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季節がめぐる中で 55

「むう……」 

 赤い顔のアイシャが誠を見上げた。誠は思わずアイシャのトロンとした視線から目を逸らす。自然とアイシャを見守っていたパーラに目が行く。だが、パーラは無慈悲に首を横に振った。

「誠ちゃん!」 

 アイシャが誠にしがみついた。

「好きなの!大好き!」 

「止めてください!アイシャさん!」 

 腹の辺りを思い切り絞り上げるように全身の力を込めて締め上げるアイシャ。誠は鯖折状態で彼女を振り払おうとする。

「よう、アイシャ。何してんだ?」 

 ようやくひっくり返って眠り始めたランから解放された要が誠とアイシャを見つめる。

「見てわからないんれすか?これはれすねえ……えへ……」 

 完全に出来上がっているアイシャ。彼女がさらに誠に密着をはじめるのを見て要が残忍な視線を誠に向ける。

「これはですねえ」 

「何なのか私も知りたいが」 

 誠は恐る恐る振り返る。エメラルドグリーンの髪をなびかせるカウラ。

「これはですねえ……」 

「愛なのら!」 

 叫ぶとすぐに今度は誠の顔に自分の顔を密着させるアイシャ。

「パーラさん……」 

 冷静でいるのは彼女くらいだろう、誠はそう思いながら隣の席を見るが、彼女は携帯端末で運転代行業者と会話中だった。

「明石中佐……」 

 明石と明華は二人で仲良く一枚の広島風お好み焼きを突いている。

「リアナさん……」 

「はい、なあに?」 

 いつもの笑み。この人がこの状況で役に立つとは思えない。

「吉田さん……」 

「まあがんばれや」 

 吉田とシャムは食べるのも忘れてこの状況を観察することを決めているようだった。

「マリ……」 

 周りを見回すが姿を見ないところからマリアはすでに帰った後だった。

 当然のことながら下座にはもう嵯峨の姿は無かった。

「あの……」 

 今度はアイシャは首を振ろうとする誠の頭を両腕で固定した。

「あの……」 

 そしてそのまま誠を押し倒そうとするアイシャ。一瞬視界が消えた。続いたのは頭の頂点に与えられた強力なエネルギーとそれが生み出す痛み。

「新入りが!いちゃいちゃするんじゃねーぞ!」 

 手にはビール瓶の首だけを掲げているランの姿。顔を真っ赤に染めて満面の笑みで誠を見つめている。痛みとともに再び誠の視界は暗転した。

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