すれ違う心、惹かれ合う心
例によって、只今、見切り発車中。
俺はヂート。準伝説武器を保有している冒険者だ。
先のダンジョンのイベントでの抽選クジで
当たった武器だ。
元々、準伝説武器を手に入れる前から冒険者組合の公認
のAランクのパーティーに所属しているのだが、
この武器を手に入れたことにより、Sランクを
狙えるようになってきた。
俺が、今組んでいるパーティーをSランクパーティー
に引き上げたい!これが俺の今の少なからずの野望だ。
しかし、そんなやる気とは裏腹にパーティーの俺という
アタッカーともう一人のアタッカーである、サリリアナ
との関係がギクシャクしてきた。サリリアナは俺の
恋人だ。が、しかし最近彼女は「私はあなたに
相応しくないんじゃないかな?」と、しきりに何度も
訴えて来るようになってきていた。
おそらく俺が準伝説武器を手に入れたことにより、
明確な実力差ができてしまった為だろう。
彼女なりの譲れないプライドがあるのだろう。
そんな俺は末っ子なので、兄姉の言うことを聞くのが
当たり前。人のプライドについてはなんとなく尊重
しないといけないのが解るが、
俺個人にはそんなプライドなんて無い。
だから、そういうのはぶっちゃけ分からない。
なんというか、二人の間に壁が出来てきて、心が
離れていっている自覚が俺にもある。
そんな、準伝説武具なのだが、不思議な現象がある。
近くにある、準伝説武具同士で、共鳴というか、
ほんの僅かに惹かれ合う現象が起きて、誰が準伝説武具
を持っているのかなんとなくわかるのだ。
ある日、王国に数あまた無数にある酒場のうちの一つに
俺は酒を一人で飲みに来ていた。
そしたら、例の準伝説武具同士が惹かれ合う現象が
起きた。
その準伝説武具の保持者は黒髪の女性だった。東方の国
を思わせる出で立ちで、向こうも俺が準伝説武具の保持者
だと気付き、いつの間にか馬があい、意気投合。
名前はトーコといって、「準伝説武具を持ってから、
色々変わったよな?」とか、話していくうちに仲良くなり
、何度かトーコと酒場で飲むようになると、サリリアナ
から心が離れていっているのを自覚していた。
そんな、ある日サリリアナから話があった。
「別れよっか、、」
俺はなんとなく悟っていたので焦らない。
「?準伝説武器が気になってるんだね。」
「、、、私じゃもう貴方に釣り合わないと思う、
それどころか足を引っ張ってしまうと思う、、」
「やっぱり気にしてたんだね。」
「そうよ!?私がなんて噂されてるか知ってる?!
もう耐えられないの!!私にだってね?!
意地があるのよ?!」
人のプライドというのはとても傲慢であり、
それと同時に繊細でもある。
今の彼女は俺にプライドを恥もなくさらけ
出している。
こういう時、変に遠慮して接してしまうと
余計に傷つけてしまう。
ちゃんと真正面から彼女のプライドを
受け止めないといけない。
「君が腕のある冒険者なのはパーティーの皆が
一番良くしってるさ。何度君に助けられたことか。」
事実、俺が準伝説武器を手に入れる前は彼女の
方がパーティーの中心にいた。
「ごめんなさい、貴方に当たるのはいけないって
解ってるのに。」
「やっぱり俺が君を追い越したのを気にしてるんだね。」
「ごめんなさい、貴方にこんなこと思うのは失礼なのに」
「君のプライドが許さない?」
「、、、ええ。」
正直に言ってくれた。
彼女は、遠慮がちに「失礼なのに」と言った。
人のプライドに対して遠慮するのはいけないが、
距離を取るのもいけない。
俺は出来るだけ、距離を感じさせないように言った。
「でも俺にもプライドがあるんだぜ?分かって
くれるかい?」
「ええ、、、ええ、ごめんなさい。今までずっと、
貴方を引っ張ってきたと思ってたから。」
彼女はどんどん遠慮がちになっていく。
意外かもしれないが、プライドの高い女性の中には、
こと、自分のこととなると凄く遠慮してしまう
女性がいる。
彼女もおそらくそんな女性なんだろう。
「いっぱい助けられたもんね。」
「うん。」
終始無言で二人ともいると、サリリアナが
ボソッと言った。
「やっぱり、別れよっか、、、。」
翌日、俺はパーティーを抜けた。
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数日後
俺はサリリアナと別れたことによってできた、
心の穴を埋めるためと言ったら変だが、気分転換に
トーコのパーティーにお邪魔していた。
彼女のパーティーは3名と言うこともあり、
空きがあったので参加することになった。
場所はモンスター生息域にある例のダンジョン。
どうやらタイムアタックらしい。
LV90のノーマルゴーレムが100体。
自分達のパーティー
○ ○ ○
○ ○ ○
ゴ1 ゴ1
ゴ2 ゴ2
ゴ3 ゴ3
・ ・ ×50列
・ ・
・ ・
・ ・
ゴ50 ゴ50
このように横に2列、縦に50列並んで、先頭の
ゴーレム1の2体が倒されたら、次の列のゴーレム2
が前へスイッチングしていって、それが50列
繰り返される。50列、計100体全てを倒す時間を
競うダンジョンエリアらしい。
因みに、最速クリアタイムはなんと15秒?!
