第5話 ヒーロー異世界に爆誕する ③
ゆっくりと、膝と拳を地面から放す。
大我は自分の腕や足を見る。黒に金のフチ取りがされており関節部なども所々金の装飾されているようだ。
まっすぐ立つと目の前にはでかい豚が二足歩行で立っており各々武器や鎧をつけていた。
(オークってやつか⋯⋯⋯⋯)
『是、前方に見えるのはオークならびにオークジェネラル、オークキングです』
急に神核石の声が脳内に響く。それ自体も驚くことであったが、すでに目の前のファンタジーな光景に感覚が麻痺していた。
(お前のこと、神核石と呼べばいいのか?)
『否、わたしの存在はエースティア様が分け身として存在を許してくださりこの神核石へ宿された存在です。以後はマナとでもお呼び下さい』
(そうか、じゃあマナ。おれの目の前にいるオークはやっつけないとダメなんだな?)
『是、オークに言葉は通じません。無視すれば後方の人々が犠牲になります。魔物は世界の歪みより生まれた存在駆逐しなくてはいけません』
(今のおれは、まさに正義のヒーローという立場か⋯⋯⋯⋯)
そう、考えた瞬間大我の首元に真っ赤なマフラーが風もないのにたなびいていた。
俗に言う正義マフラー、神核石が大我の無意識をも具現化していた。
(正義といえばこれが付き物だからか⋯⋯⋯⋯)
もう、堕ちるとこまで堕ちよう。厨二全開であろうと。
そう覚悟し、大我はマナに問いかける。
(マナ、なにか武器はあるか。出来れば血があまりでないようなやつ)
『是、神核石に望めばすべてはマスターの手に』
すると自然と大我の頭に浮かぶのは光の剣、レー○ーソードとかラ○トセ○バーである。
ヤケだやってやるという大我の意思がこもったのか黒い瞳が赤い双眸へと染まるり、神核石から電子音声が流れる。
『Try blade Set Up』
大我の手には、光の剣トラブレイドが握られていた。もう、ここまで来たら勢いだ。
見ず知らずの人間のためになぜ助けようとするのか?
大我の思考は単純な物であった。
死んではいないようだが、ボロボロの騎士らしき集団、その血まみれの姿がダメだった。
昔、インターネットでグロ画像のリンクをよく踏まされたせいかその手の耐性がなかった。
もう、これ以上グロは作らせない!
「うぉおおおおお!トラファイターX3行ってやる!! 」
オークの群れに無策に突っ込む、呆気に取られているオークジェネラルに袈裟斬りを仕掛けると豆腐を切るよりも感覚がなくオークジェネラルの甲冑ごと真っ二つになる。
グロイ⋯⋯⋯⋯!!
切った断面は、炭化しているらしく血こそ吹き出してはこなかったが大我の心を十分に削るグロさであった。
闇雲にトラブレイドを振り回しオークの数を減らしていったころ、正気を取り戻したオークキングが指示を飛ばす。
次の間には四方を大剣で固めたオークジェネラルに囲まれ、同時に攻撃を仕掛けられていた。
(トラブレイドでは、全部しのげない! )
そう思った瞬間、またもや神核石から電子音声が鳴る。
『Try Claw Set Up』
両腕から図太い漆黒の爪が三本ずつ現れると、片腕で2本両腕で4本の大剣を受け止めていた。
今だっ!と、思い大我は思い切りトラクローで4体のオークジェネラルの腹部を掻ききった。
腹部から鮮血と共に臓物が飛び出る。たまらず、オークジェネラルたちはその場に崩れ落ちる。
(グロすぎるっ!もう、ダメだ!おれが耐えられん!マナ、オークキングはどいつだ!?)
一刻も早く、グロ空間から抜け出したい大我は頭を押さえればこの戦闘が終わると思いマナに強く問いかける。
(あと、もう武器ダメだ!パンチだ!普通に殴り飛ばせばよかったんだ! )
『マスター、前方に赤い鎧を纏ったオークがキングです。しかし、本当にパンチでいいのですか? 』
(いい!これ以上グロいのは見たくない! )
フラフラとも見えるゆっくりな歩調で、大我はオークキングに近づいていった。
オークキングも目の前の存在が理解出来ず、ただ立っていた。
『Exceed Try Knuckle』
電子音声と共にバックルから光と闇が渦巻き、右こぶしに集まる。
大我は、思いっきり殴りつけ昏倒させようと顔をねらってストレートを放つ。
「トラファイターパンチ」
その言葉と共に出たパンチはすでに心が削りきられていたためスピードがまったくなく狙いも顔ではなく、はるか下のオークの腹部に当たった。
結果として、パンチも正解ではなかった。
トラファイターX3のパンチ力は250tである、本気でその力を振るえばオークキングの体は上半身がちぎれ飛んでいただろう。
しかし、今は純粋なパンチ力ではなく光属性と闇属性の混合属性をオークキングの体に注入され、エネルギーはオークキングの体を渦巻き発勁のように内側を完全に破壊し背中からすべての衝撃が臓物と共に排出された。
ドバッシャーーーーーー!!
その光景に大我の意識は完全に耐え切れなくなりシャットダウンしたのであった。
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