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彼方世界とリヴァイバー  作者: 風降よさず
IV ストラの祭日
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第78話 察しが悪い

「リィルちゃん表情硬いね? どした? また照れてる――わけじゃななさそうね」

「べ、別にそんなこと……」

「初々しい感じならむしろもっと頂戴って感じなんだけどね? 疲れてるみたいだし、ちょっと休憩にしようか」


 結局その後、手掛かりになりそうなものは全く見つけられなかった。


 ライザのように直接仕掛けてきたわけでもない。

 回収できそうな隙もなかった。

 何より、一連の出来事としてつなげられるだけの何かがない。


 原因不明の体調不良と、先刻の不審者。

 ユッカやリィルが狙われたとしたら或いは間接的に俺をターゲットにしているとも考えられる。


 だが、トレスの住人を複数人巻き込むメリットは一体どこに……?


「(ちょっと、ほんとにいいの? こんなことしてて。約束は約束だけど説明して待ってもらうとかあるでしょ)」

「(気持ちは分かるが今は手掛かりがない。サーシャさんが言う調査の結果を待つしかないだろう?)」

「(あんな仲悪そうにしてたくせに……)」

「(それとこれとは別問題だ。わざわざいがみ合っても仕方がない)」

「(はいはい、いつものやつね)」


 少なくとも敵ではない。


 サーシャ・ロクアニク・ソーアリッジ。


 俺達の前に現れた人物が紛れもなくその人であることはルークさんとリットの二人の話から確証を得る事ができた。

 マユも僅かながら噂を聞いた事がある、と。


 戦闘員ではないというだけで、当然というかペンより重いものが持てないというわけでもないらしい。


 姉であり、現[ラジア・ノスト]のリーダー、ナターシャ・ロクアニク・ソーアリッジを敬愛してやまないとも。


 昨日の態度を見ていればそれは分かる。あんな減点理由が通るのならなんでもありだ。


「(それに今はできるだけリィルの近くにいたい)」

「…………ぁ?」


 何かあった時の対処も考えれば猶更。

 不審者の話は協会にも通しておいたから、向こうからの対応もじきに伝わる筈。


 レイスを通じて設置を頼んだ《小用鳥》からも今のところは――


「ばっ……!? ば、バカじゃないの? バっっっカじゃないの!!?!?」

「リィルちゃん!? どうしたの急に!?」


 問題発生。


 思わず耳を塞いでしまった。

 今の今まで小声で話をしていたから余計に響く。


「すまない、誤解させた。ここのところ妙な動きが多いから下手に分散しない方がいいと思って」

「ならちゃんとそう言いなさいよいつもみたいに! 何でもよりにもよってこんな時にぃ……っ!」

「よ、よりにもよって?」

「いや、その辺りは俺もさっぱり」


 あの気配、やはり勘違いなどではなかったらしい。

 リィルにどんな話をしたのやら。しかも俺から逃げるように。


(後で少しイリアに訊いて――いや、その必要はないか)


