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彼方世界とリヴァイバー  作者: 風降よさず
Ⅰ 目覚めるリヴァイバー
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第23話 決着

「――――!」


 強大な魔力の波動を感じたのは、放たれた光線の数が三桁を越えた後の事だった。


 町を越えたその場所で大地を抉る特大の水流。

 魔物の姿を呑み込みなお突き進む。揺らぐことなく真っ直ぐに。

 その中にはかつてアイシャを追い詰めようとしていたサイブルも少なからず混じっていた。

 やや大型のゴブリンも。それら全てが瞬く間に消えていく。


「……本当に一掃するとは」


 空を貫く閃光を《魔斬》で打ち消した時にはもう、渦巻く激流も収まった後だった。

 魔物の姿はもうない。その土地を少なからず削られた森に残された爪痕が破壊力を物語っている。


 決して疑っていたわけではない。

 あの目を向けられては疑える筈がない。

 未だに向けられる光線以上に真っ直ぐな瞳。

 その奥に宿った固い意志。

 危険だと分かっていても、投げ出そうとしないあの姿。


 自分で勝手に突っ走っただけの俺とは違う。それは分かっていた。

 だが、思い出してしまったのだ。遠い日々の俺自身を。

 見苦しくもあがき続けていた頃の俺は一体どうだっただろうかと。

 あんな無茶な真似に出るとは思えない。それでも、可能性を否定し切れなかった。


 だからこそ討伐を頼んだ。大部分を一掃できると確信を持てる状況で。

 あれだけの力を気軽に使える筈がない。それでいい。

 そういう意味であのタイミングでユッカと合流できたのは幸運以外の何物でもなかった。

 最終的に撃つとしても、度を越した緊張状態で撃つことはなくなる。


(あとは――)


 俺達の魔力から作り出された怪物のみ。

 俺も負けてはいられない。


 既に《魔斬》で光線を対消滅させる段階までは届いた。

 まぐれではなく、複数回。しかしそれはあくまで《魔斬》止まり。

 正真正銘、最後の一歩。ただ『斬る』だけで終わらない段階へ。


「《加速》」


 急降下し、迫る。

 一方で光線は地面を抉り、木々を蹴散らす。

 連射されようと今更当たる筈がない。何発撃たせたと思っている。


「っ……!」


 魔力の剣へイメージと共に魔力を集める。今度こそ、何度も繰り返したその姿を。

 同時に眠り呆けているそれを叩き起こす。

 知っている一方で身に覚えのない妨害をすり抜け引きずり出す。


(――いい加減に、起きろ寝坊助!)


 いつまでお休み気分でいるのだろうか。

 なにもいきなり最大稼働を要求したりはしない。

 だがそれでも最低限、このバケモノを消し去るだけの力を。


「――――《万断ばんだん》!!」


 万の敵を切り裂く刃を、今、この手に。






 戦いを終えて数時間。

 ユッカも交えたアイシャの家での夕食を終えた夜。

 意識を沈めた筈がたちまち幻想的な光景に包まれていた。


 ――ほら、私の言った通りだったでしょう?


「いきなり割り込んで言うことがそれか」


 ――割り込むなんて人聞きの悪い。ただ招き入れただけですよ?


「なら無言で強制的に引きずり込むんじゃない。……そもそも、お前が気にするのか? 外聞を」


 ――いえ、微塵も。それが何か?


「開き直るな。それで? 今日の用件は」


 ――慰労と、祝福を。今回時間をかけさせてしまった原因は私にもありますから。


「何故お前が責任を感じる必要があるんだ。あの魔法なしに倒せなかった俺の問題だろう。それに、お前が能力を封じようと思うようになったのは――」


 ――それ以上言う必要はありませんよ、桐葉。あなたなら私の答えも分かっている筈です。


「……意地を張るような事でもないだろうに」


 ――その言葉はそのままあなたに返しておきましょう。……まあ、あの様子を見るに過度の心配は不要のようですが。


「ああ、おかげさまで。本当に感謝している。ちなみに今回の結果、お前としてはどうなんだ?」


 ――概ね満足していますよ。周りに異性が増えているのは少々気に障りますが。


「……悪いが、お前の頼みでも聞けないからな」


 ――ええ、勿論。分かっています。発言を翻すようなら私も考え直していたところです。ただし、多少の埋め合わせは覚悟してもらいますよ?


