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娘をダメにするスライム  作者: 紅花翁草
27/41

フルラージュ、魔術を教える。

 リリアナとフルララが6層で昼寝をしている頃、フルラージュとオリファは4層で狩りに勤しんでいた。

「やっとヤギの群れを見つけたわ。私が檻まで誘導するから、オリファは背後からお願い。」

「判りました。」

 フルラージュ達と行動を共にしているのは、商業ギルド所属の収納スキル持ちの職員と、護衛が2人。

 収納スキル持ちが4名いることから、4つに分かれての獲物探しを行っていたのだ。


「本当に、お二人だけであの群れを捕獲するのですか?」

 フルラージュに言われた場所に、捕獲用の檻を設置した職員達が不安顔を見せている。

「ええ、まあ…私も初めてだから半分くらい逃げられるかもだけど、1匹ずつ捕まえるよりは効率は良いはずよ。」

 フルラージュに、自信に満ちた笑顔は無かったが、それでも、その目からは力強い意思が伝わる。


 フルラージュは視線を灰色ヤギの群れに戻し、大きく迂回して背後に回るオリファが、剣を掲げるのを待っていた。

 岩壁などに追い込む事が出来ればとフルラージュは思っていたが、ヤギの群れは遮る物がない草原に居た為、オリファが追い立て係になって、フルラージュが火柱で追い込むことにしたのだ。


