第四話 復讐
「ロベルトさん、弟を見守っててください。あいつは殺します」
情に触れ力というものが漲る感覚を体の芯から感じ、目頭には涙を貯めている。目の前で燃え蹲っている男はキュリー親子を殺した大罪人であり、何より弟の復讐であった。近くに落ちていた鉄斧を拾い上げた。
「やめろスルド!お前まで死ぬな!」
ロベルトの一助の言葉も虚しく、スルドには届かなかった。
材木をかき分け男へと向かう。一歩を踏みしめるたびに毛が焼けるが、一心に男のもとへと向かう。
「立てよクソ野郎」
スルドは男に罵声を浴びせるが、男は立ちたくても立てなかった。肘と膝を地面につき、身が焼けるのを必死にこらえるしか手段がなかったのである。喉も焼き切れ無様に地に這いつくばるだけの男が、今や一瞬で厄災のように扱われ悔しくてたまらない。ただ、逃げたかっただけである。
「死ねよおおお」
スルドは毛がほとんど焼け皮膚が爛れ、喉も焼け切れ声が出ないが最後の一振りであった。男の首を目掛けて、乾坤一擲の一撃、も虚しく鉄斧が溶けて刃は届かなかった。
「アアアアアア」
スルドは顔を四方八方歪めた。
「スルド戻ってこい!」
ロベルトが叫ぶも、熱風にかき消され虚空に消える。
スルドの意識を保っていたのは弟の復讐心であったが、それが潰えた今、その場に膝をつき倒れた。