恐らくこれから色々と大変な件
「すまない、この場を預からせて頂いてもよいだろうか?」
「はっ!はひっ!大丈夫です!」
…小物過ぎて笑える。俺たちが即興で用意したシナリオだと知らずに兄上をキラキラした瞳で拝んでるわ〜
恐ろしい第二王子と、優しい王太子。
つまり脅しとスカし
こんなにわかりやすい、日本で闇金やヤクザが使い古した手法であっという間に調教完了するいい大人…学園にどっぷり浸かって貴族の腹踊りを忘れ、平和ボケしたせいだろ…いい歳こいた大人がこんな初歩テクニックで簡単にコマせるとかやべぇぞ…
※エルグランドがそう思っているだけで、貴族は歪曲表現合戦はしてもエルグランドの前世の裏社会コミュニケーションみたいなものには不慣れです
「…シャーロット嬢、大丈夫ですか?」
「は!はい!庇ってくださりありがとうございました、エルグランド殿下」
兄上が仕切り始めたので小声でシャーロット嬢を気遣っておく。いきなり理不尽な叱責?を受けてショックだったようだが、ティナが背中にそっと手を回して慰めているのでもう大丈夫だろう。
「すまぬが、ジナイーダ・アルカディア殿は壇上に」
「承知致しました」
ほー、彼女がそうか。金髪ドリルにガーネットの瞳のちょっとキツそうな女性が壇上に移動した兄上に呼ばれて前に出て行く。担任は邪魔なので兄上の王太子オーラで横にどかされた
兄上と彼女は事前に顔合わせしているから既に知り合いだ。
「すまないね。彼女に関しては自己紹介が必要だと判断したから」
「皆さま、お初にお目にかかります。
リスラネル国・国民協議会・書記局長の娘、ジナイーダ・アルカディアと申します。
ご存知の方もおいでかと思いますが、我が国は王家・協議会並立制という統治体制を敷いており、貴族という概念がございません。
そのため貴国の身分で表現する場合、王族と平民しか存在しないということになります」
「しかし友好の証である留学生であり、責任ある立場におられるジナイーダ殿をまさか一平民として滞在して頂くわけにもいかなくてね
リスラネルの使者とも協議を重ね、王家としては彼女が持つ実質的な権威は伯爵家令嬢相当と判断したので我が国内においてはその身分相当の扱いとさせて頂く。皆も覚えておいてくれ」
ジナイーダ殿が高貴なオーラがあるのも手伝って、普通にみんな納得したようだ。
本当は俺やティナも顔合わせ事前にしとけば良かったんだが、何しろ予定になかった留学だからバタバタして入国がギリギリになってたからな。兄上が言う協議を重ねたってのは方便で、実際は結構パパっと決まったんだよな
さて…学園のアホローカルルールが粉砕されて秩序が形成されたわけだが。
ホッとしてる女子が一人。
猛烈に不満そうな女子も一人。
今日は入学初日なので気合い入れた服装の人が多いが、そのホッとしてる女子はシンプルな膝下丈のワンピースだ
あ、貴族社会の縮図の意味合いもあるから制服は無いぞ
学園はそれもやりたいらしいが、様々な有力な女性や入学予定の令嬢達から猛反発食らって無理なんだと。
お洒落ぐらいさせろやコラってことだな
さて。
猛烈に不満そうな令嬢の方は薄いピンクを基調としたでかいリボンのドレスを着ている…ネイトだっけ?以前お姉さんを殺そうとしてたから両親ごとぶっ殺したクソ妹を彷彿とさせる
つーか、似合ってないとは言わないがいくらなんでも子供っぽ過ぎるだろデザイン。ストロベリーブロンドのセミロングは…まあそこらへんによくいる髪色と髪型だな
もしかしなくてもアレがネラルトーネ伯爵令嬢プリシラ(多分クソ)だろう
シンプルなワンピースの女生徒がアリス殿か。
事前情報によれば美味しいと商店街で評判なパン屋さんの娘だそうだ…その手のお話にありがち過ぎるプロフィールなのは本当に偶然なのか…?
まあ考えても仕方ない。彼女は実際パン屋の娘なんだから
そして今までアバズレクソビッチしか出現しなかったから、ヒロインっぽい立場の奴が(多分だが)まともな人だった時のことを何にも考えてなかった…う〜ん、どうする?
まあアリス殿は様子見だな
…メガーヌ帝国の皇子も何考えてるのか分からんしなぁ
今は隅っこの席で我関せずを貫いてるが。何人か友人も居るようだな
本当に色々めんどくせぇクラスというか学年だ。
「あ、そうだエル、セレスティナ嬢とソフィーも。
学園側が朝の騒動の経緯を聞きたいようだよ」
ああ、まあそりゃあねぇ。説明責任ぐらいは果たしますよいくらでも