「準備が出来たから始めます。」

 オリファの合図と共に、フルラージュは火柱を群れの左右に次々に発現させていく。

 それは道を照らす篝火のように並び、火を恐れる魔獣はその間を抜けようとはしなかった。

 オリファに追われる灰色ヤギの群れは、火柱の間を一直線に逃げ、捕獲用の檻へと次々に入っていく。


「「おお!」」

「これは凄いな。」

 信じられない光景を目の辺りにした職員達から、感嘆の声が漏れる。

 そして、最後の一匹まで檻へと追い込んだオリファに、フルラージュは満面の笑みを贈る。

「お疲れ様。」

「上手くいって良かった。」


「二人だけで大丈夫だと言っていた意味が、ようやく理解出来ました。

 これは、誰某と出来る事ではありません。」

 そう話す収納スキル持ちの職員は呆けた顔で、魔獣で一杯になった檻に見入っていた。


 普段は20人から30人くらいの冒険者が周囲を囲い、逃げる為に突進や攻撃をするヤギを取り押さえている。

 それでも、捕まえられる数は10匹にもいかない。

 体長2メートルを超える灰色ヤギの、他の魔獣から生き延びる為に得た能力は、逃げ足と体重を乗せた頭の角を使った突進。

 致命傷になる攻撃を繰り出す危険な魔獣を前に、冒険者達は恐怖と戦いながら捕獲しているのだ。

 それを、いとも簡単に20匹以上を捕獲した二人の冒険者に、職員達は言葉を失っていた。



「それじゃあ、檻を収納して牙ウサギの手伝いに向かいましょうか。」

 フルラージュは上手くいった嬉しさを静かに噛み締めていた。

「そうですね。牙ウサギは少年達には少し荷が重い。保護者的なお二人に負担がかかっているでしょう。」

 オリファの言葉に職員達は頷き、それぞれが心配する同意の言葉を口に出していた。



 牙ウサギが生息している場所へと案内されるフルラージュとオリファの目に、針ヒツジを仕留めているメルヴィール夫妻達が映る。

 針ヒツジは全身の毛が針のように硬く好戦的な魔獣で、普段は4匹前後の数で生活している。

 そして、決まった生息地などはなく、新鮮な葉を求めて移動しているので、見付けるのに一苦労する魔獣だった。

 丁度、最後の3匹目を槍で仕留めたリオラがフルラージュ達に気付き、手を振って応える。

「皆さん、灰色ヤギを探し中ですか?」

「いえ、ヤギは捕獲出来ましたから、少年達の手伝いに向かっているところです。」

 オリファの言葉に、リオラの視線は数キロ先の岩場へと向けられた。

「そうですか。私達も今、針ヒツジを狩り終えたところなので、ご一緒します。」


 灰色ヤギは肉の鮮度を優先する為に生け捕りにしなければならないが、針ヒツジは捕獲檻の中で暴れて、仲間同士で傷を付けてしまう為に息の根を止めている。

 だから手押しの荷車に載せて運び、狩りの最後に収納することになっている。


 3匹の針ヒツジを載せた荷車を、メルヴィール家とルメア家の男性が牽きフルラージュ達はその前を歩いて行く。

「ヤギはどれくらい捕獲できましたか?」

 ルーテアの質問にフルラージュは、

「20はいたと思いますが、正確な数は数えてなかったので。」

「20ですか?!」

 針ヒツジ組みのルーテア達が驚きの表情を見せた後、灰色ヤギの捕獲を手伝っていた職員達から、事の真相が伝えられる。


「フルラージュさんは魔術師として、とても優秀なのですね。そういう事が出来る方を私は初めて見ました。」

「火と風だけは得意なんです。それに私も、ルーテアさんとリオラさんの身体強化魔術を初めて見ました。話には聞いていましたけど、オールスト領の騎士団。それも先鋭部隊の人達と同等な戦闘力に驚いています。」

「身体強化魔術の適性者が少ないですからね。それに、筋力を鍛えれば済む話でもあるので、その分の魔力を魔術に使ったほうが良いとも言われていますしね。」

「確かに、魔術で攻撃したほうが有利な状況が多いですが、魔術を使える剣士というのは、戦術的に広がりがあると思います。

 オリファが魔術を使えるのと同じですから。」

「オリファさんはオールスト王国の騎士団だったそうですが、どうしてお辞めになったのです?

