第6話 ヒーロー異世界に爆誕する ④
本日の2話目です。
やってしまった⋯⋯⋯⋯
大我は森の中で、いまだトラファイターX3の姿で頭を抱えていた。
最後のオークキングの止めがあまりにも自分の許容限界を超えたため完全に覚えていないが自分がどこかの国のお姫様の目の前でゲロを吐きさらには、その綺麗なお姫さまとお付のこれまた綺麗な女騎士に貰いゲロをさせてしまったことは、うろ覚えだが記憶にあった。
吐ききったあと、なんとかその場から跳躍し逃げ切ったが精神的にも肉体的にも限界であった。
(あんなことしてしまって、指名手配とかで捕まって処刑とかされないよな⋯⋯⋯⋯)
地球では、王族とか貴族などと近づくことはなかったがこの世界ではポピュラーなのか、いきなりそんな存在と出会い無礼を働いてしまった。
異世界転移から、初めての殺生、王族とのもっとも失礼な邂逅。
大我は、今すぐにでも意識を手放したかったがやることは山ほどある。
まずはマナに色々と聞かなくては⋯⋯⋯⋯
「マナ、まず女神が言っていたオマケってなに?」
『わたしの存在と、神核石の能力です』
能力?何でも出来るのではないのか?
と、大我は疑問に思ったがマナは言葉を続ける。
『神核石の力を顕現させるには、その者の強い願望が必要です。今回はこの世界の言語翻訳能力を付加させていただきました』
「確かに、おれには翻訳なんて強い願望はなかったな」
『この世界の文字も識字できるように能力を付加しておきました』
「そこまで、やってくれていたのか⋯⋯⋯⋯で、肝心の世界の救うというのは?」
『分かりません』
(は⋯⋯⋯⋯? )
唯でさえ、混乱のしているところに最初の与えられた目的でさえ明確でないどんなブラック起業なのだろうか、大我はまた頭を抱える。
「マナにも女神から知らされていないってことか? 」
『否、女神エースティア様も知らないのです。この世界は今異常な歪みの中にさらされています。まだ時間はありますがその原因を取り除かない限り世界は崩壊するでしょう』
「そうか⋯⋯⋯⋯まずは情報収集だな」
大我は、すぐに考えを切り替えた元の世界に帰還するにはこの世界をどうにかするしかない。
エースティアは、なにやら地球も関係するとか言っていた。ただ、帰還を目指せばいいというわけでもないらしい。
『マスター、ここから10キロほどの場所に人族の反応があります。おそらく街があるようです』
「そうか、じゃあまずそこへ向かうとするか」
やっと気分も落ち着き、少し気持ちも前向きになりゆっくりと大我は腰をあげ反応があるという
方向へ体を向け歩きだそうとしたその時―――
「少々、お待ちいただけますかな」
急に、前方の濃い闇と共に森という状況に場違いな執事服をきた老齢の男性が現れた。その頭に羊のような角を見ると明らかに人じゃないことが伺える。
(魔族というやつか)
大我は、咄嗟に身構える。
「このご老体と少しばかり手合わせお願いしたく、よろしいですかな?」
「断る――――」
と、間髪いれず大我は答えたが老執事は答えなど最初から聞く気などがなかったようで大我に迫っていった。
咄嗟に、拳と拳とがぶつかる。あたりに衝撃がはしる。
本気ではなかったが、ご老体ゆえ手加減はしたがのトラファイターX3の拳と互角ということに大我は少なからず動揺した。
次の手はと考える大我であったが、老紳士が言葉を発する。
「ふむ、なるほどやはり調停者の称号をお持ちでしたか」
(調停者?)
「今回はここでお暇させて頂きましょう。また、合間見まえるまでそれでは失礼いたします」
老紳士はそういうと、現れた時と同じように濃い闇とともに消えていった。
「なんなんだいったい、ほんと疲れた⋯⋯⋯⋯早く眠りたい⋯⋯⋯⋯」
『さきほどの存在は、間違いなく魔族でしょう。オークキングとの関係も濃厚かもしれません』
マナがそう言うのならばたしかにそうなのだろう、大我にはもはやまともに考える気力するなかった。
早くどこか文明的な場所で一息いれたい。
トラファイターX3の脚力であれば、そこまで時間がかからないだろう。
「マナ、トラファイターX3の脚力ならどのくらいで街につきそうだ?」
『トラファイターの力をもってすれば10分と掛からず着く―――』
「トラファイターX3だ」
『⋯⋯⋯⋯え?』
「トラファイターX3だ。ただのトラファイターでは一般的に1号を指す。トラファイターX3だ」
「は⋯⋯⋯⋯はい、トラファイターX3であれば10分かからずに到着するものとと」
譲れないヲタ魂、変な所にこだわる大我に神核石に込められた分け身とはいえ神の眷属も動揺したのか素直に訂正の言葉を口にした。
こうして、マナに教育を施し大我は街にむかって走り始めた。
途中に木々が身体や顔を掠めるが、トラファイターX3の装甲を傷つけるところか衝撃さえもなく
木々を抜けていく。
(なんの金属で出来ているのか分からないけどさっきのオークの攻撃や魔族の攻撃を受け止めた時もさほど痛みを感じなかったな)
だからこそ、さきほどの魔族らしき老執事と一戦が気になる。
本気ではなかったが、大我のトラファイターX3のパンチをぶつけあい平然としていたのだから。
(魔族の存在も気になるが、あの魔族が言っていた調停者という言葉も気になるな)
大我はいろいろとマナにあとで聞こうと疑問を整理していくがとにかく、宿にでも泊まり風呂に入りたい気持ちでいっぱいだった。
日が沈みかけける宵闇の森を漆黒と黄金が混ざった甲冑を纏った黒金の戦士が駆けていった。
読んでくださりありがとうございますm(_ _)m