お茶会にカチ込みする件
「…殿下、ティナに何かありましたら相手を殺してしまっても構いませんぞ!
その時は我が公爵家が全力で後ろ盾となり、文句を言ってくる輩は一匹残らず潰しますのでな!!」
「了解しました!!」
「…いい加減にしなさーい!!」
ゴンっ!!!
いでええええぇ!!!!!
お義母様怖えぇ!!
いくら公爵夫人とはいえ子供の王族の脳天本気で殴りますかねぇ?!
隣でお義父様も頭押さえて蹲ってるぞい
やあ。
エルグランドだよ
本日は公爵の王都のタウンハウスに来ています。そして宰相閣下と盛り上がってたらまとめて一緒に金髪紫眼の極上美人さんに本気の拳骨もらいました
アゲーラお義母様です。
キリッとしたお顔立ちに艶やかな色気、6歳の娘さんが居るとは思えない若々しさ。社交界の影響力はアリネーラ様と双璧を成し、あらゆる貴族令嬢の憧れの女性である
また美貌だけでなく知能も高い切れ者で、最近までトラブル対応で領地に行っておられたので本日遅ればせながら対面のご挨拶をした。しっかしアリネーラ様と同様天は二物も三物も与えたようである。世の中不公平やでぇ
母上?
あの人はあの人で人気あるんだよな。癒し系マスコットとしてだがなww
特に最近はアリネーラ様との対立の構図が消えたので王妃と側妃の美しい友情が社交界に穏やかな雰囲気をもたらしている
さてさて。
本日はティナと俺の初のお茶会ゲストの日なので俺はお迎えに来たというわけだ。婚約発表のお茶会はもちろん俺らはホスト側だったからな
まとも?な王子の俺から言わせて貰えば、婚約者をエスコートせずに身の程知らずのクソ雌ドブネズミを伴って舞踏会に行く王子には王族としての資格以前に生きている資格がない。即刻服毒自決せよ
そしてなぜ俺とお義父様がこんなに息巻いているのかというと、招待状を送ってきた家があまり仲良くしたくない家だからだ
イヴィンシブル公爵家
高位貴族ながら、権力欲が無くリベラルに近い思想を持つ偽善者一族といったところか。領民の人気は高いが社交界では遠巻きにされてる家だ
そして俺達と同い年の令嬢が居るときたもんだ…明らかに害虫の親友枠な気がする
因みに、アンタレス公爵家も身分制度自体はかなり緩い。今恐らくティナを磨きまくっているであろう専属侍女のソフィーさんは男爵令嬢だけどティナとは姉妹みたいな関係だし、俺に対してもフランクだ。侍女達はみんなティナを溺愛しており、ティナも彼女達が大好きで心を開いている
使用人とお義父様お義母様も気さくな関係だし領民からも熱狂的な支持を受けている…というかカルト一歩手前?な気もする。俺がざまぁされる地盤だよなぁ
公爵一家の領民からの慕われっぷりは、仮にクソみたいな王子が御令嬢を傷付けたなんてことになったら八百屋も花屋も肉屋も女子供も凶器を持って王都に押しかけ、人海戦術や自爆攻撃で王族を皆殺しにするまで止まらなそうな感じである。まあいいことだな!!
さて、両家の違いは何か
イヴィンシブル公爵家がお花畑な偽善者なのに対してアンタレス公爵家はマフィアというわけだ。前世の海外の、警察とも対等以上に渡り合う本格的なギャングとかに近い側面もあるな
社会的な立場、つまり身分よりファミリーか否か、身内か否かかを重視する。
逆に言えば身分が対等だろうが敵と定めた他人は徹底的に見下し、排除する。
現在は宰相を当主が兼任しているが、歴史を辿れば武勲で今の地位を築いた武闘派の家なのだ
もともと封建制の領主というのはヤクザと地方自治体が合体したようなものだからなぶっちゃけ
「…エル様!…お、お待たせしました…」
「……やあティナ。とても似合ってるよ!まるで妖精みたいだ」
「エル様、鼻血」
「あ、あう…ありがとうございます」
「殿下、鼻血どうにかしましょう」
もじもじしているティナが可愛すぎる!!
今日のティナはワンピースタイプの、スミレ色から少し濃い紫の綺麗なグラデーションのふんわりとしたデザインのシンプルなドレスで、胸元には同じ布で作られた真珠を散りばめた可愛らしい薔薇の飾りが2つ、センス良く配置されている
そしてお互いの専属侍女であるマリアとフィリーネは俺の鼻血に呆れている
それでもそっとハンカチ(綿の質素なやつ)を差し出してくるマリアはデキる侍女である
「では、お手を」
「…は、はい!」
どうしても気恥ずかしくてスマートなエスコートにならないんだが、あまり格式ばらないほうがティナがリラックスして自然な笑顔が出るので、お義母様からも今のままでいいとお許しを頂いている
さて、敵地に乗り込むか