「覚悟も何も最初からそのつもりだ」


 ――珍しい事もありますね。てっきり断るものだと。


「おい。どういう意味だそれ」


 ――冗談ですよ。そろそろ戻りなさい。あなたとて、休息が不要なわけではないんですから。


 意識が遠のく。

 変に気を遣って、空間の主はそれ以上何も言わずに俺を送り返した。






「――改めて、おつかれさまでしたっ!」


 ユッカの掛け声に合わせ、乾杯。無論中身は酒ではない。


 激闘からおよそ一日。

 その後の調査により魔物の全滅が確認され、町全体も少しずつ本来の姿を取り戻しつつあった。


「ユッカちゃんもお疲れさま。ありがとね。森の中に隠れてたゴブリンを倒してくれて」

「たいしたことないですよあのくらい。アイシャが派手にこう、ドカーン! ってやってくれたおかげなんですから」

「あ、あのときの魔法ってそんな感じだったっけ……? でも、助かったのは本当だよ。撃ったばっかりで本当に危なかったし……」

「あれだけの威力を制御したんだから無理もない。本当にお疲れ様」


 真正面に向けて、一匹も残すことなく。


「そうは言いますけどキリハさん、普通にやりそうですよね。ああいう感じのこと」

「色々と台無しになるようなことを言うんじゃない」

「ほんとのことじゃないですか」

「あの魔法強化もキリハが用意してくれたものだもんね」


 他にどうしろと。

 それこそ町全体を防壁で覆う、なんて方法しか残らない。その結果なにを言われるかと言えば……


「それに、聞きましたよ? 森の怪物の光線を途中から消してたって。意味がわからないんですけど」

「何を言う。同じくらいの威力の魔法をぶつけて相殺しただけだ」

「そこです。そこがおかしいって言ってるんです」

「やったのは本当なんだね……」


 微妙に解せない。

 誰でもできるとは思っていない。

 そんな滅茶苦茶を言い出した時には遠慮なく言ってもらって構わないが。


「折角の祝勝会だ。わざわざそんな話をしなくてもいいじゃないか」

「そうそう、みんな今回の件の功労者なんだし楽しくやってりゃいいんだよ」

「……なんで混じって来るの?」

「怖っ。ちょっとキリハ助けて。怖い。アイシャちゃん滅茶苦茶怖い」

「すまない。さすがに俺も打つ手がない」


 そんな敵視までしなくても。

 元を辿れば責任は未だに顔を見た事もない支部長にあると言ってもいい。

 だが元凶の姿がない上に、直接仕掛けてきたのはリットだという事実は変わらない。結果がこれだ。

 俺とリットの間では軽く流せる話でもアイシャの中で整理がつくにはまだ時間がかかるだろう。


「それよりルークさん達の容体は? その話もあって来たんじゃないのか」

「ん、概ね良好ってとこだ。すぐに目覚ましてまた仕事に戻るだろ」

「こんな事件の後くらいしっかり休んでもいいだろうに」

「同感。まあでも一人減るし仕方ないっちゃ仕方ないかもな」


 そんな置き土産は欲しくもなかった。

 ライザが抜けた……もっと言えば、捕縛された影響は決して小さなものではなかった。


 しかも事情聴取その他、張本人に時間を取られる。

 挙句の果てには『口を割るまで爪でも剥いでみたらいい』だの何だの言い出す始末。

 かといって魔法を使った自白では証拠としての能力はない。一度使おうとして大慌てでガルムさん達に止められた。


「心配しなくても数日経てばなんとかなるって。依頼とかの発行がいつも通りにならなくても、そもそも魔物がいないしさ」

「しばらくは素材取り合戦か」

「だめですよキリハさん。一人でまとめて集めたりしたら」

「言ってない。誰もそんな事をするなんて一言も言ってない。やるつもりもない」

「できないって言わないのがまたお前らしいな」


 採取の依頼は常設されている。

 新たに発行する必要がなく、今回の騒動で最も影響が小さい。人が集まるのも当然だろう。


「ま、三人――じゃなくて二人は疲れもあるだろうし無理しない方がいいだろ。今回の件の報酬もあるしさ」

