第7話 ヒーロー異世界に爆誕する ⑤
「金貨3枚といったところですかね⋯⋯⋯⋯」
恐る恐る質屋の店主は異様ないでたちの戦士である大我にそう答えた。
告白し、彼女にプレゼントしようとしたイヤリングを売ろうと質屋のオヤジに渡しまじまじとイヤリングを鑑定し、大我に値段を告げた。
何か売れそうなものはないかと思い、自分のポケットを探ったが携帯や財布すら会社のデスクに置きっぱなしだったらしく、彼女にプレゼントしようとしたイヤリングだけがポケットにあったのが幸いだった。
宝石ならば、換金しやすい。
そう、大我の思惑通りすぐにイヤリングに対して価格がついたが――――
(マナ、おれこの世界でのお金の相場わからないんだけど、これ高いの?)
『銀貨10枚で金貨1枚の価値があり、銀貨3,4枚で一晩であれば普通に宿泊できるでしょう』
と、なるとすくなくとも7日は泊まれるということだなと大我は納得し、質屋のオヤジとの売買を成立することにした。
「分かった、それで頼む」
大我、すぐに了承した。
なにせ――――森を抜けるとすぐに街の灯りが見え、衛兵らしき者が門番をしている姿を確認し様子を見てみると門に入っていく通行者と金銭のやり取りをしているのが見えた。
どうやら、通行料が必要なようだと分かった大我は人気のいない城壁を探しマナにも向こうに人気がいないことを確認し、密入国したのであった。
物陰からそっと、街歩く人々を見ると中世のような雰囲気にあった服を着たものが大半であり、あとは鎧を着て歩いてる者ちらほら見える。
(まずは目立たたない服が必要だな)
さすがに、今のトラファイターX3の格好が異様だと感じていた。
しかし、トラファイターX3の下に着ている今の自分のスーツ姿はより一層異様だ。
これならトラファイターX3の格好を鎧と言い張ってもいいはずだとなんとか悪戦苦闘しながらも質屋らしき店を見つけ出し戸を叩いのであった。
「金貨3枚でいい、あとここらへんで買える防具を取り扱ってる店と宿屋を紹介してくれないか?」
質屋の店主は、トラファイターX3の異様な格好の者に早く店を出て行ってもらいたいのだが、あまりにも異様すぎて普段はしない店までの道のりを丁寧に説明しはじめた。すでにフル装備の甲冑を装備しているのに新たに防具を欲しがるのか?理解出来なかったがよっぽど、すぐに刺激せずに退店して欲しかったのだろう。
道を教えられすんなりと大我は店を出て行く後ろ姿を、店主はなんの問題もなかったことにほっと胸をなでおろした。
店主に、教えられた店にはすぐに付きそこで安い革性の胸当てと服、そして中古の剣を買うことにし金貨一枚を差し出した。
店主曰く、初心者用の装備らしかった。大我は、考えるのも面倒で目立たなければなお良いと思いすぐにその場で購入を決め着替えることにした。
剣は、扱えないが目立たないためのカモフラージュであった。
マナの情報によれば、この世界では冒険者ギルドが存在しており、そこに登録してお金を稼ごうと考えていた。
だが、トラファイターX3の格好は目立ちすぎるし武装が強力すぎるため(トラソードなど素手で持ったら手が溶ける)素手というわけにもいかず
なまくらなのか名剣なのか判断つかない剣を腰にさした。
ここでも、異様な視線を感じながらその場で着替室に案内してもらった。
予算の関係上、インナーとズボンと簡素な革の胸当てだけだがあとは手足のみトラファイターX3の手甲と脛まで覆うようにブーツのように装甲だけ残していた。
残金金貨2枚。
こんなものかと、大我は自分の姿を備え付けの姿見で見ると自分の目が金色に変わっているのに気がついた。
他はみなれたパーツと社会人の証黒い髪であったが目だけが変化している。
「マナ、なんか目が金色になっているんだけど⋯⋯⋯⋯」
『是、神核石との融合かと思われます。マスターは魔力が無い世界から転移してきましたからそこへ神核石を通じて魔力が使用できるようになったため身体に影響が出たものと思われます』
(なんか、あとあとから変な事実がわかってくるな⋯⋯⋯⋯これ、元にもどるんだろうか⋯⋯⋯⋯?)
大我は他に変化はないかと身体を見渡すと、神核石が埋め込まれたバックルが身体からないことに気がついた。
「マナ⋯⋯⋯⋯バックルがないんだけど⋯⋯⋯⋯」
『是、マスターと融合しているため必要時のみ表層に現れます』
またもや、知らない事実が発覚し、これクーリングオフ案件じゃないのかと思ったが とりあえず、まだまだマナに色々と問いたださないといけないこともあり、ゆっくりと話しが出来る宿屋の確保だと思い、質屋のオヤジに教えてもらった宿屋へと足を向け歩き始めた。
どうやら、コーディネートは成功したようで、だれもかしくもが大我をじろじろと見ることはなかった。
だが、黒髪というのはこの世界では珍しいらしくちらほらとではあるが、大我を見ている者も存在した。
足早に、目的の宿屋につき一晩銀貨5枚の少し質のよい宿屋に問題なくチェックインの手続きをすませ案内された部屋に到着した途端大我は、大の字になってベッドに寝転んだ。
残金金貨一枚と銀貨5枚、三泊は出来るなと簡単に計算するも
(いろいろ、ありすぎて頭が追いつかん⋯⋯⋯⋯)
思えば、最初は人生で一番緊張していた告白をと思えば、それを塗り替える連続の出来事に大我の精神は限界を超えており、マナになにを聞こうか、まずは世界常識からだろうか。
そんなことを考えている内に、大我の意識は深いまどろみに飲み込まれようとしていった。
(ああ⋯⋯⋯⋯風呂もはいってないし、胸当てとかも外さなきゃ⋯⋯⋯⋯)
朧げにそう思うがすでに睡魔に勝てず体は動かない。
(服脱がして、せめて身体拭いてくれる人がいてくれたらなぁ⋯⋯⋯⋯)
その思考を最後に大我は睡魔に身を委ねた、いつの間にか現れているバックルから神核石が光輝いていたが、それに気づかずに大我は寝息をたて始めていた。
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m
文章は難しい、文章は難しい大事なことなので二回いいました(つд⊂)