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季節がめぐる中で 86

「なんで?かわいいじゃない?」 

 助手席から降りるアイシャは軽く髪をなびかせて流し目を送ってくる。誠は自分の心臓の鼓動を感じながらもここは引けない一線だと分かっていた。

「少女じゃないじゃないですか!それならもっと少女にぴったりの人がいるでしょ!」 

「ああ、シャムちゃんね。でも……やっぱり少女が一人ってさびしくない?」 

 そう言いながらアイシャは先頭に立って歩いていく。誠はいつものことながら妙に切り替えの早いアイシャに振り回されるのを覚悟した。

「それならあまさき屋の小夏でも呼べばいいじゃないですか!それにもうすぐ正式配属前の引継ぎ業務でクバルカ中佐がうちに張り付くらしいですよ」 

 誠の言葉にアイシャは振り向いた。目が輝いている、大体こういうときのアイシャの妄想に付き合うとろくなことにはならないことは知っていたが、今日は誠はアイシャをエスコートする立場だった。

「それ本当ね?本当にランちゃんが……」 

「あの……一応次の保安隊の副長なんですからちゃん付けは……」 

 そんな誠の言葉など聞く筈も無い様子のアイシャ。そのまま何かを考えながら寮の階段を上っていく。

「それなら……」 

「アイシャさん。どうせ投票で決めるんでしょ?魔法少女以外になる可能性も……」 

 アイシャは無視してそのまま寮の玄関に靴を脱ぐ。

「ああ、ちょっとぼーっとしてたわね。とりあえず私シャワー浴びたいんだけど、良いかしら?」 

 誠がおずおずと頷くとそのまま階段を上がって消えていくアイシャ。彼女を見送ると誠はアイシャと入れ替わるように降りてきた二人の男性隊員を見つけた。

「あれ?神前さんじゃないですか?」 

 そう言ったのは第二次世界大戦のアメリカ第一空挺団の軍服を着込んで、手には当時の典型的なGIらしいM3A1グリースガンを持った服部と言う伍長と、将校の格好でM1カービンを持った木村軍曹のコンビだった。

「お前等またサバゲか?」 

 呆れる誠に頭を掻く二人。三交代制の技術部ということで平日だと言うのに遊びに行くのだろう。

「それより神前さん今日は通常勤務じゃなかったんですか?」 

 そう言われて誠の額に脂汗がにじんだ。普段から女性に囲まれる生活で嫉妬されている誠である。整備班の綱紀を管理する島田は長期出張中。

「ああ、ちょっと出張が……」 

「あなた達!また誠ちゃんをいじめてるの!」 

 着替えを手にした制服のライトグリーンのワイシャツと濃い緑色のタイトスカートのアイシャがいつの間にか後ろに立っていた。でも考えてみればシャワーは一階の奥にあるので彼女がこの場所を通るのは当然な話だった。

「あれだ、その……なんだ」 

「良いじゃない、はっきりさせておいた方が後々誤解されないから。今日はデートなの。それもお姉さんの指示で」 

 そんなアイシャの言葉に三人は凍りついた。お姉さんこと鈴木リアナ中佐の指示となれば二人が何を言おうが手が出せないと分かる。

「ああ……ああ。そうなんですか」 

 それだけ言うと服部と木村はそのままフル装備で食堂に向かう。

「あのー……」 

「じゃあ私はシャワーを浴びるから。着替え終わったら食堂で待ってて!」 

 照れ笑いを浮かべる誠を置いてアイシャは消えていく。誠は今度こそは誰にも出会わずに自分の部屋に到着で消えることを祈りながら階段を上り始めた。

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