「待った。今わざわざ省いた一人が誰なのか教えてもらおうか」

「おっと仕事が。んじゃまた!」


 ち、逃げたか。

 考えるまでもない。俺のことだ。

 人を何だと思っているのか。確かに戦闘の疲労は回復しているが。


「で、なんでしたっけ。キリハさんの魔法の威力?」

「戻すな戻すな。もういいだろうその話は」

「でも本当にすごいよね。一回もストラに当てさせなかったんでしょ?」

「そうでもない。町に向けさせなかった分、森に被害を出してしまった」

「あ、そういえば私も……ああいうのってどうなるのかな? 弁償?」


 まさか。

 いくらなんでもそれはない。そもそも何をどう弁償しろと。


「さすがにないですよ。あんなことになってたんですから。そもそも森が吹っ飛ぶなんて普通ないですし」

「あっても多少注意されるだけだろう。俺みたいに誓約書を書かされるような事はないんじゃないか。さすがに」

「せ、誓約書? なんで?」

「……あの、もしかして」

「多分正解だ。空から侵入できるなんて警備隊にとっては要注意人物にしかならない」


 外壁がほぼ無意味と化してしまう。対応にこれと言った不満はない。

 ある程度の対策は取っているだろうが完全には防げないのだろう。まさか物理的に蓋をするわけにもいかない。


「なんか、納得いかないんだけど……おかしくない? キリハは町を守ろうとしてただけなのに」

「むしろ好都合だ。あのタイミングだったからこの程度で済んだと考えれば猶更」

「本気で魔法で飛ぼうとする人なんてまずいませんからね。普通はその時間で他の攻撃魔法覚えません?」

「それはそれ、これはこれ。もちろん攻撃に限らずそれなりの種類は使えるつもりだ」

「それなり。はぁ。あんなに色々使っておいて」


 色々と言われる程ではない。

 この世界に渡って以来使った魔法の種類も数が知れている。


「なにかわたしにも使えそうな魔法とかないんですか? 別にキリハさんの真似がしたいとかじゃなくて」

「いいのか? こんなところで権利を一つ使ったりして」

「……う……も、ものによっては」

「冗談だから本気で悩まないでくれ」


 扱う魔法の大部分は誰かから教わったもの。自分の魔法も含め、そんな形で出し渋るつもりはない。

 問題はその種類。今のユッカにあった物でないと折角の時間を最悪無駄にしてしまう。


「なら、《硬化》は? 攻撃を受ける直前に局所的に強化してやれば無理に盾を装備する以上の防御力も手に入れられる」

「……はい? ごめんなさい、今なんて?」

「だから、瞬間的に一点の防御を高められる。場合によっては攻撃にも使えないこともない」

「さらっと言うことじゃないですよね!?」

「大袈裟に説明するものでもないだろう」


 最初の内には全体的な《硬化》でもいい。それか、別の何か。


「アイシャも何か言ってくださいっ。このままとんでもない訓練とかさすがに無理ですよわたしも!」

「え、キリハに訊いたらこうなるって分かってたんじゃないの?」

「それはそうですけど!」

「こら」


 躊躇いなく肯定するんじゃない。


 言い分自体は分からないこともない。今までのユッカの反応を見ていれば。

 しかしまさかアイシャにあそこまでストレートに言われるとは……気を付けよう。


 この世界での生活はまだ始まったばかり。


 これからも続いていくのだから。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最終行の「これからも長いていくものなのだから。」という一文の意味が分からない。「続いていく」の誤り?
2023/03/17 15:59 退会済み
管理
[良い点] Twitterではお世話になっております。 第一章、読ませていただきました。 面白かったです! 手に汗握る戦闘シーン、緻密に張られた伏線… 物語に引き込まれました。 キリハとアイシャの…
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