはモンク。メインアタッカー。

職業だけでなく中身も脳筋だ。


「闇なる息吹よ、怨敵の力を下げよ。

 ディープスリップ。」

パーティーの女性の一人、クルルイはバフ魔法使い。

パーティーに欠かせない職業だ。


「トーザに聖なる息吹を!クリティカルヒール!!」

パーティーのもう一人の女性、ルキャッザ。彼女は、

聖魔法使い。回復役兼癒やし係りだ。


皆が皆、欠かせない役割を担っているが、

僕が担っている役割は、ハッキリと言葉では

表現しづらい。一応、アタッカーではある。

恒常的なダメージではなく、瞬発的なダメージを

叩き出すのに優れている。


今もそうだ。セレナオルオとレレオの物理アタッカーが

モンスターの体力を6〜7 割削った頃合いで、

ドデカい攻撃魔法を火カニにぶつけて、一気に

削り切る。

このダンジョンのモンスターは

体力が無くなってくるとスキルを連発して、

本気になってくる。ボスともなれば、それが顕著に

なってくる。

なので、攻撃魔法使いはラストスパートをかける。


そう、モンスターとの戦いはリズムが大切なのだ。

攻撃魔法使いの間では、自身を別名リズムメーカーと

呼称している人が多い。


このリズム、実は奥が深い。


まず、リズムが無いと、どんどん狩りのスピードが

天井知らずになっていき、それに釣られて極端に

集中力がましていき、視野狭窄になってめちゃくちゃ

疲れてしまう。ミスも起こりやすい。


そして、


聖魔法使いのルキャッザは、MP管理で、

MP回復の為に休んだりする。いつ休めばいいか、

狩りにリズムがあると、余裕を持って休める。


モンスターの釣り役のセレナオルオは、モンスターの

残り体力が3割を切ったら次に釣ってくるモンスター

の索敵の為、攻撃の手を休める。


バフ魔法使いのクルルイに至っては、味方パーティー

にかけた強化魔法の効果時間を管理する為、非常に

リズムが大事になってくる。

本人曰く、「おいおい、倒すのが早過ぎるよ?!」と、

心の中でツっこんだりすることがあるらしい。


このように、決まったリズムでモンスターを倒すのは

レベリングひいては、恒常的な戦闘の継続をする時、

後衛は、常に意識しておくのだが。


だが、脳筋には通じない。何度説き伏せようと

したことか…。


「ははは!漢は黙って全力よ!!」


とか、


「いや、掲示板に階層ごとのトップスコアがのるから、

 無理無理。」


などなど、焼け石に水なのが現状であって…。

こと、始末に負えないのは我の強い聖騎士のトーザ

である。


「カシス手を抜いてる?」

「いや?真面目にやってるよ?」

「でも、全然MP減ってないよな?」

「いや、これには訳があって。」

「なんの訳があるの?」

「(相変わらず棘があるなトーザは)

  リズムっていうか?」

「は?何言ってんの?今はレベリングなんだから、

 狩るスピード落としてまでする必要無いじゃん?

