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第15話 ヒーロー異世界にてクラスが介護職員になる ⑤

 バジリスク、あっちの世界でもきいたことある毒を持った魔物、大我は前の世界の知識を思い起こすが弱点などの知識はまったく出てこない。



「マナ! エリシアたちは大丈夫なのか!?」



『是、即死性のある毒ではなく相手を弱らせてから捕食するための毒のようです。ですが、長く放置しておけば死亡します』


 

(さっきのディズエムとの戦いで体力スタミナはもうないっていうのに⋯⋯⋯⋯)



 大我が、そう思っていると1人だけ元気でいる姿にバジリスクが襲いかかってきた。

光剣トラブレイドで迎撃しようとするが腕があがらず胴体を噛みしだかれ上空に持ち上げられる。


 トラファイターX3の装甲に牙こそ突き刺さらないでいたが強靭な咬合力に身体が締め付けられ手から光剣トラブレイド》がこぼれ落ちる。

 身体がどんどん締め付けられ呼吸が困難になってくると、今度は体に激痛がはしってきた。

どうやら毒が、自分にもまわってきたらしいと大我は感じた。

 いくら防御の数値が高くても毒に耐性がなければじわじわやられていくらしい。



(ぐぅぅ⋯⋯⋯⋯なんで、こんなことになってるんだ⋯⋯⋯⋯この世界に来てから散々な目にしかあってない⋯⋯⋯⋯)



 異世界に飛ばされてから、トラウマをえぐるようなグロ現場を何度も見せられ漠然と世界を救ってくれと頼まれたり、自分はそんなこと一度だって望んでいない。

 だいたい、オッサンである自分の体力的にも肉体労働はキツイんだ。

 こんなおれより相応しいやつがいたはずだろう?なぁ、女神さま俺の次はもっとまともなやつを召喚してくれよ。


 と、大我は悪態と諦めの言葉を頭のなかで延々と零しているとふと下方の地面をみる。


エリシアとディズエムが息絶え絶えに苦しんでいる姿が見えた。



 ⋯⋯⋯⋯ヒーローってこんなんだっけ?



おれが憧れるトラファイターX3は、こんな感じに守れずにやられる存在だっけ?




自分がやられたあとは、エリシアやディズエムが死ぬのを許容して死んでいける存在だっけ?






そんな弱いヒーローだっけ――――?




違う―――


違うよな――――




「違うだろうがぁあああっ!」




『Skill Release 英雄模倣ヒーロー・イミテーション



 大我の叫びに呼応するように神核石マナスから電子音声が流れる。

大我は、無意識に開放されたばかりのスキルを口にする。


「スキルブート!英雄模倣ヒーロー・イミテーション!」



『Try Claw Set Up』



 続けて、神核石マナスからまたしても電子音声がなり大我の両腕にトラクローが装着される。そしてベキベキと音をたてながらバジリスクの口を腕力のみでこじ開けていく。


 片腕で上あごをトラクローで支え、下顎を両足で支えフリーになった片腕でのトラクローでバリジスクの口の中に斬撃を加える。



「ギシャアアア!」



 バジリスクはたまらず頭をふり、大我を口から吐き出す。



 大我は、片手を地面につけつつも着地するとトラファターX3の双眸が赤く染まり輝く。



「ヒーローってのは、守ってこそだろ!」



 大我の言葉に、首元に赤いマフラーが現れる。

次の瞬間、大我はバジリスクに向かい真っ直ぐに跳躍し、蹴りを放つ。


あの幼い頃みたトラファイター1号のようなまっすぐな蹴りを。



 バジリスクの身体に蹴りが当たると、今度はバジリスクの身体からベキベキといくつもの骨が折れる音が聞こえる。内蔵にもダメージを与えたのか、バジリスクの口から血が吐き出される。



 蹴りを放った箇所に、今度は真っ直ぐにトラクローが着いたままの拳でストレートを放つ。


あの幼い頃みたトラファイター2号のようにまっすぐな拳を。



 トラクローごと、バジリスクの体に拳が突き刺さり、拳を引き抜くと爪に臓物がからみついていたが今はグロイとか言ってる場合ではない。

 数秒でも一瞬でも早くこいつを倒し、エリシアたちを助けなければならない。そんな思いのみが大我の身体を限界以上に突き動かす。



 バジリスクも最初は、ただの捕食対象だと思っていた存在に痛手を受け攻撃態勢に瞬時に映る。

どうやら、すこしずつではあるが再生能力を保持しているらしく口内の傷は治りかけていた。



 バジリスクが、治りつつある口内の牙でまたしても大我に噛みしだこうと素早く攻撃をしかけるが

大我はさきほどの動きとはまったく異なり、華麗に躱していく。



 大我の頭にあったのは、かつてのヒーローたちの攻撃の動き。



 それを寸分違わず再現していた。



 最初の蹴りによる傷も再生されつつあるバジリスク。



違う攻撃が必要だ、大技で一気に決めるための時間稼ぎの技が――




『Try Shoot Set Up』



 大我の右腕に、大口径のハンドガンといっていいのかと思える程のゴツイ銃が現れる。



「トラブラスター!」



 大我が何度もトリガーを引く。

バジリスクにあたると、口径以上の傷が何箇所も爆発と共にバジリスクに与えられる。


 さすがに、再生が追いつかないのかバジリスクの動きが鈍くなる。


 ヒーローなら、ここが止めだ!


