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66話 フレーム単位の理解。


 66話 フレーム単位の理解。


「ようやく5000周目のはじまり。ここから、また一段と、過酷になっていくわけだが……はたして、我らのセンさんは耐えられるかね」


「さすがに折れるんじゃないかなっ♪ さすがのセンさんでも、もうそろそろ限界だと思うよっ♪ いくら稀代の英雄でも、さすがに、そろそろ無理がたたって壊れちゃうと思うねっ♪」


「お、じゃあ、賭けるか? 俺は、折れない方に賭ける」


「じゃあ、ボクちゃんは、折れる方に、どーんと、1ペリカ賭けるよっ♪」


「いっさい賭ける気がねぇ金額だな」


 そうつぶやいてから、

 マザコン熾天使は、煽り厨の殺神に視線を向けて、


「あんたはどう思う?」


 聞かれた煽り厨は、

 即答で、


「センエースは折れないよ」


 と言い放つ。


「……なんで、そう言い切れる?」


「センエースが折れないというより、センエースの裏閃流は、そう簡単に折れないと、俺は知っている、って感じかな」


「だから、その理由は?」


「俺は間違いなく一般人だけど、少しだけ壊れた部分があって、それは、繰り返すことができるという『欠損』だ。俺は、『殺神拳』という武術を、繰り返すことで磨いた。アホウのように、自分に使える時間の全部を賭して磨き上げていった。一時期、狂ったように、包丁を研ぐことだけに必死になっていた時期もあったけど、あの時期以外の人生の、ほぼ全てを、俺は、殺神拳の研鑽に費やした」


 繰り返した。

 ただひたすらに。


 コマンドを入力し続けた時期と、

 実際に拳を振るい続けた時期。


 どちらにも共通しているのは、

 イカレたように『繰り返し続けた』ということ。


 フレーム単位の理解を求めて、

 彼は、自分の命を殺神拳にささげた。


 その狂気の『強さ』を、彼は知っている。

 だから、


「センエースが積み重ねてきた『質量』は、俺が積んできたものを遥かに超えている。俺の10倍、100万倍、1000億倍。だから、負けるわけがない。いや、負けるわけがないと思いたい。結局のところは、それだけの話だよ」


 まっすぐにセンを見据えて、そうつぶやいた煽り厨。


 その、あまりにもまっすぐな目を見たマザコン熾天使は、


「……そんな目ができる一般人は存在しねぇ」


 ボソっと、そうつぶやいた。




 ★




 ――目が覚めた時、

 センは、バキバキの違和感を覚えた。


 これまで、5000回も繰り返してきたから、

 ほんの小さな変化でも見逃すことなく受け止められる。


 そんな、タイムリープソムリエになったセンの前に、

 今回、差し出されたのは、ワインですらなかった。



「え、どこ……ここ……」



 そこは、知らない部屋だった。

 似たような感じではあるのだが、

 明らかに違う部屋。


 整頓のされ具合と、簡素さと、所有している娯楽物の系統は同じ。

 ただ、間取りが明らかに変わっている。


 『同じ人間が、別の部屋に引っ越した』。

 と表現するのが、おそらく、最も適切。


 そんな状況下で、

 センは、


「……図虚空はある……銀の鍵も……」


 図虚空を召喚することができた。

 勉強机の上に、銀の鍵もある。


 引継ぎ要素をあらかた確認しおえたところで、


「……で、ヨグシャドーよ。これは、どういう状態だ?」


 と、おそらく理由を知っているであろう、

 図虚空の中にいる神の影に尋ねる。


 すると、


「銀の鍵は、すべてがすべて、完全な逸品ではない。中には、バグったゴミが混じっていることもあるさ」


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