 全力出したらもう5割位スピード上げれると

 思うけど??ふざけてんの?」

「いや、あんまりスピード上げるとミスするって

 言うか?」

「普段から、そんなことしてるから、

 慣れてないんでしょ?」

「あ、いや、」


「(カシス!カシス!トーザ言い出したら

  聞かないからしょうがないよ…。)」

「(こうなったら仕方ないよ、言うこと聞いとこうか…

  はぁ…。)」

「(クルルイ?セレナオルオ?解ったよ…。)」


「解った。頑張るよ…。」

「もう、頼むよ。最初から頑張れよ。ほんと、

 頼むぞ?」


「まあ、モンクの俺に任せとけ!!」


モンクのレレオがトーザに同調してくる。

レレオはいい奴なのだが、頭の中も脳筋で、

ついついトーザに乗せられてしまうのが、

玉にキズだ。

なので、トーザ以外の僕を含めた皆は、モンクの

レレオとは距離をとってそれとなく仲良くならないように

している。

間接的にトーザと仲良くなってしまうからだ。

レレオ…あわれな男である。


「じゃあ、釣ってくるわ。」

「セレナオルオ。釣りのスピード上げていいからな?」

「ああ、分かったよ、トーザ。」


トーザは昔は棘のないいい奴だったんだが、

リーダーであること。

僕達のパーティーの冒険者ランクが

上がるに連れて、他のパーティーからのやっかみが

非道くなり、それがリーダーであるトーザに集中した

こと。

などなど、トーザ本人を責めれない理由がある。

他のパーティーメンバーもトーザを支えきれなかった

という負い目を感じていて、あまり強く言えないのだ。


____________


案の定、狩りが進むにつれて、ミスが出だして、

疲れてくる。

疲労の割には狩りのスピードも上がっていないし、

バフ魔法使いのクルルイのMP回復効果のある強化魔法

も途切れ途切れになってきている。

この、強化魔法はパーティーの生命線といっても

過言ではない。

僕はそろそろ頃合いだと思いつつ。


「そろそろ、終わろうか?トーザ?」

「ち!だいぶ疲れてきたな。仕方ない、

 皆!切り上げるぞ。」

「うーい。」

「オケ。」


____________


ところかわり 


「クルルイ?セレナオルオ?相談があるんだけど?」

「なに?カシス?」

「ん?」

「トーザのことなんだけど、このままほっとくと

 パーティーが破綻しちゃうと思うんだ。」

「…。」

「…。」

「トーザに問題があったなら仕方ないんだけど、

 周りの他のパーティーのヤツが、トーザに

 プレッシャーをかけまくったせいで、トーザが

 変に頑固になっちゃってると思うんだ。」

「うん。」

「それは解るよ。」

「でね、そんな周りのヤツらのせいで、

 僕達のパーティーが潰れるなんて、嫌だと思うんだ。」

「私も嫌。トーザのせいじゃないもん。」

「俺もそう思うな。」

「周りのヤツのせいでトーザがどんどん嫌な奴になって

 いっちゃう。第三者から見たらトーザだけに

 責任があるように見えてしまう。

 それが、たまらなく嫌なんだ、僕は。」

「どうするの?」

「…。」

「少し、調べたんだけどね?トーザが今、使ってる宿の

 隣の住民がろくでもない奴でペット禁止の宿なのに

 ペットを連れ込むは、一晩中ペットが吠えるわで、

 とにかく酷いらしい。宿主も見てみぬふり。

 最悪の環境に住んでる。」

「引くわぁ…。」

「引くな…。」

「僕は、周辺環境が人を形作ると思うんだ。

 このままじゃ、トーザは誰かと喧嘩を

 してしまって、犯罪に巻き込まれてしまうかも

 しれない。」

「うん。」

「…。」

「そうなったら、トーザは犯罪者だ。でも、

 そうじゃない…。隣のペットを持ち込む住人、

 見てみぬふりの宿主、こういう、トーザを

 不当に扱う奴らが本当の犯罪者だと思う。」

「…。」

「…。」

「だから、トーザにちゃんとした、不当では無い

 扱いを受けるチャンスを与えたい。」

「どうやって?」

「??」

「引っ越しさせる。」

「お金がいるよ?」

「そうだな。」

「クルルイ?セレナオルオ?頼む。1割でもいい、

 あとは僕が工面するから、お金を出してくれないか?」

「はぁ、カシスはお人好しね。ほら!」

「そんなこったろうと思ったよ。持ってけ。」

「??!いいの?」

「いいのもなにもねえ、セレナオルオ?」

「ああ、実は俺も知っていて、クルルイに相談

 してたんだ。」

「セレナオルオ!?」


___________


こうやって、トーザを無理矢理引っ越しさせて、

1年。


「あはは!ルキャッザは元気だな!」

「もう、トーザにはかなわないわ!」


ルキャッザとトーザが付き合いだして半年になる。


「トーザってあんなにイケメンだったのね?」

「ああ、顔付きがまるで変わったな。」

「隠れイケメンってやつかな?ちゃんとした

 環境に身を置いてない人は、普通の人付き合いを

 覚える機会を失って、どんどんコミュ障になって

 、顔付きもどんどん変わっちゃって、悪循環に

 ハマっちゃうからね。」


「?!そうだ!カシス!セレナオルオ!

 今度はアタシにして!!」

「クルルイはもう美人さんだよ。」

「そうそう、もう間に合ってるよ。」

「?!ま、まあ、いいわ、そういう事にしといて

 あげる。ふん!」

「ははは!!」

「あははは!!!」



自分の居場所を作る為に努力する。

今、努力をしておけば、何もしなくていい時間と空間が

生まれる。

楽ができる空間を作る為に努力する。


これが、僕の頑張り所


矛盾してるようだけど、時にはこういうのもアリだと

思う。いつもいつも、これじゃ、くたびれるケドね。


今日も僕達のパーティーは平和です。




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