父親の知能指数が3な件
「…では、あの男爵家と貴殿は同類では無いのだな?」
「は、はいぃ!!それはもう!!間違いなく!!わたくしめにそういった思惑などはございません!!!」
やあ。
最近公務の一部をアリネーラ様や兄上からちょくちょく任されるようになったエルグランドだよ。今は王城の取調室的な部屋に居ます。そしてティナの同席が許されないのだ…まあ、今母上とアリネーラ様に愛でられているのでこれ終わったらおうちデート(王城)だがな
んで、その任された公務の一つがガスコーニュ伯爵家当主、レオン・ヴァン・ガスコーニュの事情聴取ってわけだ。エレナ嬢の件があったから慎重にってわけだ
呼び出した伯爵は見た目はイケメンだが頭は悪そうだな。
伯爵夫人リビエラ様にも来てもらっているが、彼女からしたらアイシラはどうでもいい他人なのであくまで立会人的な立場だ。
さっきから凄い形相で自分の馬鹿夫を睨んでるが
「ではリビエラ夫人にお聞きします。伯爵家では貴族の一番基本的な理念すらアイシラ嬢に説明しなかったのですか?」
「はい。結果的にしておりません」
「結果的に、とはどういう意味ですか?」
「わたくしは当然、それが必要だと何度も忠告致しました。ですがこのクs…失礼致しました。
夫は「そう言って平民だったアイシラをいびる気だろう!」などと見当違いな主張を振りかざし、教育に関してわたくしに一切の干渉を許しませんでした」
はあぁ〜もうこのおっさん死刑にしたいなぁ!!ダメ?
「…わかりました
ところで夫人、アイシラ嬢は私の婚約者の親友であるフランドール嬢の実家が主催したお茶会にてはしたなく男漁りをしており、婚約者の居る令息にベタベタ身体を触りながら言い寄っている事態が散見され、これを私が糾弾したわけですが、彼女のその性格はどこから来ているとお考えですか?」
そこで僅かに首を傾げる夫人…あれ?愛人がクソビッチでアイシラはアバズレサラブレッドじゃないのか?
「その質問を夫ではなくわたくしにして下さったこと、感謝致します。
ですが、答えとしてはきちんとした結論は持っておりません」
そりゃ、レオンの馬鹿に聞いても擁護バイアスかかりまくるから無駄だし
そして分からないとは?
「夫の愛人であるマリアは、自分の立場を弁えた女性でした。元々政略結婚ですし彼女に対して特に思うところはありませんでした。家から出したのも同意の上です。夫が金銭の援助も行なっていたようですし。
娘が真逆の身の程知らずになった理由は、はっきりとは分かりかねます」
「そんな言い方しなくても!!「黙れ。貴様に発言を許した覚えはない」すいません!!!」
ふーん。
とりま、リビエラ様は自分の発言に責任を持てるからこそ慎重な人なんだな
はてさて、アイシラに悪意のある吹き込みがあったかどうかで処分の重さが変わるんだが、本人がクソビッチというだけでは父親の責任の追求はそこそこしか出来んな
夫人にはマリアやらアイシラを庇う理由は何にも無いから、夫人の発言は信用して良さそうだ
「では推測で構わないので夫人が考える理由を教えて頂けますか?」
「はい。
そうおっしゃって頂けて嬉しいですわ
おそらく、夫が甘やかしたせいかと!」
…はは。だよね〜
結局のところ、庶子の馬鹿女が調子に乗るのは父親がチンカス野郎だからだよな
「まったく、愚かですね
愛した女が産んだ娘が可愛いのか知らないが、引き取った以上は貴族令嬢として育てるか、或いは教育をしないのであれば社交の場に一切出さないかのどちらかにしてもらわなければ」
「ですがっ!!
あの子にもいい出会いがあればとっ!その親心を殿下は否定なさるのですか!!」
「…はぁ」
はぁ?
何言ってんだこいつ。リビエラ様は呆れ果ててこめかみを押さえていらっしゃるし
「殿下、殺気が…」
護衛の騎士が「抑えて!」と目で訴えてくるのでどうにか殺気をダウン…伯爵は顔が青い
「最初からうすら馬鹿だとは思っていたが、貴殿の頭は帽子を乗せる飾り台か?
あのような馬鹿女を社交界に放たれるのは迷惑でしかないのだが?それが伯爵家の名前自体に傷を付けることを何故思い至らないのだ?
何がいい出会いだ。冗談も大概にしろ。
そもそも、婚約者に敬意を持てない男が真実の愛がどうのとほざくのが間違いだ」
「殿下はセレスティナ様を溺愛なされていらっしゃいますしね」
なんかリビエラ様がやたらとキラキラした視線を向けてくるんだが…いつも言いたかったこと俺がズバリ言ったからかな…も少し文句代行サービスしますかね
「まあ、私も男だ
百歩譲って仮に政略結婚の相手が性格も最悪で頭も悪く、豚のように醜く肥え太った人であれば愛人を持ちたくなるのも分らなくもない。
だがな
こんな美しく、聡明で知性に富んだ方を妻に迎えて一体何が不満なんだ貴様は?ああん?」
「ぐっ…!」
まあホントは分かってるけど。優しくて控えめで無能な女じゃなきゃ嫌なんだろ?自分がチンカス雑魚だから有能な女性が近くにいると自尊心保てないもんね!
そしてリビエラ様のキラキラが増した。
はい。というわけで当主権限の全てを夫人へ譲渡することを命じました。聞いたら最初から夫人が全部やってるみたいだし、執事長侍女長以下使用人の皆さんは旦那様()の馬鹿さ加減に呆れ果てていて全員夫人の味方らしい




