月のマナ 太陽の湧力
美しい戦姫と狂化を既に読んでいる方は、
前半を飛ばして、
翌日のララルィーナ視点から読むといいかもです。
いつ見てもララルィーナは美しい。
顔が美しい女性がいる。一方、体が美しい女性がいる。
彼女、ララルィーナは両方を兼ね備えている。
脚と座高の長さが同じ長さで黄金比よりも均整の取れた見とれてしまうようなプロポーション。
華奢な肩。
人の下世話な噂にも左右されない、それでいて人当たりが優しく少し活発な性格。
これが、普段のララルィーナ。向日葵とも太陽とも形容できる。
一方、戦闘に入った彼女は戦姫と化す。
普段以上の活発な表情を顔にヘバリつかせて、パーティーメンバー全員を鼓舞し、
常に先陣を切り、狂ったように二刀流の純白の片手剣と利き手に持った禍々しい片手斧を
モンスターに叩きつける。そんな彼女を俺は同じパーティーで戦闘中にもかからわず、
ただただ眺めている。
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「属性狼か。」
「ウィンドウルフだね。あと、ファイアとアイス、アースだね。」
「こんな狼の編成なんて初めて見たかも。」
「やっぱ特殊だな、このダンジョンは。」
「まあ、LVが低いからゴリ押ししちゃおっか!」
「待って、クィールがアースを受け持って、ララルィーナは他の3体を。」
「うん!」
「分かった。」
「炎天の王よ!ララルィーナに反撃の炎を与えたまえ、フレイムフレイズ!
祝福の記憶よ!クィールの体力を徐々に回復したまえ、クリティカルヒール!」
「突っ込むよ!!クィール!」
「おう!」
合図と共にララルィーナが狼達の中央に陣取って、遅れること数瞬、タイミングをずらす
ようにクィールがアースウルフへ両手剣の重い一撃を入れ、ターゲットを一体受け持つ。
これで作戦は成功。第二段の作戦の維持に移行する。
「スクアッド?狼達のLVが低いから大丈夫と思うけどララルィーナが狂化しないように
クレイジーリフレシュを一回かけといて?」
「分かったよラル。」
ララルィーナの職業は吸収特化の暗黒騎士。盾役のタンクをこなす。
回復特化の聖騎士と比べて防御力は低いが、攻撃にモンスターの体力吸収を付加する
スキル、二刀流という圧倒的な手数、これらを合わせた自己回復で補うといった、
聖騎士とは違う意趣のあるタンクだ。
彼女の扱う武器。逆手の右手には純白の片手剣リヴェリア。稀に4回攻撃の特性が付いている。
利き手の左手には片手斧のカールマイン。両手斧に迫るほどの攻撃力を秘めている。
秘めているというのはどういうことかと言うと、普通の攻撃の時には片手斧並の攻撃力だが
必殺技スキルの時だけ両手斧に肉薄する攻撃力に跳ね上がる。
これを利用して、片手剣にはスラッシュオブキングという
2回必中の必殺技スキルがあるのだが、片手斧には必中ではないが4回攻撃のブージジョーク
という必殺技スキルがある。なので、リヴェリアで手数を稼ぎ、そしてブージジョークで両手斧並
のダメージを叩き出すという寸法だ。
必殺技スキルを放つにはSPが要る。SPはモンスターに一撃入れるごとに
回復していく。
なので、片手剣のリヴェリアでSPを稼ぎ、片手斧のカールマインでダメージを叩き出す。
しかも、暗黒騎士の吸収は必殺技スキルにも乗るので、モンスターにダメージを与えれば与える
程、永久機関と化す。
長々とした説明になったが、簡単に言ったら普通なら20〜30秒に一回必殺技スキルを撃てる
のだが、ララルィーナは10秒に一回撃てるのである。
しかも、盾役のタンクがだ。
このように、吸収特化の暗黒騎士は狂った職業なのである。
でも、デメリットが一つだけある。狂化と言って、戦闘中限定でクレイジーリフレシュの
魔法を貰わなければ、徐々に性格が歪んでいってしまう呪われた職業だ。
「くぁぁぁぁぁ!吹き飛べ吹き飛べぇぇぇ!!あははははっ!!!」
ララルィーナが雄叫びを上げる。そろそろ頃合いか、、。
「クレイジーリフレシュ!」
「あああああぁ?ぁ?ぁ?ぁーーー、、、、、ありがと!ラル!いよっしゃぁ!!
