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29話 基本的には正確な茶柱罪華のモノサシ。


 29話 基本的には正確な茶柱罪華のモノサシ。


「……『気持ちのいい勝利』以外に興味がない『勝てる相手』にだけ挑む凡人……」


 罪華は、自分のモノサシでしか『人間』を、はかれない。

 そのモノサシが完全にズレているのであれば、

 『ただの勘違い女』と処理もできるが、

 しかし、彼女のモノサシは、意外と高いと言う点が、

 なによりも厄介な点である。


「もちろん、私は、救いのヒーローなんて偶像を求めてなんかいないし、そもそも別に、助けてほしいなんて思っていないけれど……事実として、あいつは『あたしの無様な本音』を聞いていながら……けれど、『だから同情して手を貸そう』などとは、一ミリたりとも思わなかった……別に、それに対して文句を言う気はない。人間はそういうものだ。私は、それを知っている」


 罪華は語る。

 とうとうと、とつとつと、


「でも、ユウキは違った……引きちぎれそうな痛みの中で……それでも、あの子は、私の気持ちを慮って、笑ってみせた。絶望の底にいながら、私の感情を優先させた。……正直、気持ちが悪いと思った。『人間じゃない』と思った。壊れていると思った。狂っていると思った。……けど……」


「けど?」


「……救いたいと……思った……そんなことを思う資格がないのは分かっている。あんたが言うとおり、私はサイコパスだ。人の心がない。わかっている……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!」


 さらけ出す。

 これ以上ないほど。


 茶柱罪華は――『茶柱罪華』をさらけ出す。


「……でも、救いたいと思うぐらい……許してよ……その子を……もう……これ以上……苦しめないで……」


 命を吐くように、

 懇願をこぼす。


 その姿を見て、

 ウムルは、


「許しを請う必要はない。この私も決して『偶像』ではない。本物の神は、人の過ちに興味など示さない。『金を出して懺悔ざんげすれば、免罪符が手に入る』など……そんなワケがないのだ」


「……」


「私は、ただ『私の成すべき事』を果たすのみ」


 そう言いながら、

 黒い炎で包まれた右腕を、

 思念の中へともぐりこませる。


「あああああああああああああああああああああっっ!!」


 悲痛の声が響き渡る。

 その声は、ツミカの奥底をグチャグチャにする。


 ツミカは、


「っ!」


 再度、剣を掴み、


「やめろっつってるだろぉおおおおお!!」


 喉がブチ切れるほど叫びながら、

 特攻を決めるが、


「もう、貴様の演技に付き合う気は毛頭ない」


 そう言って、

 ウムルは、残っている腕を横に薙ぐ。


 すると、その風圧だけで、

 ツミカの体は吹っ飛んでいった。


「言っておくが、私がその気になれば、貴様など100人いても瞬殺できる。今、貴様が生きているのは、私の殺意が向いていないから。それだけ。それ以外の理由はない」


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