第3話 ヒーロー異世界に爆誕する ①
「あの、以前からずっとあなたのことが⋯⋯⋯⋯」
桐山大我は緊張の極みにあった。だれもが憧れる会社の女性、高嶺の花と言われる女性。そんな彼女に想いを伝えようとしていた。
自分を変えたい、このままダラダラと流されてきてしまった35年間を変えたい!
そんな想いが、憧れだけですませていいのか?と、自分に疑問を持ちありったけの勇気を振り絞り彼女を呼び出し、今まさに想いのたけを伝えようとしていた。
「あの、実はわた―――」
彼女が食い気味に、大我の言葉に被せ続きをその唇から紡ごうとしたその時、大我の身体が一瞬で消えた。
白い眩い光とともに⋯⋯⋯⋯
大我は目を瞑っていた。「あの、実はわた―――」の続きはなんだろうか?「わたしも好きでした」なのだろうか、怖くて目を開けずにいられると急に泣き叫ぶ声に目をあけさせらる。
「世界を救ってくださいっ!お願いしますぅ!!」
どうしたことだろうか、さっきまで会社で彼女と二人きりでいたはずなのにいつのまにかなにもない白い空間にいる。そして目の前には髪がピンク色で、ふわふわひらひらとした服をまとった少女がいることに大我は驚きを隠せないでいた。
「ほんと!お願いしますぅ!」
呆然としている大我に誠意が足りないのかと思ったのか少女は土下座まで始める。
これは絵面的にまずい。大我とにかく少女の土下座をやめさせるべく声をかけた。
「と、とりあえず土下座は止めてください。ここは⋯⋯⋯⋯どこですか?」
少女はその言葉により土下座を辞め事情を説明しようと口を開いた。
涙目のまま。
「はい⋯⋯⋯⋯ここは、管理者空間です。あなたがたの認識では神の世界と呼んでいいかもしれません」
「神の世界?じゃあ、あなたは女神様ということですか?」
「はい、地球の管理は100年ほど前からですが⋯⋯⋯⋯」
少女の言葉がまったく理解できない。理解できないが話しを進めることしかないと思い大我は話しを進めることにした。
「その女神様が地球を救えということですか?」
「いえ、救って欲しいのはわたしが管理しているもう一つの世界エースティアです」
(まずいこれ、ネット小説とかで読んだやつだ⋯⋯)
大我に乾いた笑みが浮かぶ。なぜ、おれなのだろうか、現代知識を活かせそうな知識も身体能力もない35歳のオッサンに、なにを期待しているのだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってください!なんでオレなんですか!?もっと、適任者がいるでしょう!?」
必死になんとか断ろうと喋るが混乱しているせいかうまく言葉が出てこない、それでもこのまま異世界に飛ばされるわけにいかない。彼女のゆりちゃんの返事を聞かなくてはいけない!
「もっと、現代兵器に通じている人とか内政チート出来そうなやつとか!」
「いえ、あなたでなければダメなのです。この神核石を使いこなせるものでないと」
女神の手には光輝く石が握られていた。異世界転移を断る言葉を必死に考えていたが、その神々しい石を見た瞬間頭が真っ白になった。
「この神核石は人の想いを力に変える力を持ちます、あなたは今の自分を変えたいと強く願いそして、その想いを神核石によって強大な力に変えられる知識があります」
「なにを、言って⋯⋯⋯⋯そんな知識⋯⋯⋯⋯」
女神に言われ、自分の中にある知識を掘り起こす。出てくるのは特撮ヒーローの知識しか出ない。
これか?この知識でやれっていうのか?
ばかばかしい、35歳にもなって変身ヒーローにでもなれとでも言うのだろうか。
「そんな知識はないです!ほんと!!異世界転移は勘弁して下さい!」
今度は大我が土下座する番であった。必死にやめてもらおうと誠心誠意土下座するが女神の口から出る言葉は⋯⋯⋯⋯
「そして、この神核石をあなたの願望に沿ったバックルに加工し装着出来るようにします。ハンドメイドですよ」
にっこりと女神は大我の言葉に耳を貸さず話しを進めていく。ハンドメイドですよ、というところに悪意すら感じる大我であったが、ここで諦めるわけにはいかない。
「ちょっ!ちょっ!せめて、ゆりちゃんの返事を聞かせてからにして!お願いですから!」
金色と黒色の二玉がはめ込まれたバックルが宙に浮き大我の腰部に装着される。
「神核石は、あなたの願望を力として現実の力として顕現させます。あなたの想いが強ければ強いほどその力も強く顕現されます」
もはや異世界転移は決定事項のように女神はたんたんと説明を進めていく。
大我は、あれこれ言い訳をし諦めてもらおうと口だけは動かした。いい年したオッサンがこんなバックルをつけて戦えなど厨二病どころではない。
「あとは、少しだけおまけの力を付与しておきます。なんとしてもエースティアを救ってください。
ひいては地球にも関係が及ぼす問題です」
「え?」
ぎゃあぎゃあ騒いでいた大我であったが、自身の棲む地球にも影響あるという言葉に騒ぐのを辞め疑問を口にしようとした。
――――が
「ああ、そうそうあなたが告白したゆりちゃんですが既婚者ですよ。良かったですね、これでなんの憂いなく世界を救うことが出来ますよ」
大我には悪魔のような笑みにしか見えない。
女神が大我を思って、憂いを断とうとした女神の善意ではあったが、大我の心に止めをさすのには十分であった。
「があああああっ!くそったれーっ!」
大我が叫ぶと同時に、白い空間から引きずり出される感覚を覚える。
「おれはっ!おれは、既婚者だったなんて信じないぞーっ!」
最後だと思い、力いっぱいに叫ぶ。
「世界をお願いします、調停者」
そんな喧騒がなくなると静かに女神は、白い空間の中で呟くのだった
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
文章ってむずかしいですね⋯⋯⋯⋯いまさらですが⋯⋯⋯⋯