快調!快調!」
「(相変わらずこの変貌ぶりには慣れないなスクアッド)」
「(ああ、ラル。これも彼女だよ)」
「(??)」
「(彼女は普段は向日葵みたな日陰でいったら陽のあたるような性格だけど
自分のなかにある闘争本能に気付いてる。だから、こうやって発散することを
彼女自身強く臨んでるように見えるな)」
「(難しいことは分からんが、ララルィーナが自分で求めてるんなら口を挟むことでも
ないか、、、。)」
「(ああ。)」
_______________
「第5階層はトロール亜種か、、、。まだLVは低めだが攻撃力が高いから囲まれると
ヤバいな。1体1体プルしなが倒していこう。」
「私は平気だよ?」
「亜種だがら奴ら頭が回るんだよ。何してくるかわかったもんじやないから、念の為だ
ララルィーナ。」
「りょーーかい!」
「じゃあ、自分がプルしてくる。」
「まさせたぞクィール。」
_________________
「お?!クィールがプルしてきたぞ!って?!2体!」
グルァァァ!!
グガァァァァ!!
「すまん、ミスった!あはは、、、。」
「はぁ〜、いきなりか!?」
「ドンと来いよー!!!」
「ララルィーナもクィールも先頭のトロール亜種に集中!!」
「後ろは俺が止める!地の王よトロール亜種に楔という呪縛をシャドウゲート!!」
グラァァァ???!
「全力でいくよー!クィールッ!!」
「オーケー!」
「20秒で倒せ!!」
「ブージジョーク!!オラオラオラー!!!」
ぐぁがぁぁ!!?!
「1体撃破ーー!!次ー!!クィール!??」
「任せろ!!オラこっち向け!視線独占、ドッグラビット!!!」
ごぁぁぁ!!!
「あはは!っ?!何吠えてんだよっ!っっコラァァァッッッ!!」
「クレイジーリフレシュ!
ヒールクリティカル!!」
「(しかし、ララルィーナ、今日はやけにキレてるな、、、何かあったのか?ラル??)」
「(うーん、分からん。少し早目にクレイジーリフレシュを撃っといてくれ、スクアッド)」
「(ああ、わかった)」
彼女の中には何が燻っているんだろうか?
彼女の闘争本能をただただ眺めている俺だった。
________________
「ようやくボスのミスリルゴーレムか。」
「ミスリルゴーレムは部位破壊が有効だ。自分達から見て右、ミスリルゴーレムの左脚に
攻撃を集中してくれ。左脚を部位破壊できたら数瞬、気絶するからその時に頭を狙う。
以下これの繰り返しだ。」
「合点!!」
「オーケー。」
_____________
ゴゴゴゴゴゴッッ!!?
「気絶した!頭部集中!!」
「ラッキーチャーンス!」
「おりゃ、アイスフォール!!」
「クィールやるじゃーーーん!!」
「たまにはな!!!」
「私もそーれ!ブージジョークァァァ!!ぁぁぁぁ!!!」
「スクアッド!!?!」
「ああ!!クレイジーリフレシュ!」
「ぁぁぁぁぁぁ、、、!?スクアッド、サンキュ!バリバリいくよー!!!」
呪われた職業か、、、。暗黒騎士になる人はむしろ自分から呪われること求めてるんじゃないか。
ララルィーナを見ていたら、そう思えてくる。
いつでも皆の中心にいるララルィーナ。
向日葵のように明るい笑顔を誰にでも向けてくれるララルィーナ。
俺にはクレイジーリフレシュしか打てないが、せめて心をこめてクレイジーリフレシュを
ララルィーナにかけよう。心をこめる方がいいんだと思う。
そっちのほうがいいような気がするから。
_____________
翌日
ララルィーナ視点
庭にちぎれた小さな網の破片が落ちている。
なぜ?