 見たところ、1級冒険者以上の実力がお有りだと思うのですが。」

「えっと…それは…私の為というか、私に合わせてくれたから…です。」

「と、いうことは、お二人はご結婚されてたりとか?」

「はい。いえ! まだ婚約という形です。オリファの御家族とはまだ会ってもいませんし、式も挙げていませんから。」

「そうですか。それは楽しみですね。」

「ありがとうございます。ここでの依頼が終われば、オリファの故郷で式を挙げる予定なんです。」

「お二人がルヴィア家のトレジャーハンターとして、この街に滞在するのはどれくらいなのですか?」

「数ヶ月から半年。と、いったところでしょうか。」

「そうなのですか。もしかして、ルヴィア家の方々もその時には、この街を離れるのでしょうか?」

「それは私には判らないです。ですが、永住するとは聞いていませんので、何れは街を出ると思います。」

「そうですか…娘達が寂しい思いをしてしまいますが、それは仕方がないことですね。」

「リリアナちゃんも寂しがると思いますから…何事もなければ、定期的に戻ってくるんじゃないでしょうか。」

「何事…あぁ、そういうことですか。そうですね、平穏な日々が続いてくれると良いですよね。」

「まあ、あの家族には無理な話…かも知れませんけど。」

 フルラージュはそう言った後、含み笑いを浮かべていた。


「そうでした。今回の発端となった冒険者ギルドについて、色々と教えて頂きたいのですが、良いですか?」

 平穏とは無縁のディムさん達が、今から関わることになりそうな冒険者ギルド。

 その情報収集をするのが今だと思ったフルラージュは話を切り出した。


「今のギルドマスターに代わったのが5年前。

 それからのクラリムの冒険者ギルドは、私達にとって息苦しいものになりました。」

 さっきまでとは違う重苦しい言葉になったルーテアの話に、フルラージュは怒りを覚えるのだった。


 前任のギルドマスターが定年退職したことで、クラリムを収める伯爵が、当時冒険者をしていた孫のシジトールを選任。

 シジトールは以前から女性冒険者は必要無いと口にしていたが、ギルドマスターになってからは、口には出すことは無かった。

 だが、ギルドマスター権限で、冒険者同士で恋愛している者や結婚している者達への嫌がらせ的なクエストを押し当てたりしていた。

 そして3年前の大規模の魔獣出現の緊急討伐クエストで、最前線へと強制的に参加させたのだった。

 その結果、夫婦で参加させられた冒険者達の殆どが死んでしまうことになる。

 当時、依頼内容の難易度を低く見積もった結果だとシジトールは頭を下げていたが、それが故意に行われていた疑惑が当然起きた。

 しかし、伯爵の孫で推薦を受けたシジトールに誰も逆らえない。

 それどころか、シジトールを支持する冒険者まで出ることになる。

 それから、この地に生活基盤を作り、ダンジョンでの収入で生活していた冒険者夫婦達は自己防衛という形で協力し合い、それ以降の犠牲者が出ないように回避していた。


「ダンジョンがある、別の街に移住しなかったのか?」

 オリファの質問に答えたのはフルラージュだった。

「冒険者登録を破棄されることを恐れて、この街を出ることが出来なかったのよ。」

 フルラージュは、疑問符を浮かべているオリファに言葉を続ける。

「冒険者ギルドに対して不利益な行動をした。冒険者として失格だ。なんて理由を付けられるとね、二度と冒険者登録が出来なくなるの。だから、この街で冒険者登録をした人は、今のギルドマスターに逆らえないのよ。」

「そんな事が許されていいのか!」

 普段とは違う荒々しい声を上げるオリファ。

「大丈夫よ。あの人が言っていたでしょ。ここの現状を知りたいと。」

 宥めるように、フルラージュはオリファに小声で呟く。

 深呼吸をして、気持ちが落ち着つかせたオリファは、小さく笑みを浮かべる。

「既に、敵として認識していましたね。」

 返す小声に、フルラージュも笑みを溢していた。


 二人が突然見せた笑顔を見せ合う姿に、ルーテア達は怪訝な顔を浮かべていたが、牙ウサギが生息する岩場が目前に見えて来ていた為、話はそこで終了する。

「あれが牙ウサギね。」

 フルラージュの言葉に、ルーテアは「はい。」と答えた。


 牙ウサギを捕獲するには、巣になっている岩場の穴に逃げられないようにする事。

 なので穴を塞ぐか、その前に捕まえることになるのだが、体長1メートル前後の巨大なウサギとは思えない素早さで無数の穴に逃げる為、それは容易ではなかった。

 しかも、仲間以外が岩場に近付くと一斉に穴に逃げる為、捕まえるのは不可能と言われる程だ。

 では、どうやって捕獲するのか。

 それは、穴の中に大量の水を入れる事だった。

 魔術で生み出した水は岩場を作っているダンジョン鉱石の性質で吸収されて消えてしまうから現実にある水を使用しなければならないが、収納スキルがそれを可能にする。


「居ました。」

 岩場に入って少し進むと、少年少女達が濡れた岩場を走り回る牙ウサギを追い掛け回している姿をルーテアが見つける。

「やっぱり、苦戦しているようですね。」

 オリファはそう口に出した後、視線をルーテア達に一度向けて走り出していた。

 続いて、ルーテア達も走り出す。

 残ったのはフルラージュとルメア家の女性と、商業ギルドの職員達。

 護衛の職員が荷馬車を押す係りになって、フルラージュ達はゆっくりと邪魔をしないように現場へと向かった。


 フルラージュ達が到着した頃には、岩場から逃げ遅れた牙ウサギの捕獲が終わっていて、オリファと商店街の金物屋で元冒険者でもある武具職人のモーリさんが少年達に槍の扱い方を教え始めていた。

