第三話 離別
身を焦がす思いで、身を焦がしている。再生能力が追いつかないほどに燃え滾り、皮膚がただれ瞼があかなくなる。両手の鎖を溶かし立ち上がろうとするも、痛みでその場に蹲る。
観衆は皆一斉に悲鳴とともに散り散りとなる。
「ゴーン兄弟、早く殺せ!」
ロベルトの怒号で熊たちは意識を取り戻したようになり、急いで斧を振りかざそうとするも熱風で毛が焦げ近づくことができない。
高台に火が移り、足場が崩れ一斉に倒れ行く。
「ロベルトさん逃げてください」
「おれはいい。それよりお前が・・・」
ロベルトが木材の下敷きになる前にゴーン弟が庇い救うも、木柱が背中から肺を直撃していた。
「ロベルトさんに大事がなくてよかったググググ」
「おい、クルド...」
クルドが吐血するも、それを顔面に受けたロベルトは拭くこともせずに放心した。
奥から材木をかき出し抜け出る音が聞こえた。
「ロベルトさん、大丈夫ですか」
「クルドが・・・・・・」
ロベルトの掠れた声色から、兄はすべてを感じ取り身の毛がよだった。影のあるほうを見ると、幼いうちに親を亡くしその中で寝食を共にした実の弟が、目の前で串刺しになっていた。言葉を失い、弟に駆け寄る。
「おいクルド。死なないよな」
さらに深く穴が開かないように弟の体を支えながら、兄は上擦った声で頼みかける。それも虚しくクルドの目は虚ろになり焦点が合わなくなる。
「兄貴、先に母さんと父さんに会ってくるわ」
クルドの意識はすでに上の空で、兄がそばにいたことは認識できていなかった。
「そんなこと言うなよ」
兄がそう言った瞬間に、脈が止まった。