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76話 双子の神格。


 76話 双子の神格。


「どこかの扉が、外につながっている……はず……」


 もちろん確信はないのだが、

 『出口などなく、死ぬまで、永遠に、この何もない立方体だらけの空間を彷徨い続ける』

 などとは考えたくないし、

 『それ』を想定したところでメリットなどないので、

 『出口はあるはず』と頭の中で設定した上で、

 紅院は行動を起こす。


「自分の位置を正確に把握すること……すべての扉を開けていくこと……結局は、それを徹底した方が早い……多分」


 結論づけると、

 紅院は、自分が今いる空間を『1・1』と名付け、

 頭の中で、将棋盤をイメージし、勝手に『現在地は、将棋盤でいうところの『1・1(右上のハシ)』である』と認識して、『1・2』へと向かう。


 ちなみに、その途中で、トランスフォームは解除した。

 『突発的な事故に備えて常時変身していたい』、

 というのが『本音』……というか『理想』なのだが、

 変身中は、魔力消費量が大幅に増えるので、

 そういうわけにもいかない。


「何もない空間……本当に何もないか……確認……」


 ブツブツとつぶやきつつ、

 紅院は、何か『ヒント』がないか視線をさまよわせつつ、

 『1・3』へと向かっていく。


「……ここは『1・3』……」


 頭の中だけではなく、

 口に出すことで、

 脳に『現在地の情報』を刻み込みつつ、


「特に目立ったヒントらしきもの……なし……まったく同じ構造の空間……頭おかしくなりそう……」


 ため息交じりにそう言いながら、

 紅院は、何もない空間を駆け抜けて、

 次々と扉を開けていく。


 そうやって、『1・7』まで来たところで、


「……ん?」


 ようやく、『それまでとは違う空気感』を感じて、

 ガッツリと警戒しつつ立ち止まり、周囲を観察。


 ――その数秒後、

 空間のど真ん中に、ジオメトリが出現し、

 その奥から、



「……ぷはぁ」



 『ロイガーの色違い』みたいなムキムキの化け物が登場した。

 形状はほぼほぼ同じで、

 色だけが、ロイガーよりも『わずかに青っぽい』といった印象。


 『色違いロイガー』は、紅院を視界に収めると、


「……よぉ、お嬢さん、こんにちわ」


 ロイガーよりわずかに高い声で、そう声をかけてきた。

 紅院は、警戒心をさらに上昇させつつも、


「……こんにちは……」


 と、丁寧にあいさつをかえす。


 そんな紅院に対し、

 『ロイガーの色違い』は、

 ニィと微笑みながら、


「まずは、自己紹介といこうか。私はゼノ・ツァールという。貴様ら神話狩りに殺されたロイガーとは双子の関係にある。どちらが兄かは聞かないでくれ。その辺は、繊細な問題なんでね」


「なぜ、私たちが、ロイガーを殺したことを――」


「知っているのかって? そこは大した問題ではない。スルーしておいてくれ」


 サラっと流してから、


「それよりも、聞かなければいけない問題があるだろう? 私は、君たちに殺された神格の双子だぞ?」



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