「武器に頼った動きだと、早さに負ける相手には何も出来なくなる。

 槍は体の一部、自身の手だと思え!」

「重心は常に低く、相手の動きを見てから動いてください。それが魔獣を相手にする時の基本となる心構えです。」

 職人らしい強い口調のモーリと優しく指導するオリファに、二人の少年は真剣な表情で聴いている。

 そして、モーリとオリファが見せる動作を反復し始める。


 牙ウサギの捕獲方法は、鎖の網で捕らえることなのだが、武器などを使って動きを止めなければならない。

 逃がさない為に前に回り込み、飛び跳ねるのを叩き落したり、突進には盾や武器を使って受け止める。

 それは、これから先の魔獣狩りの基礎となる部分で、出来るか出来ないかで生死が決まると言っていい。

 だからモーリとオリファは、実践練習になった今を使って、少年達を指導していた。

 特に魔獣狩りに最適な槍の扱い方は、基本的な動きの意味を理解していないと体の重心がズレて、全てが雑になる。


 鎖網に絡まった牙ウサギを捕獲檻に収めていくルーテア達。

 最後の一匹を収めるカテリーナが、一緒に暮らしている孤児院の少年達へと視線を向ける。

「やはり、モーリさん程の方になると、指導の言葉が違いますね。オリファさんも騎士団出身というだけあって、教え方が的確です。

 私は魔術師なので、前衛のことを教えられなくて…」


 カテリーナの寂しそうな顔を見たルーテアは、優しい笑みを見せる。

「クラリムの冒険者は独学で覚えている方ばかりですからね。魔術師は領都の学園か、王都の魔術学院で学べますが、剣などをしっかりと覚えるには騎士団か兵団に入るか、元騎士や兵士の方から学ぶしかありません。

 ですから少年達も、今の時間の大切さを十分に判っていて少しでも強くなりたいという、そういう想いが伝わってきます。

 それも全ては、孤児院の家族の為だということも。」

「はい。あの子達は本当に、孤児院の下の子達の為に一生懸命で。」

 涙を浮かべるカテリーナ。

「それは少し違いますよ。あの子達が守りたい者の中には、カテリーナさんも入っていますから。」

 ルーテアの言葉にカテリーナの目から涙が零れ落ちる。

「そうですね。だからこそ、私はあの子達にも幸せになって欲しい。冒険者という危険な職じゃない、別の職を選んで欲しかった…」


 フルラージュは二人の会話を静かに聴いていた。


 確かに冒険者は危険な職業だと言える。だけど、どんな職業でも命を落とす危険はあるし、普段の生活の中で命を落とす者もいる。それこそ、盗賊に遭ったり、魔獣に襲われたりもする。

 だからこそ、自身を守る為に剣や魔術を鍛えるのは間違ってはいないし、それで生活する冒険者や騎士団などに入るのも間違ってはいない。

 ただ、クラリムの冒険者が間違っているだけなのだ。


 その事をフルラージュは口に出すことはなく、視線を少年達を見守るように見ている二人の少女達に向ける。

「彼女達は魔術師なのですよね? 何が得意なんですか?」

 何事も無かったように質問をするフルラージュに、涙を拭いたカテリーナが答える。

「栗色の髪で、4人のリーダーをしているエリスは火です。隣の薄い色のアミルは風が得意です。

 エリスは火以外は全然駄目で、アミルは火と水も使えますが、魔力変換があまり得意ではないので、戦闘ではあまり活躍出来ていないのが現状です。」


 フルラージュは少女達を見詰めながら、静かに考え込んでいた。


 ディムさんから教わった魔力操作と魔力圧縮を教えてあげることは出来るけど…

 彼女達にその資格があるのか…

 自惚れず、魔術を正しい事だけに使う意思。強い意志があるかどうか…

 

