戦争の予感な件
「だから後始末はきちんとしないとって言ってんのにあの子は優しすぎだねぇ」
やあ。
婚約者のためならどこでも暗躍する暗殺者系王子のエルグランドだよ。
王都の貧民街のボロ廃墟で戦闘やらかして、今は目の前に死体がゴロゴロ…10体あるな
別に俺がチートってわけじゃない。こいつらがど素人だったから身体強化で一方的に蹂躙できただけだが、まあそれはたいして重要なことじゃない
実際、アンタレス公爵家から俺に監視も兼ねて付いている影のお二人の評価は「まだまだです」だからな…今もいつ出てきたのかまるでわからんし!
男女のペアでムサシさんとカエデさん、カエデさんは熱血新人、ムサシさんは影の中でもかなり強い人でカエデさんの教育中らしい
「…それにしても、どこから資金が?」
「分かりませんな」
「……貴殿が動いたと言うことは、もしや姫様に何かしらの危機が迫る気配があるのですかっ?!」
今殺したのは、元子爵夫妻と元令嬢(次女)と元使用人共だ
こいつらなんと、娘夫婦(長女)の殺害計画を練っていやがったのを掴んだのでこうして闇に葬った
…ま、祖父母の養子扱いとなり、既に伯爵家で花嫁修行の名目で溺愛されてる彼女に態々知らせる必要もあるまいて。
彼女の中で家族とは婚約者とその家族のみであり、自分の家は単なる恐怖の象徴でしか無かった。ただ、心優しいから「この際だから殺してください」とも言えなかっただけだな
ところでこいつらが潜んでたこの廃墟、上等な紅茶やらティーセットやら高い食材を使った惣菜やらがある。取り潰しの時に屋敷が空っぽになるまであらゆるものが没収されてる筈なのでこんなもの本来此処にあるわけ無いんだがなぁ?
あとカエデさん、買い被らないで下さい。ちょっとシックスセンス的にティナに何か降り掛かる気がしただけです。
「物品運び込んだ者は特に調べていないのですか?」
「一応確認はしております。この地域で色々と物資の横流しやらしている便利屋でしたな。
ただ徹底した尾行はしておりません…此奴らも飯や着替えなどは必要であろうというのと、その時点では重要度の低い監視対象だったので一人半体制でしたから」
うーん、他の任務だっていっぱいあるだろうしそりゃしょうがないか…
…ん?
「どうされましたかな若殿」
「この紅茶、イヴィンシブル公爵領のブランドだわ。お茶会でも出てたわ」
「おお、若殿ならではの着眼点ですな」
「我々影はそういうことには疎いですから…」
以前なら、偽善者が偽善で手を差し伸べただけだと考えられるがアレは現在クソビッチの本性を覚醒させてるからな。警戒は最大限した方がいいだろう
「…若殿!!これをっ!!」
「「ほう…」」
はいアリシア死んだ!被告・アリシア!!判決は死刑だ!!死刑死刑死刑死刑死刑死刑!!!
殺して殺る!!
「「一応報告と事実確認してからにして下さい!!」」
「うっす」
はい。
具体的に言うと、手分けして死体から後ろ盾の手がかりになりそうなものを探してたらカエデさんが紙切れを発見しましてね
上等で可愛いデザインの、まさに上位貴族の女性しか使わないような便箋にティナの行動予定のメモあったんだよ
王族とそれに連なる者はある程度予定が公開されてるから、メモの情報自体は誰でも知ることのできるものではあるんだが、なんで態々そんなものメモで持ってんだって話だからなぁ…




