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25話 貴様の望みは理解した。


 25話 貴様の望みは理解した。


「終わっているだけじゃなくて、美しいところもあるんだって、思えた……」


「……」


「わからない……正直、自分の気持ち、なんにも……あの子のこと、あたしは、愛していたと思うけど、変に憎んでもいたし、普通に鬱陶しいとも思っていた。『いい子ぶるなよ、ウザいなぁ、この手で殺してやろうか』って、そんな風に思ったこともある……だから、あの子が死んだ時『清々した』っていう感情も確かにあった……けど、それだけじゃない何かも確かにあったんだ……」


「……」


「頭の中、グチャグチャになって、何かに当たりたくなって……そんな時、トコが『会社の力不足』を謝ってきた……『自分の会社がもっと、マシな薬を作れたら』って、頭を下げてきた……」


「……」


「トコのせいじゃないのは分かっている。私はバカじゃない……いや、バカだった。知っている。それも、全部知ってる……私はバカだから、頭がカーっとなって、気付いたら、トコに呪いをかけていた」


「……」


「いちばんやさしい子に……思いっきり当たり散らすことで……あたしは、あたしを保っていた……」


 それまで、黙ってきいていたセンは、

 そこで、


「ぁあ……うん……」


 言葉を選びながら、


「なんとなく、わからんでもない……その気持ち……本当に、なんとなくだけど……少なくとも、何一つわからないワケじゃない……」


「うそつけ」


「いや、マジで、その……もちろん完全には分からんぞ? 同じ状況になったことがないからな。それは当然の話だ。けど……そうなってしまう『感情の暴走』は、俺にも、ありえる気がするというか……」


「うるさい。もういい、しゃべらないで。あんたの感想とか、別に聞いてないし。つぅか、勝手に話しかけてくるな、キショイっつってんじゃん」


「……」


「話はもういいでしょ。ウムル=ラト、さっさと私を殺してよ。もう、こんな世界で生きていたくない。もう、命にはウンザリ。全部が全部、気色悪いんだよぉ!」


 本音が乱れ飛ぶ。

 彼女が抱えている闇は、

 一般人に想像できる範疇にない。


 ――彼女の闇を受け止めたウムルは、

 ゆっくり、二度ほど、首を縦にふると、


「貴様の望みは理解した。神として、貴様の想いに応えよう」


 そう言いながら、

 胸の前で両手を合わせる。


 そして、


「~~~~~~~~~~」


 人の耳では聞き取れない呪文を口にすると、

 ゆっくりと、両手を開き、


「――チャバシラユウキ――」


 最後に、そうつぶやいた。

 すると、

 ウムルの目の前に、一枚の紙が出現した。


 宙に浮いているその紙を、

 ウムルは、迷わず、荘厳な炎で燃やす。


 紙は、数秒で灰になる。


 地に落ちた灰は、

 チラチラと揺らめいて、淡い光を放っている。


 その光は、やがて、結集して、いつしか、

 実体のないユラユラしている影をつくりだした。


 その影は、揺らめきながら、黒い涙を流している。



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