 急を要する事態なら何かの形でイリアが伝えてくれていただろう。

 何かしらの個人的な理由ならそれは俺が関与していいものでもない。


「とにかくリィルちゃん、一旦落ち着いて……勘違いだったみたいだし、ね?」

「……それはそれでムカつくわね」

「あ、あはは……確かに……ちゃんと聞きたいよね。そういうの」


 既知の相手から避けられるのが初めてというわけじゃない。

 特に、とても真っ当とは言えないようなやり方に手を出し始めて以降は。


 昔からの知り合いほど止めようとしてくれた。

 勿論そんな人ばかりというわけでもなかったが、まさかあいつがこんなどっちつかずの対応に出るとは。


「でもよかった。あのときはあんまりちゃんとお話できなかったし」

「わ、悪かったってば。もう大丈夫だから。……多分」

「なんかまだ不安そうだね……?」

「あんなこと言われたらそうもなるわよ。あんたも会ってみたら? どこにいるか分かんないけど」

「い、今じゃなくてもいいかなー、なんて……」

「でしょうね」


 思えば以前、支部長に教えてもらった洞窟に向かった時もそうだった。

 到着を待って向かう筈が、突然イリアから先に向かうよう言われたのだ。


 最後に会話したのはいつだっただろう。

 記憶にあるのは奴の元へ向かう間の事。だが、あの時もまともに言葉を交わしたとはとても――


「……キリハ? どうかした? やっぱりさっきの人が気になってるとか?」

「概ねそんなところだ。誰を狙ったのかも分からないとなるとさすがに手が回らない」

「えっと、そっちじゃなくて。リィルちゃんが言ってた占い師さん、キリハの知り合いかもしれないんだよね?」

「…………どこで分かった?」


 二人で話し込んでいるとばかり思っていたのだが。

 直接会ったわけではない。だが、他に思い当たる相手もいなかった。

 そしておそらく、あの時も。


「リィルちゃんが疑ってたのもあるけど……さっきのキリハの顔を見てたら、そうなのかなって」

「……気付かれたのなら仕方がないか。アイシャが言った通りだ。そんなに分かりやすい顔をしたつもりはなかったんだがな」

「分かるよ。いつも一緒にいるんだもん」


 またそんな言い方を。

 言い訳ができないのは分かっている。未だにアイシャの家に住まわせてもらっている時点で。


「ん? 三角関係?」

「困ったことに、それどころじゃないかもしれないのよね~」

「わぁお。モテモテねぇ。思い悩んだりしちゃってねぇ……若い頃を思い出すわー。アイナもじゃない?」

「私は逃がすつもりなんてなかったもの~」


 返しの一言に不穏な何かを感じてしまったのは俺の受け取り方の問題だろう。

 それより今は、赤くした顔を逸らすアイシャをどうにかしないと。


「ご、ごめんね二人とも。お母さんたちが……うぅ」

「別にあのくらい全然気にならないわよ」

「同じく。いいじゃないか。自分が生まれる以前の話なんて聞ける機会もそうそうない」


 もしも自分の両親がそんな話を始めたのならその時は即座に口を塞いで止めるだろうが。


「そこじゃないでしょあんたは。よかったわねぇ? あんなに言ってもらえて」

「何もそんな恨みがましい目を向けなくても」

「でもエルナレイさんと仲良さそうだったよね?」


 前言撤回。なんて反応に困る話題を振ってくれたんだあのお二方は。


「それに関してはむしろ俺が聞きたいくらいだ。本当に、どこから話を聞いたんだか」

「じゃあさっきの占い師の人は?」

「……アイシャも何故やたらと突っ込む?」

「あら、話せないわけ? いいじゃない。答えてくれても」


 挟み撃ちだと……


 完全に予想外。

 まさからあれもこれもあいつの手のひらの上などということは――十分にありそうだから困る。


「ほんとなんだったわけさっきの人。やたらこっちの考えてること当ててくるし真面目なのかふざけてるのか分かんないし、ほとんどからかわれっぱなしだったんだけど!?」

「それを今言われても。俺に分かるのは精々意図的に接触しただろうということくらいで他はさっぱり。お手上げだ」

「あたしの考えてることは当ててくるくせに……」


 いつもではない。断じて違う。

 そもそもリィルの反応が分かりやすいのもある。生憎そこまで察しのいい方ではない。

 それに。


「もし俺の考えている通りの人だとしても、故郷を発つ前からほとんどまともに話もしていない。さすがに無理だ」


 何よりあの一件をどう思っているのか分からない。

 敵意や憎しみを抱いてはいないと思いたいが、あそこまで勝手な行動を繰り返した後。

 不満どころでは済まされないのもまた事実。


「け、ケンカ?」

「そうじゃない。お互い忙しくて時間が取れなかっただけだ」

「だったら探しに行けばいいじゃない。あんた会いたくないの?」

「俺が近付くのを察知したように退散したんだろう? だったら今は止めておく」


 まず後れを取る事もないだろう。

 多少制限をかけているとは思うが、それこそあの迷宮の鎧に為す術もなくやられるなんて事は万に一つもあり得ない。


「は? それ本気?」

「い、いいの?」

「本人にそのつもりがないのに無理やり捕まえても仕方がない。邪魔をしたら悪いしな」


 何かしらの考えはある筈。俺には想像もつかないような何かが。


「「…………」」


 しかしアイシャとリィルはというと。


「ど、どうしたんだ二人揃って。そんな呆れたような……」

「別に。それならそれでいいんじゃない?」

「な、なんでもないよ? うん、ほんとに」


 占い師としてではなく、ありのままの本人に会えばその印象も変わるのだろうか?

 あの頃から大抵――


「――大変だキリハっ!!」


 しかし生憎、それを考えている場合ではなくなった。

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