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3話 華やかな美少女たち。


 3話 華やかな美少女たち。


 センは、自分の教室に入ってすぐ、窓際の後ろに視線を向けた。

 そこでは、とびっきり派手で華やかな『三人組』が井戸端会議をしていた。



「ミレー、珍しいなぁ。あんたが遅刻してへんとか、どんな奇跡?」

「トコ。私は生まれてこの方、遅刻なんてしたことないわ」



 赤富士が施された京扇子で口元を隠し、尊大な態度でふんぞり返っている赤髪ロングの長身美少女『紅院くれないん美麗みれい』。

 そして、そんな紅院に辟易している金髪ツインテールの小柄な超美少女『薬宮くすりのみやトコ』。


 紅院は、キリっとした釣り目が特徴的な、いわゆるキツネ顔のキツい美人。

 『とんでもない小顔』で『完璧なモデル体形』と見た目は完璧だが、いかんせん、天上天下唯我独尊の『スーパー金持ちオーラ』が濃厚すぎるため、周囲の男で、彼女に近づこうとする者は皆無。


 そんな紅院よりも、さらに『面倒くさそうな美少女感』で包まれているのが薬宮トコだった。

 身長は152センチと小柄で、顔つきも、いわゆる子犬顔で非常に愛らしいのだが、いつ如何なる時でも強めに放出されている『不機嫌オーラ』が、彼女の小動物的な愛らしさを完全に封殺している。



 ――そんな紅院とトコの会話を、すぐ隣で聞いていた、二人の数少ない友人である『黒木くろき学美まなみ』がボソっと、


「美麗さん。どの口が言っているのですか。あなた、中学の時、『紅院が遅刻しない日はヤリがホールインワンする』とまで言われていたほどのクソ遅刻魔じゃないですか」


 黒木マナミは、紅院とトコには劣るものの、

 非常に整った顔立ちをしているクールビューティー。


 黒髪のポニーテールで、黒ブチのメガネをかけている、利発的な美少女。

 学力全国トップクラスの才女であり、かつ、世界的に有名な超巨大病院を経営している理事長兼超名医の一人娘という事もあって、その近づき難さは、ある意味でトコ達以上の美少女。


 そんな黒木の発言を受けた紅院は、ドンと尊大に胸を張り、


「学美、よく聞きなさい。この世は金が全てよ。皆勤賞だって金で買える。そう! それがこの世界の真理なの!」


 深紅のパッツン前髪を指でなぞりながら高らかに宣言する彼女の顔を横目に、

 トコは、呆れ顔で、ぽりぽりと頬をかきながら、


「ほんまに金の力を使ぉて、遅刻回数をゼロにして皆勤賞もらうアホは、この世であんたくらいやと思うで」


 トコの、柔らかな金に輝くツインテールがヘニャリと垂れた。


「卒業式にも思いっきり遅刻してきたくせに、ちゃっかり皆勤賞もらっとる姿を見た時は、普通に爆笑してもうたわ」


「卒業式だっていうのに、みんな、笑っていましたよね。教師全員が浮かべていた『もう好きにしてくれ』って感じの苦笑いは今でも鮮明に覚えています」


 呆れ顔の二人に対し、紅院は、さらにフンスとふんぞり返って、

 雅な扇子を無意味にバサっと翻しながら、


「ふっ、世界が私に嫉妬する。賛美の声は聞き飽きたわ」


「誰も褒めてへん」




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