第8話 ヒーロー異世界に爆誕する ⑥
本日2話目
「う⋯⋯⋯⋯知らないベットのシーツだ⋯⋯⋯⋯」
うつ伏せに寝ていたため、テンプレ回避した大我はゆっくりと自分の状況を思い出し再確認しようと頭の中を整理しようと上半身を起こし始める。
身体がギシギシいっていうことをきかない、全身に痛みがはしる。
これは、変身の代償だ⋯⋯⋯⋯
大我は直感で感じた。呪いもいいところだ。なんてことだ⋯⋯⋯⋯
(全身、筋肉痛になるなんて⋯⋯⋯⋯)
35歳という年齢、仕事はデスクワークそんな最中、昨日のオークとの大立ち回りは全身をひどい筋肉痛にするのには十分な運動量だった。
起こしかけた上半身を、またベッドに預け、筋肉痛の痛みに耐えているとふと横から声をかけられる。
「あ、おはようございます。マスター、体調はどうですか?」
ベッドの横に、ちょこんと20歳前後に見えるピンク髪の女性が座っていた。
どことなく、あのクソ女神であるエースティアにも見えるがと大我は思い、先ほどのセリフからその存在にあたりをつける。
「おまえ、マナなのか⋯⋯⋯⋯?」
「是、マナです。マスターの願望により神核石の力で仮初の肉体を手に入れることができました」
にっこりと、微笑むマナ。
ほんと何でもありだな神核石と大我は思うが思考は固まる。
思考が固まっている大我をよそに会話を続ける。
「これからは、マスターの身の回りの世話も出来ることになりました。昨夜も胸当ても外し、体を拭かせていただきました」
マナの言葉に、はっと自分の体を見ると胸当てが外され体がさっぱりしていることに気づく。
彼女いない歴=年齢の大我には刺激が強すぎる。
「あの⋯⋯⋯⋯マナさん⋯⋯⋯⋯もしかして下半身の方も⋯⋯⋯⋯拭いていただけたのでしょうか⋯⋯⋯⋯?」
「是、下半身も汗で汚れていたため念入りに拭かせていただきました」
意識がなかったのが悔しいやら、恥ずかしいやらで顔を布団にうずめてバタバタとしたかったがいい歳したオッサンがそんなことをしたらキモイだけなので、なんとか感情を押し込めながら話題を変えようと大我は言葉をなんとか絞りだした。
「神核石で仮初の身体といってたけど、神核石の中にまた戻れるということ?」
「是、わたしが神核石の中に入ることによってトラファイターX3の戦闘を大きくサポートすることになりますので、逆にわたしはマスターから遠く離れることは出来ません。」
「なんかあのクソ女神エースティアに姿が似ているね」
クソ女神という単語が、気に入らなかったのかすこしムッとした表情をつくるマナ。
「否、エースティア様はクソ女神などではありません。ただ、経験が少し足りない中間管理職で急に多くの管理を押し付けられマスターに対して説明不足だったのは否めませんが⋯⋯⋯⋯」
そういえば、分け身とか言ってたなと大我は思いだし、エースティアへの中傷はマナへの中傷にもなるものかと理解し、素直に謝罪することにした。
「悪かったよ。で、その説明不足という部分をマナから聞かせてもらえるんだな?」
「是、まずはこの世界ですがマスターのいる世界と違い魔法の存在があり人族以外にエルフ、ドワーフなどからなる亜人、獣の姿を一部に宿した獣人族、そして昨日遭遇した頭に角と黒い翼を持つ魔族が存在します」
「まさにファンタジーな世界だな」
「否、こちらの世界からするとマスターの世界も十分にファンタジーでしょう。エースティア様はこの世界――名前がないのでそのままエースティア様の名前を冠していますが、この世界を5000年近く管理されています。その目的は、その地に住まう存在をより高次な存在へと引き上げることですが芳しくありません」
「そして、原因が分からず破滅に向かっていると」
大我は上半身を無理やり起こし、言葉を続ける。
「是、女神様方管理者は直接手をくださることを禁止されています。そこで、神託や神器などをさずけたりするのですが効果はそれなりにあったのです。歪みはここ100年で急速に現れたのです」
「地球は100年の管理とか言っていたな」
「是、前任の管理者は失敗したという理由で解任されエースティア様に管理を委ねられました。失敗したという原因を調べましたが、分かったのはマスターの世界も歪みが発生しどうやら地球とこの世界エースティアとも連動しているということでした。」