と、大我が神核石マナス願望ちからを送るとすぐさま神核石マナスが反応を示す。



『Exceed Try Kick』



 トラファイターの右足に光と闇が混ざりつつ集まり黒金ニエロの輝きを灯す。


 トラファイター1号、2号の決め技を何度も何度も繰り返し見ている。


 何故か、やれる。そう思った大我はバジリスクの頭上を超えるジャンプをすると、そこから重力を無視した動きを見せバジリスクに急加速で蹴りを放ったポーズで突っ込んでいく。


 どうやら、かっこつけだけだと思っていた赤いマフラーだが重力制御もこなしてるようだったが頭に血が上った大我はそんなことはどうでもいい。


 とにかく、ただのジャンプではなく重力制御にもよる超加速されたキックがバジリスクの頭に着弾する。



 ドクシャッ!



 頭蓋骨を砕いた音がすると頭から尻尾に向け、光と闇の混合属性の力が流れぼこぼこと泡のように無数にふくれあがり次の瞬間バジリスクは爆砕した。



 あたり一面、血の雨が降る。



グロいが、吐いてる暇はない。



エリシアたちを助けないとと思い足をエリシアたちのほうに向かわせようと動かすが――



「ぐ⋯⋯⋯⋯!」



 さきほどまで、気力と英雄模倣ヒーロー・イミテーションの力によって動いていたが限界がきたようだ。

 バジリスクの毒がまわりきっていた。

さらに英雄模倣ヒーロー・イミテーションで身体がさらに酷使されエリシア、ディズエムよりも毒の廻りが早くなってしまったようだ。


――英雄模倣ヒーロー・イミテーション、自分が思い描いた英雄の動きを寸分違わず模倣する。

戦闘スキルもなく体力もない大我が、さきほどの超人的な動きの原因がこのスキルにあった。

ただ、このスキルは動きを模倣するだけであり大我自身の力をあげるものではなく、大我の身体にもダメージをあたえるほどの動きを強制するものであった。



『マスター! 早く毒を無効化するように神核石マナスへ願ってください! 死んでしまいます!』



 マナが悲痛に叫ぶ。


 しかし、大我の意識は半ば朦朧としてきており神核石マナス願望ちからがうまく伝わらない。



(たすけ⋯⋯⋯⋯ないと⋯⋯⋯⋯)



なにより、自分よりもエリシアとディズエムを助けようと必死に這いずりながらも近寄っていった。



『お願いです! マスター! ほんとうに死んでしまいます!』



そんな、マナの言葉ももはや聞こえず這っていくとディズエムの前に人影がいるのが気づいた。



 なにやら、ディズエムに飲ませているようで飲ませおわるとディズエムはすぐに静かに寝息をたて始めた。



(メイド⋯⋯⋯⋯?)



 緑色のショートの髪にカチューシャを付け二本の羊のような角が即頭部にあったメイド服をまとった者は次に、エリシアに向かい瓶を取り出し飲ませ始めエリシアもすぐに落ち着いた呼吸に戻っていった。



 そして、メイドの格好をした何者かは大我の前に足を進め瓶を差し出しながら有無を言わさぬ口調で告げる。



「解毒薬です。飲みなさい」


 

 どうやらメイドは、エリシアとディズエムを介抱してくれていたようだった。自分も、解毒薬を飲もうと手を伸ばそうとするが手が動かない。



「⋯⋯⋯⋯仕方ありませんね」



そうメイドがいうと、大我の頭を自分の膝の上に置く。


目の前までくると、顔がはっきりみえる。メイド属性を持っていない大我であったが、整った顔立ちだと思い素直に可愛いと思った。



「兜の開口部を開けなさい」



 カシャンと上下に、開口部が開くとメイドは解毒薬を口に含むと一気に大我に口うつしに解毒薬を飲ませてきた。




(んんん~~~~!!)



35歳にして初キッス―――



 恥ずかしさで、突き放したいが身体が動かないので身を任せていると解毒薬を飲ませて終わったメイドが口を放す。



「あと、数分もすれば動けるでしょう。では、わたくしはこれで失礼いたします」



ぺこりと優雅に一礼をすると、メイドはどこにそんな力があるのかと思うような細腕一本で無造作にディズエムの首根っこを掴むと黒い翼を出し跳躍していった。




「魔族が何故、我々を助けたんだ?」



大我より症状が軽かったのか先に回復したエリシアが大我に話しかける。



『不明、なにか思惑がありそうですが情報が足りません。放っておいても死ぬような状況であえて助けるとは⋯⋯⋯⋯』



「考えても仕方ないか⋯⋯⋯⋯しかし、ある意味幸運だな。ゴブリンの耳よりこのバジリスクの牙を持っていけばギルドでの登録は問題ないだろう」



『たしかに、そうですね。ゴブリンの耳を剥ぐなどなくてもいいですし、マスターの感性からすれば抵抗なく運べるでしょう』



エリシアとマナだけで会話が続くなか、大我の頭のなかは真っ白のままだった。



(女の子の唇って、あんな柔らかいの⋯⋯⋯⋯?)



「おい! おい! タイガ、聞いているのか?」



『マスター! どこかまだ異常あるのですか?』



 様子がおかしいと思い何度も呼ばれていたのだがやっと我に帰り、自分が呼ばれていることに気が付く。



「お、おう、うん。問題、問題ないですよ」



 あまりの挙動不審に、エリシアの目が情けないものを見るような視線へと変わっていく。



「タイガ、まさか先ほどの口移しで惚れたとかないよな?」



『マスター、まさかと思いますが初めての異性からの口づけだったのですか?』



 マナも容赦なく追求してくる。



「ば、ば、ば、ばかなこというんじゃありませんよ! おれくらいになると両手じゃかぞえきれないくらい経験あるですよ!」



 童貞臭丸出しのセリフに、二人はもはやなにも言えずにいた。

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