 ディムから魔術の扱いを習ったフルラージュは、それを教える相手は魔術師として正しく生きている者だけだと決めていた。

 魔術の力に溺れる者を沢山見てきたフルラージュ。魔術の力が地位や身分の高さだと言い放つ者達が起こしてきた数々の悲劇。

 それを引き起こす者を生み出したくないと、フルラージュは思っていたのだ。


「二人を呼んでくれますか。少し教えてみたいことがあります。」

 ずっと黙っていたフルラージュの言葉に、カテリーナは「はい。」と答える。


 呼ばれたエリスとアミルは、フルラージュの真剣な表情に顔を強張らせていた。

「アミルさん。今から私が見せる事を試してみてください。」

 フルラージュは片手を出して人差し指をアミルに向ける。

 フルラージュの指先に空気の渦が生まれ、小さな風の玉が指先に出来る。


「どういうことですか?!」

 フルラージュの見せた現象に声を上げたのはカテリーナだった。

 そして、その声で我に返った魔術を知る者達からの声が続く。


「ゆっくりと、静かに…少しの魔力を指先に流し続けるの。火でも一緒よ。」

 そう言ったフルラージュは反対の手を出して、指先に炎を灯す。

「二つ同時なんて! しかも、熱くはないのですか?!」

 ルーテアの疑問視する目に、フルラージュは笑みを返す。

「これはまだ、属性の魔力を出したに過ぎません。なので炎としても風としてもまだ出現していない状態です。

 これが出来るようになれば、魔力を効率よく引き出す事が出来るのと、魔力変換が上手くなるはずです。」

「体の外で魔力を扱うということですか?」

「はい、その通りです。魔力を視覚することで、自身の魔力をより正確に理解することが出来ます。」

「確かにそうかもしれませんが…そう簡単に出来ることなのですか?」

「魔術を発動させるのではなく、魔力を外に流す。そういう意思でやってみてください。」  


 フルラージュの言葉に、ルーテアとカテリーナがまず最初に試してみることになった。


「で、出来るものなのですね。確かにこれは集中力が要りますし、魔力の流れなども感じる事ができます。」

 カテリーナの指先に小さな灯火が生まれていた。

「ええ、これは良い練習になりますね。これなら部屋の中でも出来るし、魔力の扱いに何が足りないのかも見る事が出来るので、教えるほうとしても教えやすくなるでしょう。」

 ルーテアの手の中では、風の玉が規則正しく自転している。


 それから、エリスは灯火を、アミルは風の玉を出現させ、二人とも数秒だけ維持すること出来た。


「流す魔力量には気をつけてください。制御できない量だと勝手に魔術が発動してしまし、危ないですからね。」

 フルラージュは最後に注意点を述べる。


 それは事実な事で、溢れる魔力は自然へと帰る為に、自ら出現する。

 だから人族は魔力を体の中で扱い、出来た魔力を魔術として発動させている。

 それによって、魔力圧縮という魔力を練る行為で魔力暴走が起きれば最悪の結果、炎が体を焼き、風が体を刻み、水は溺死、土は窒息死という結果が起こるのだ。


 フルラージュの言葉に、エリスとアミルは「はい! 」と返事をし、魔力がまだ少し残る指先を確かめていた。


 魔力圧縮については触れなかったフルラージュ。

 そもそも、魔力を正確に扱うことが出来なければ魔力圧縮をすることは出来ない。

 今必要なのは魔力を正しく理解し、扱えるようになること。

 その事に気付いたフルラージュだったから、今のような指導をしたのだ。


「あとは、カテリーナさんにコツなどを教えて貰えば大丈夫だと思いますから、無理せず、ゆっくりと習得していって下さい。」

 フルラージュに再度、「はい!」と元気な声で答えた二人。

 丁度それを、指導を終えたオリファとモーリ、少年二人が楽しそうな笑顔で見ていたのだった。



 それから集まった者達で針ヒツジを探す事になり4層を練り歩いていたが、結局一度も出会うことなく時間となって、黒トカゲを狩るグラッジ夫妻とロニアス夫妻が待つ集合場所へと向かった。


「皆さんお揃いで。」

 4人と収納スキル持ちの職員が、全員揃ってのルーテア達の到着に安堵の笑みを見せる。

 そして、それぞれの成果を報告し合う。 

 黒トカゲも4人での捕獲としては妥当な数だったが、50人規模の冒険者に依頼するはずだった捕獲数には当然無理があった。

「結局、思っていた通りの捕獲数でしたね。

 灰色ヤギだけが本来の依頼数に達していますから、明日はヤギ以外に掛かればなんとかなりそうですね。」

 ルーテアの言葉に頷く一同。

 その中で、フルラージュとオリファはディム達の事が頭に過ぎる。


 ドラゴン狩れたのかしら?

 ドラゴンか…

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