どこから?
だれが?
またある日。
庭にまた変な物が落ちている。
今度は古びた泥だらけの靴の片方だけが。
ある日、気づいた。
「ああ、鳥か。」
鳥の仕業であると。
鳥が落としていくのだろう。
奇妙な脈絡のない感覚が納得へと変わっていく。
私は鳥が落としていったものを燃やす。
燃やしながら考える。
昨日のダンジョンでの戦闘のことを。
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「属性狼か。」
属性狼。敵だ。
そういえば、敵をライバル視する人がいる。
その一方、「味方がライバルだ」と言う人がいる。
私は敵をどう見ているんだろう?
私のライバルはどこにいるんだろう?
私は、そういうものを見失ってるから、
永遠と斧を振り続けているのかな?
「ウィンドウルフだね。あと、ファイアとアイス、アースだね。」
「こんな狼の編成なんて初めて見たかも。」
「やっぱ特殊だな、このダンジョンは。」
「まあ、LVが低いからゴリ押ししちゃおっか!」
「待って、クィールがアースを受け持って、ララルィーナは他の3体を。」
「うん!」
「分かった。」
「炎天の王よ!ララルィーナに反撃の炎を与えたまえ、フレイムフレイズ!
祝福の記憶よ!クィールの体力を徐々に回復したまえ、クリティカルヒール!」
「突っ込むよ!!クィール!」
「おう!」
合図と共に私が狼達の中央に陣取って、遅れること数瞬、タイミングをずらす
ようにクィールがアースウルフへ両手剣の重い一撃を入れ、ターゲットを一体受け持つ。
私の中の散れ散れになったものが集まっていく。
庭に鳥が落としていったもの。
奇妙で脈絡のない感覚が私の心の中を占めていく。
「くぁぁぁぁぁ!吹き飛べ吹き飛べぇぇぇ!!あははははっ!!!」
「クレイジーリフレシュ!」
「あああああぁ?ぁ?ぁ?ぁーーー、、、、、ありがと!ラル!いよっしゃぁ!!
快調!快調!」
もう少しで解ったのに。
庭の落とし物は、鳥の仕業だった。
じゃあ、私の心の中の奇妙で脈絡のない落とし物。
これらは何?
誰の仕業?
行ったらいけない方向なんだと思う。
手を伸ばしたら行けないんだと思う。
解らない方がいいんだと思う。
でも、私は知りたい。
今、何回目なんだろう?
それとも、何周目なんだろう?
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「第5階層はトロール亜種か、、、。まだLVは低めだが攻撃力が高いから囲まれると
ヤバいな。1体1体プルしなが倒していこう。」
「私は平気だよ?」
「亜種だがら奴ら頭が回るんだよ。何してくるかわかったもんじやないから、念の為だ
ララルィーナ。」
「りょーーかい!」
「じゃあ、自分がプルしてくる。」
「まさせたぞクィール。」
_________________
「お?!クィールがプルしてきたぞ!って?!2体!」
グルァァァ!!
グガァァァァ!!
「すまん、ミスった!あはは、、、。」
「はぁ〜、いきなりか!?」
「ドンと来いよー!!!」
「ララルィーナもクィールも先頭のトロール亜種に集中!!」
「後ろは俺が止める!地の王よトロール亜種に楔という呪縛をシャドウゲート!!」
グラァァァ???!
「全力でいくよー!クィールッ!!」
「オーケー!」
「20秒で倒せ!!」
「ブージジョーク!!オラオラオラー!!!」
ぐぁがぁぁ!!?!