なんだか、神様の世界も会社みたいにリストラされるんだなと大我は思い陰鬱な気分になりながら聞いていると聞き捨てならない言葉がマナから発せられていた。
「地球の方に原因があるということじゃないのか?」
「分かりません、地球が失敗したという理由も分かりません。が、まずはこの世界エースティアの話しを続けましょう。
今、この世界は魔族の王を名乗るものが人族、亜人、獣人すべてに宣戦布告をし世界大戦状態にあります。このまま続けば魔族以外の種族は途絶え少なからず地球にもその余波が達すると予測されます」
「魔族の王?魔王ってやつ?」
「是、魔族は他の種族より魔力が高いのですが絶対数が少なく本来であれば勝てない戦争を魔王は魔物を統制することによって戦況をひっくりかえしました。魔物は誰の命令も受けず使役もされないのですが何故か魔王は使役する力を持つらしく昨日のオークキングも魔族が率いていたのでしょう。これは明らかに異常な事態でエースティア様はこれが歪みの原因ではないかと考えておられます。」
と、いうことはその魔王を倒せば世界の歪みというやつが消えておれは帰還できるのかと大我は考えを巡らせマナにそのまま言葉をぶつけた。
「じゃあ、その魔王というやつを倒せば歪みが消えおれは帰れるかもしれないんだな」
「可能性が高いということしか分かりません。実際に、今現在のこの世界の脅威は魔王の存在ですので倒せば歪みが消えるかもしれません」
マナは、申し訳なさそうな顔で答える。別にマナが悪いわけじゃないんだけどなと大我は思い、次の行動を考える。最適行動をとるのは社会人として鍛えられたスキルだ。一刻も早く、帰還しゆりちゃんの返事を聞かないといけない。
「次は、情報収集と金策を兼ねて冒険者ギルドに登録だな。と、いってもこの筋肉痛じゃ今日は動けそうにもないけど」
と、筋肉痛の痛みに耐えながら精一杯の作り笑いをマナに向けるとマナは明るい表情で椅子から立ち上がった。
「是、マスターの筋肉痛を和らげるためわたくしがマッサージをします。回復魔法を使えばいいのかもしれませんが、マスターの筋力増加になりませんしなによりわたしもマスターも回復魔法が使えませんからね。さ、うつぶせに寝てください」
「え?え?」
若い女性に身体を触られるという状況に思考が追いつかず、されるがままうつぶせにされると細いしなやかな指が腰にあてられ適度な圧迫がもたらされる、結果―――
「はぁああ~⋯⋯⋯⋯」
「こりゃ⋯⋯⋯⋯たまらん⋯⋯⋯⋯」
「気持ちよすぎる~⋯⋯⋯⋯」
なんとも情けない声が大我の口から漏れ出る。なんという至福。さきほどの筋肉痛がウソのような快感に身を委ね気持ち悪い声が漏れ出ることを止められでいると
バンッ!
と、急に部屋のドアがあけはなたれドアの前には中年の割腹のよい女将が仁王立ちしていた。
「お客さん、部屋で変なことしてるなら娼婦街へ行けと言おうと思ったけど違うみたいだね。ただ料金は二人分貰うよ、どうやら泊まり込んでいたようだしね」
それだけいうと、女将は部屋から出ていった。
「マ、マスターすみません⋯⋯⋯⋯よかれと思ってやったのですが⋯⋯⋯⋯」
「い、いやおれも変な声でちゃったし、いいんだ⋯⋯⋯⋯」
お互い気恥ずかしい空気が流れるが、すぐにさきほどの料金ふたり分という言葉を思い出し大我が青ざめる。
「マナ、すぐに冒険者ギルドに行くぞ!筋肉痛だとか言ってられない金がない!」
二人分の宿泊料を想定していなかった⋯⋯⋯⋯
残金金貨1枚と銀貨5枚から、また銀貨5枚がひかれ、残りは金貨1枚⋯⋯⋯⋯
このままだと明日分までの宿泊しかできない。
マナもすぐさま現状を理解し身体が光り粒子となってバックル部分に吸い込まれていった。
『是、冒険者ギルドにまいりましょう!』
ツッコミを入れたい現象ではあったがまずは、金だ!
文明人として、野宿だけは出来ん!と大我は意気込み装備を手早く整え、筋肉痛の身体を押してギルドへ向かうのであった。
見て下さりありがとうございますm(_ _)m
10話まで、あと2話、明日には10話になりそうですヽ(´▽`)/