しかも、その最速クリアタイムのパーティーメンバー
の欄に、ザスカ帝国の皇帝の名前があるのだが
、、、気のせいだろう。まさかな、、。
「こちら、ヂート!えーと、LV75の剣士で両手斧
使い!みんな、宜しくね!」
「どうも、ヂートです。パーティーに誘ってもらい
ありがとうございます。」
「やあ、宜しく。僕はヤーゴ。」
「ほうほう、これは・・・私はクラリアだよ。」
「えーと、ヤーゴは聖騎士LV80。
クラリアは聖魔法使いLV79。
一応、私は弓士でLV79ね。」
「ほっほーう、これはこれは。宜しくねヂート。
困ったことがあったら、何でも私に言ってね。」
「ちょっとクラリア?!くっつき過ぎよ!」
「ほっほーん、なるほどね〜。」
「何???」
「何でもー???」
「まあ、彼女達は置いといて、ヤーゴって呼んでくれ。
宜しく!ヂート。」
「はい、俺もヂートって呼んでください。」
よかった。どうやら歓迎されてない雰囲気は
ないし、無関心ってわけでもない。誘われたのに
そんなだったら悲劇だけだなく、凄くやりにくい
からな。
「じゃあ、挨拶もそこそこにダンジョンに入ろうか。
おーい、トーコもクラリアもそのへんにしといて、
ダンジョンに入るぞ!!」
「わかった。後で話をしましょうクラリア。」
「いーよー?後でね?」
「はあ、、、、じゃあ、入ろうか。」
ブーーーン
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ダンジョンへようこそ
このエリアはゴーレムを殲滅するタイムを
計るエリアになります
クリアタイムは上位10パーティーまで閲覧可能です
それではタイムアタックスタート 0:00:00
「皆、今回はクリアタイムは気にせずに自分達の
ペースでいこう。」
「えーと、やっぱり、ヤードとヂートがゴーレムを
1体づつ受け持って、クラリアが補助。私が
メインアタッカーかな?」
「それで大体いいと思うよ、トーコ。」
「ヂートにも期待してるよ?」
「ああ、ヤード。精一杯!やらせてもらうよ。」
____________
「ぜーりゃ!!オルガトスポ!!!」
ガガガガガガ!!
トーコの必殺技スキルが次々とゴーレムを
仕留めていく。今放った、オルガトスポ。
これは、弓の必殺技スキルで6倍撃の特性がある。
他の武器の必殺技スキルに比べても強力な必殺技スキル
だが、命中率に難があるので、少し扱いづらいスキルだ。
おそらくトーコもそれは分かっていて命中率を上げて
うっているだろう。
そんなトーコの弓は俺と同じく準伝説武器だ。
破連全の弓:敵パーティー(6体)全体に
稀に各々6回攻撃
必殺技スキルに命中補正(大)
つまり、1回矢を放ったら多い時で敵6体×6回攻撃の
計36回分のダメージを瞬時に叩き出す。
そして、一回攻撃するごとにSPは
回復していくのだが、彼女の弓は一撃で何十回分もの
SPを稼ぐので、雨あられのように必殺技スキルが
打ち放題だ。「一撃射っては必殺技スキル、一撃射っては
必殺技スキル」と、無双状態である。
そんな、彼女だが、俺も準伝説武器保持者である。
俺の準伝説武器は両手斧。
グノーバーブージ:敵パーティー全体に攻撃
必殺技スキルが敵パーティー全体に発動
必殺技スキルがクリティカルになる
グノーバーブージ専用必殺技スキル:トリオジョーク
3回攻撃
破連全の弓ほど、通常攻撃にインパクトは無いが
必殺技スキルが敵全体に乗る。
そして、必殺技スキルがクリティカルになる。
そう、必殺技スキルが凶悪なのだ。
「うおあーー!!トリオジョーク!!」
ガン!!ガン!!ガン!!!
トーコは敵一体を次々とオーバーキル。
俺は敵パーティーを10秒に一度、蒸発させていき、
あっという間にゴーレムを倒していった。
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「お疲れ様、まさか2分で終わるとは思ってなかったよ
、、、、。」
「ああヤード、凄くやりやすかったよ。」
俺の準伝説武器が凄いことは分かっていているので、
下手な謙遜はやめておいた。
「それで、皆ともう話し合ったんだが君さえよければ
僕たちのパーティーに入らないかい?」
「いいのか、まだ一回しかパーティーを組んないが?」
「ああ、強いて言うなら感触が良かったかな?
クラリアも懐いてるみたいだし。」
「そうか、、、それなら、俺からも頼むよ。この
パーティーに入れてくれ。」
「よかった。ふふふ、実は僕にはささやかな野望が
あってね。このパーティーでSSSクラスに
なることなんだよ。」
「それは、またなんとも夢がデカイ、、、。でも、
俺も丁度Sクラスになりたいと思ってたとこなんだよ。」
俺は前のパーティーのことを思い出す、、、。
叶わなかった夢。届かなかった人。すれ違って
離れていった心。
「ふふふ、その意気だよ。これからよろしく頼む!
ヂート。」
「よろしくな!ヤード。」
俺はヤードの野望に乗ってみることにした。