「1体撃破ーー!!次ー!!クィール!??」
「任せろ!!オラこっち向け!視線独占、ドッグラビット!!!」
ごぁぁぁ!!!
「あはは!っ?!何吠えてんだよっ!っっコラァァァッッッ!!」
再び、奇妙で脈絡のない感覚がやってくる。
そこにいるのは、誰?
私の中に、落とし物をしていくのは誰?
それが、解れば、この奇妙で脈絡のない感覚が
晴れると思うんだ。
わたしは、その晴れた心が知りたい。
そうしたら、ずっと付きまとっていた、このモヤモヤが
スッキリすると思うんだ。
「クレイジーリフレシュ!
ヒールクリティカル!!」
私の中にある。闘争本能。
私を駆り立てるもの、、、、、。
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「ようやくボスのミスリルゴーレムか。」
「ミスリルゴーレムは部位破壊が有効だ。自分達から見て右、ミスリルゴーレムの左脚に
攻撃を集中してくれ。左脚を部位破壊できたら数瞬、気絶するからその時に頭を狙う。
以下これの繰り返しだ。」
「合点!!」
「オーケー。」
_____________
ゴゴゴゴゴゴッッ!!?
「気絶した!頭部集中!!」
「ラッキーチャーンス!」
「おりゃ、アイスフォール!!」
「クィールやるじゃーーーん!!」
「たまにはな!!!」
「私もそーれ!ブージジョークァァァ!!ぁぁぁぁ!!!」
私の中の奇妙で脈絡のない感覚が形になっていく。
そして、見つけた。
「?!?!?!、、、。」
それは、光っていた。ただただ神々しく
光っていた。
「(神様?なのですか?)」
その、瞬間気付いてしまった。
私の中に奇妙で脈絡のない感覚を落としていくのは、、。
神の仕業であると。
「いた?!見ーーぃーーつーーけーーたーー!!!?!
おあぁぁぁぁぁあーーー!!!
おァーまァーえェーかァーーーーーー?!?!?!」
「スクアッド!!?!」
「ああ!!クレイジーリフレシュ!」
私の中で、潮騒が引いていく。
「ぁぁぁぁぁぁ、、、!?スクアッド、サンキュ!バリバリいくよー!!!」
さっき私は、何を見たんだろう?
気のせいだったんだろうか?
後で、思い切って、スクアッドに打ち明けた。
スクアッドは私を気持ち悪がることもせず、
誠実に答えてくれた。
「ララルィーナ?こういう言葉を知ってるかい?
月のマナ(闇) 太陽の湧力(光)。
これはね、色々な解釈があると思うんだけど、
俺はこう思うんだ。
太陽から得た力はやがて自分の器を溢れだし
暴発する。
その過剰な力を月が抑えてくれるんだよ。
普通は闇が悪者だけど、実は太陽も曲者なんだよ。
ここからは、俺の考えなんだけど、
ララルィーナは闇を覗きこもうとしている。
でもそれは勘違いなんだ。実は太陽なんだよ。
だから、ララルィーナは月と勘違いして
太陽を覗きこもうとしているんだ。
だから、力が溢れて暴発しようとしているんだよ。
ちゃんと、月を見ようとしてごらん?そしたら、
落ち着くんじゃないかな?」
話は分からなかったけど、スクアッドの真っ直ぐな
瞳が、私の瞳に重なる時間が心地よかった。
私は理解する。
私の中に奇妙で脈絡のない感覚を落としていく者。
それが一体誰なのか?奇妙で脈絡のない問題。
その答えは解らなくていいんだと。
大切なのはスクアッドが今私にしてくれたこと。
大切なのはスクアッドが今私にくれた心の落ち着き。
問題自体が私には合っていなかったんだ。
解いたところで意味はない。ハッキリ解る。
解かんなくていいや!
今の私の顔をラルやクィールにも見てもらいたいな。
相変わらず、奇妙で脈絡のない感覚はあるけど、
私はそっちにもう二度と顔を向けないと誓った。




